第十三話その四 空から
【謎のノリで近接戦闘航空支援をする事になったロスタエル】
「謎である! 何故私がこの気持ち悪い変態ドラゴンに跨り航空支援をせねばならぬだ!」
「うへへ! なんかそう言われるとむしろゾクゾクしちまうぜぇ!」
「うぬぬ! この気持ち悪い変態め! いいか!? 妙な真似をしてみろ!? 体中の粘膜と言う粘膜にカプサイシン(唐辛子の辛み成分)をフードレプリケイション(魔法精製)して直噴してやる!」
「おおっ! それはそれで楽しめそうだ!」
「な! 何!? こ、この変態めっ!」
と言う事で、私はジャンケンで負けて、このドラゴンに跨る事になった。非常に不名誉であるし、今思えば真面目にジャンケンした私は魔法でも使っていればと思ってさえいた。高い所はスナイパーと馬鹿が居るべき場所であり、私の様な者が居る場所ではないのだっ!
「なんだお前? もしかして高所恐怖症なのか!?」
「なっ!? 何を言う! べ、別に、ハイエルフである私に恐れるものなどないっ!」
「んふふ~! しかし、その太ももから伝わってくる温もりと震えは、俺の敏感な鱗を伝って、そうだと感じ取ってるぜぇぇぇ! ふへへへへへ!」
「ぬぅぅぅぅぅぅううううう!! 後で覚えてろ……!」
そんな私はホラー的に戦闘態勢全開なヴァンパイア領を進む地上のパーティーを援護する為、彼女らの頭上500メートルを旋回、哨戒していた。
こうなった原因は、この変態ドラゴンとルーカス(男)の存在。そしてこいつに跨りたくなかった私の提案という自己責任でもあった。
このドラゴンは男であるルーカスを背に乗せるのを全力で嫌い、若干ショックぎみだったルーカスは中二病全開で
「フッ……賢明な判断だな……俺は貴様の様なドラゴンに触れると、右手が暴走してしまうのだ。だが、今回に限ってこの俺を連れて行かないと言う選択肢はないぞ……! 俺は、奴らを倒すのに唯一必要となるとっておきの秘訣を知っているのだッ!」
とかなんとかほざいた。そして、私はコイツに跨りたくない一心でそれに便乗し
「ならば仕方がない。地上班と上空で早期警戒する班とに分かれのは如何か?」
と言ったまでは良かったのだ。だが、エリザベスが
「プフフ! じゃあ乗る人ジャンケンで決めようかー!」
と言い出した。私は、心理学的に緊張状態にある者は、意識的に力んで“グー”を出しやすい事を知っていた。逆にリラックスする者は“パー”が出やすく、考えすぎる者は“チョキ”を出しやすいのだ。
(※作者も千回以上にわたって実践済みです。勝率は若干ですが上がりました。多分……)
その強みを生かして勝率が高いと真面目にジャンケンに取り組んだ私が馬鹿だった。
まず半神アリスはピュアだがその強さの余裕からパーを出すと思っていた。だが彼女にジャンケン程度の速度は止まって見える事を私は失念していた……。
次にエリザベスだが、彼女は妙に心理戦に長けている風潮があった上、いつも余裕を見せているのでパーと予想。しかし彼女もあの変態ドラゴンに跨るのは相当嫌だったらしい。相当力んで居た様だったのだ!
そして最後はオンドレア! 彼女も根拠のないいつもの余裕であったので、パーと予想。つまりこの状況において私が選択したのは“チョキ”だったのだ! だが、彼女のステータスのラックは666であり、それは不動の一定であった!
──全員が出した答えは“グー”だったのだ!
つまり、考えすぎた私は見事“チョキ”を出してしまい、現在に至るのであった……!
(※複数人数での同時ジャンケンに於いて作者はまず、パーで様子見が無難であるとお勧めします。全員がチョキを出す可能性は意外と低いのです。とはいえ保証は出来ません! まったくもって責任は取りかねますので、あくまで自己責任で宜しくお願いします!)
「ぐぬぬぬっ!」
「ふへへ! と、それは良いが、どうやら向こうではドンパチ始まったようだ……!」
その言葉に私は、この変態が見る僅かに遠い空を見る。そこには花火の様な爆発が起きていた。そして双方向に開いた通信魔法からエリザベスの声が聞こえてくる。
「あー始まったようですねー。乗り心地は如何ですかー? 援護の方、よろしくお願いしますねー! プフフ!」
「う、うるさい! 分かっている! まったくもって任務に集中するから少し黙って居ろっ!」
「はいはーい! プフフ」
私は対アンデッド視認魔法を使い、日食で低視認の薄暗い地上を眺める。すると魔法によって白く浮き出るアンデット達を進行方向に複数確認した……!
「進路に敵を確認。その場で待機しろ」
「了解っ! 博士ヘッド!」
“博士ヘッド”とはなんだ!? アリスよ! そんな事より、私は不服ながらも魔法で砲撃地点を変態に示唆する。
「了解! 食らえッ!」
──ゴバァ~!
そして放たれた火の玉がそれを襲った!
──ドボーン!
私は敵アンデッドの沈黙を確認する。
「──進路はクリアした。地上班はそのまま進め!」
「はいはーい! 博士ヘッド! 進みまーす! プフフ」
「フッ、なるほど……ドラゴンの近接戦闘航空支援か……やるじゃないか」
「……引き続き上空で旋回し警戒する」
「あらあらぁ~! 誠に大儀ですわぁ~! オ~ホッホッホ!」
「くっ……!」
そもそもなぜ変態ドラゴンがここに居るのか! 謎である!
まるでドラゴンをガンシップの様に扱うロスタエル。これは、この異世界では先進的で、非情な一方的火力運用であった……。が、ヘンタイヌ男爵はそんなの知る由もなく旅を続ける。
船の修理を終えると男爵の艦隊は、モンスーン対策をカイアオストのハイエルフより教わり、デール海を何とか切り抜けた。そして訪れる東南オルティア(東南アジア風)諸島。
そこはリザードマンの超古代文明(およそ6600万年前から1億2000万年前)の遺跡が数多く点在する、ハイエルフの考古学的見地からも非常に有用な地域であった。さらにマグナビス諸国からすれば、喉から手が出るほど欲しい貴重交易物の生産地でもあった。
しかし、ここは食人種や首狩り族等の人間も含む様々な種族が、数百数千と存在する超危険地域であり、補給に立ち寄ったヘンタイヌ男爵は案の定、追い掛け回される事となった!
『ひっ、ひ~! 危なかった! 逃げ切ったのか!?』
『危ね~! 妖術儀式の食材にされそうだった!』
『ママー! 今度は前から何か来たよ!』
『『『──ウ~ガッガッガッ! ウ~ガッガッガッ!』』』
「ハッハ~! どうやらこの部族は、アタイを女神様だと勘違いしたようだよ! フハハハハ!」
「だからこそ、生贄にされそうである……! なんとかせねば……!」
「──こういう部族の扱いはアタイに任しときなッ! フンガァァァァアアアアア!!」
『『『ウガガガガァ~!?』』』




