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「先ほど、リーシャの魔力はマティアスを超えると話したが、リーシャの本当の父親であるシルフレッドはその何倍もの量と力を持っていたのだよ。しかしながら、シルフレッドはどの国にも帰依しない者だった。
一方、セシーリャ殿はかの国の伯爵家の令嬢だった。しかもたった一人の跡継ぎだったのだよ。セシーリャ殿は家も国も捨てることができなかった。シルフレッドは迷った末……いや、彼は迷ってはいなかったな。どうしてもセシーリャ殿と共に生きたいと思ったシルフレッドは、セシーリャ殿の住む国の者になることを決めたのだよ。
しかし、シフルレッドの力は恐るべき力。そのような力を持つ者たちが国に所属するには、その力を封印せねばならない決まりごとがあるのだ。なぜなら、力の強いものを一国が手に入れてしまうと、その力を拠り所に、戦いを引き起こしてしまう国も出てくる。
シルフレッドは、かの国の国王との契約で攻撃をする力を封じられた。封印を解けば死へとつながるものであったが、シフルレッドは納得して受け入れたのだ。そして、その契約の内実はシルフレッドとセシーリャ殿、かの国の王とその近しき者のみが知ることだったのだ。」
リーシャはもちろんのこと、皆がその話に耳を傾けていた。ユリウスとマリエは全てを知っていたし、姉エミリアや兄ルーカス、マティアスも少しは聞いていたものの、詳しい話を聞くのははじめてだったのだ。
尚もヴィルフリートの話は続く。
「詳しい契約の内実をわたしが話すことは叶わぬが……。かの国には王弟がいたのだが、その契約の内容を知らされておらんかったようでな。王弟とその取り巻きたちが、シフルレッドの力を利用しようと画策したのだ。
もちろん、シルフレッドが手を貸すことはあるはずもなく、王も王弟たちを何度も諫めたのだが、耳を傾けることはなかった。そしてとうとう、王弟とその取り巻きたちは力技でシルフレッドを手に入れようと画策し、ことを起こしたのだ。
セシーリャ殿を人質に取られたシフルレッドは、セシーリャ殿を助け出したのち、敵から逃れるために、リーシャを連れて最後の力でこの地へと転移して来たのだよ。」
「シルフレッドお父さまとセシーリャお母さまも一緒にここに来たの?」
「ああ。だが、捕らえられたセシーリャ殿は深い傷を負っていたため、ここにたどり着いた時には、すでにその生は閉じられておった。そして、シルフレッドも生き続けるだけの力は残っていなかったのだ……。」
(実の父親が母と自分を連れてこの地へ転移してきた。ペイレール辺境伯家ならば…そう思って、最後の力で……。そして、ふたりはここで……。)
「……ルラの花。」
リーシャは、ポツリとつぶやいた。
「とても大切な人が眠っているの」マリエはそう言って、毎日リーシャを連れて、真っ白な墓碑の上にルラの花を一輪そっと供えていた。いつしか、ルラの花を供えに行くのはリーシャの役割となっていたあの場所。
「そうよ、リーシャ。ルラの花は、セシーリャ様が大好きだった花なのよ。
そして、シルフレッド様も『セシーリャが好きな花だから』と、ルラの花を大切にされていたわ。」
それを聞いて、ようやくリーシャは腑に落ちた。「大切な人」が誰だったのか。このペイレール辺境伯家の庭や温室で、ルラの花がたくさん育てられているのが何故なのか。
ローリア王国は、大陸でも北の方に位置するため、冬がとても厳しい国だ。ペイレール辺境伯領はローリア王国の南に位置しているが、南には国境である険しいカル山脈があるため雪の量も多い。しかし、ペイレール辺境伯の屋敷では、冬の厳しいこの地でもルラの花が年中咲くように、庭だけでなく温室にもたくさんのルラの花が植えられている。
リーシャは、これまでは母のマリエが好きな花だと思っていたが……。
(シルフレッドお父さまとセシーリャお母さまのため……。亡くなってしまったお父さまとお母さまのこと、大切に思ってもらえてた。だから……。)
きっと、亡くなったふたりも感謝しているはずだ。リーシャに本当のことを知らせられない中、大切な人だと伝え導いてくれたマリエに……。だから、リーシャは自分だけでなく、シルフレッドとセシーリャの思いも込めて、マリエへと感謝の言葉を伝えた。
「ありがとう、お母さま。」
「さて、ブレスレットの話に戻るとしよう。」
再び、風龍ヴィルフリートが口を開いた。
「本来であれば、膨大な魔力を持つ子どもたちは、学校で特別に魔力のコントロールする方法を学び、少しずつ魔力を解放させていくのだが……。リーシャの魔力はマティアスの魔力量と同程度しか解放できないように、このブレスレットに術をかけなおす。」
「どうして?」
リーシャはヴィルフリートが何故そんなことを言うのか見当もつかなかった。しかし、家族はみんな当然とばかりに頷いている。
「リーシャを守るためだよ。」
読んでいただきありがとうございます。
『ルラの花』…花や茎の感じはラナンキュラス+大きさはシャクヤクと言ったところでしょうか。真っ白で、凛としていながらも柔らかい感じの花を思い浮かべながら書いています。




