第十三話その九 誰の目視点?
両者、制空権を確保すべく、前哨戦である空戦を行った。その隙をついてリングドラッハと言うこの地を滅ぼした不死者達のドラゴンは、想一郎達の手によって墜落した……。そして制空権はファンセイヌ王国のものとなった。空から降り注ぐ爆撃の嵐。制空権を失い一方的に攻撃されるアンデッド軍団は業を煮やしたかのように前進を開始した。
圧倒的数。二十万。
空から一方的に攻撃しているはずが、焼け石に水かと思える位の数。これは、後世に百万の数と大ホラを言わせる位の数であった。そこに鳩羽鼠のナウスス指揮による魔術師達の砲撃が混じると、いよいよもってアンデッドはその数を削られるに至る。
そこにチート聖女も混ざる。
今まで鳴りを潜めていたチート聖女は何を企んでいるのか、不敵な笑みを浮かべて対アンデッド付与魔法を自軍の武器へ詠唱する。神々しく輝くタレダレイダーの聖戦士達は、地平線を埋め尽くすアンデッド達の中央へとぶつかった……!
引き籠りニート王は、かつての栄光を取り戻すかのように、英雄騎士王として叫ぶ!
「狙うはダウアスルが首! ただひと~つ!」
ファンセイヌ王ローランは分かっていた。アンデッドは倒しても倒しても何れ蘇ってくる事を。その元を絶たねば意味がない事を……!
紅森山軍はそれであっても、まるで生きた濁流が渇いた大地を覆うかの如く、アンデッドを本来あるべき姿へと変えて行く。英雄騎士王はそれを褒めたたえ、その息子のフィリップ王太子殿下は次のような伝令を飛ばした。
“少し前へ出すぎている。そのままだと貴君は孤立、包囲されかねない。中央と足並みをそろえよ”
「“貴君”だってよ! 光栄だな想一郎! ガハハ!」
「……なるほど。しかしこの場に待機しろとは言われていないな」
「何を言っておるのじゃ? 想一郎?」
孤立せず、包囲されず、中央と足並みをそろえれば良い。そう思った想一郎は、前へ進撃するのを中止し、急遽、反転攻勢を開始した。その様子を、左翼を担っていたウェデックス女王エグバーティアは次のように書き記している。
“総指揮官であり齢八歳でもあるファンセイヌの王子から、前へ出すぎであると指摘されたダンジョン辺境伯紅森山想一郎二世は急遽、我が軍及び、ファンセイヌ中央軍の障害となっていた正面の敵をほぼ後ろから襲いかかり一匹残らず撫で斬りにした。私達には、驚愕と言う名の安息時間が神々より与えられ、そして、少なくとも足並みは揃った”
また、時をほぼ同じくして、ティオシアの魔術師達が次のような通信魔法を傍受していた。
“サングイア様! 至急援軍を! 紅森山想一郎の攻勢は、地獄の業火の様に凄まじく、兵力二十万では全然足りません! 少なくとも、もう二十万の兵力が必要です! このままだと、軍団魔力の根源である貴方様の父上が倒される前に、かの想一郎によって我等は地獄におわす邪神様の元へ召されてしまいます!”
そして、その返信は。
“サングイア様は現在、やっと咲いた黒薔薇のお世話で忙しい。次は、金のジョウロで金の薔薇を咲かせるのだとはしゃいでおられる。もう二十万のお世話など話にもならん。私のペットと被検体、総勢五万全てをそちらへ寄越す。これで何とかしろ。次に泣き言を寄こしたら貴様の魔力供給を停止する”
どうやらダウアスルの負けフラグの予感は正しかった……。彼のフラグ折りの努力も、急遽送られてきた援軍も虚しく、かつて地平線を覆っていたはずのアンデッド軍団は、その八割以上が地獄へ召された。ダウアスルの残された手段はもはや、英雄騎士王との因縁の一騎打ち、これしかなくなったのである……。
一方ヘンタイヌ男爵は、其れと言って特に何もなく南壁を乗り切ると、次は東洋の大帝国へとやって来た。その名は上国。俺達は全ての上なのだと言いたげなこの国名。この大帝国は、現在三人の自称皇帝がもう五百年以上も分割統治していた。
『あーつまり?』
『三国志?』
『マーマ! 三者鼎立が超うまくいってるよ!』
「ほう。この河口が超江という川の最終地点なのか」
「でかいねぇ~! デカいは正義だよ! そして飯は脂っぽい! 最高だねぇ~!」
「トロールが中華鍋を……これは凄い光景だな……」
「アタイ達も負けてないけどね!」
『味の秘訣は味の素を大量に入れる事!』




