第十二話その七 あら、それ伏線だったの?
ああ! もうこんな時間に!
【フッフッフ! ルーカス・フォン・シュワルツファウ伯爵】
俺の血には半分ヴァンパイアの血が流れている。俺はその血が体内でにじむような外部要因による遺伝子変異操作と適切なハートマン軍曹式訓練によって白いコウモリに化ける術を身に着けた……!
そしてそれを駆使し、まるでニンジャーの様に遂にファンセイヌの王宮と言う、世界最強の警戒態勢を潜り抜け、囚人たちの眠らない独房へとやって来たのだ!
さぁエリザべス! この心の鍵で、その力を解き放ってやろう!
「鍵なら開いてるよープフフ」
──え!?
「ルーカス。外で待っていろとお前は言っていたが、謎である。一々回りくどい変化の術を使わなくても、衛兵が一人もいない真正面から普通に入ってこれたのである」
──え!?
「これはどう考えても罠なのではないか? エリザベス」
「あー大丈夫ロスタ。これでOK。じゃあそろそろ真っ白になってそうなオンドレアお嬢様の所へ行きますかープフフ」
──え!?
……フッフッフ……そういう事か。俺がサングイアを追って探っている間に、こいつ等もそれなりに訓練していたのだな……!
((しかし相変わらずルーカスは、どこかマヌケだな))
──うるせぇ!
ま、まぁそれはどうでもいい。サングイアを倒すにはこいつ等の協力が不可欠だ。何故ならばサングイアの父、ダウアスルが遂に目覚めたからだ! こうなった場合、俺一人では本気の本気を100%中の120%を出さなくてはならない。俺がその本気を出したらこの右手の能力は暴走し、3秒でこの宇宙は物理的整合性を失って崩壊してしまうだろう!
俺達はオンドレアの居る独房へ向かう!
「ふんっ!」
──どか!
「ふんぬっ!」
──どか!
「何が」
──どか!
「婚約」
──どが!
「破棄よ!」
──どがが!
「あ~もう! ホント頑丈なドアね! 冒険者ギルドのドアとは大違いだわ!」
……オンドレアお嬢様はご健在の様だ。
(なんだ? ドアの前に様々な物が散乱している……謎である)
(あーどうやらお嬢様は、長い燭台を使って“婚約破壊され丸”をどうにか回収したようですねープフフ)
フッ。待っていろ。鍵ならここにあr──
──ドゴーンッ!
「「「──ッ!」」」
「──お姉ちゃん助けに来たよっ! あ、皆!」
アリス!? 外壁を破壊してだと!? そんなアリスは普通にドアを施錠していた錠前を素手で引きちぎった! 相変わらず規格外な少女だッ!
──ガシャーン!
「あらぁ~! その声はアリスちゃん!? さぁ私をこんな目に合わせたヴァンパイアビッチを叩き潰しに行きますわよ!」
「うんっ!」
クッ……!
「──フハハハハ!」
俺は思わず笑ってしまった。
(なんだ? 急に笑い出したぞコイツ。謎である)
(キモーイ!)
ぬぅ! わからん奴だ! そしてオンドレアは皆に言う!
「さぁ叩き潰しに行くわよ! 皆の者!」
しかしロスタエルは突っ込む。
「ん? 姉や父は良いのか?」
「──どうでも良いですわ!」
「「「良いのかよっ!」」」
「ロザリーお姉さまは多分『正義に反するから、正式な手続き以外では出ない!』て、言うでしょうし」
「──その通りだオンドレア! だがお前が脱走した事は黙秘する。黒幕は恐らくサングイアだ! 私の直感がそう言っている! 私の代りに奴を倒せ!」
「ほら」
(((ほんとだ~)))
「あと、父は良いですわ! 身から出た錆ですものね! オ~ホッホッホ!」
(散々人を道具として使った罰ですわ!)
(((マジか……)))
【囚われのネイ公爵】
「て、お前の娘は言ってるぞ? フフフハハハハハハ! アンドレ・ド・ネイ公爵よ!」
「くっ。オンドレア……この親不孝者め……!」
俺は遠視の術で娘の状況を見させられた。俺は全裸で鞭打たれ、手足に鎖が食い込む! 血は滴り床を赤く染めると、ダウアスルはその色と同じ赤い目をギラつかせ、ヘラヘラと俺に言う!
「血は争えんぬなぁ~!」
「ダウアスル……!」
「あぁ、まったく……。老いたる者は若者に孝行しろと言う。年上だから敬えと言う。だが、若者がそう思っても、年寄がそれを下に言ったら意味がないのではないか? まったく押しつけがましい独善的な物言いとならないか? 違うか?」
「何を言っている!」
「……俺は疑問に思うのだ。考えてみろネイ公爵。子は親に育ててもらった恩があるという。俺もそう言われて育てられた。うちは厳しい家庭でな……。しかしよくよく考えてみれば……フハハ! なら安易な善意は報われぬと言いたい! 子の為に努力してきた? 犠牲になった? なのに親不孝された? なら、その努力の方向性が間違っていたのではないか? 俺は疑う。結局は己の都合の事ばかり考えて押し付けているのではないかと。ああ! それでは老害扱いされるのは当然だな! なんともはや、なんて難しいのだ! 知っての通り、俺にも娘がいる。そして俺も老害だ! 人間には想像もつかぬ程にな!」
「…………」
「──お前は人に思慮深く接し、子が親に孝行しようと、そう思わせる努力をしてきたか? ネイ公爵よ。……しかし、あの様子ではどうやら失敗しているようだな。まったく……同情しよう……」
「何……?」
「お前はもっと人々に、そして娘にも愛される努力をするべきだった。だが、欲望に目がくらみ手段を選ばなかったお前の悪辣な手段とその影響は、結果としてお前の娘にそう言わしめ自ら墓穴を掘ったと言う事だ! 悲しいな! フフハハ、フハハ! フフフハハハハハハ!」
「この裏切者めぇぇぇッッ!」
「──甘いッ!! 出し抜かれたのは己だけだと思っているのか!?」
「──ッ!?」
「……契約は今でも有効だ。だが……愚かな! 裏切りは一つとは限らない。野望も陰謀も然りだ! 世の中と言うのは面倒事が複雑に絡み合って出来ている! こうなっては貴様との契約は邪魔だ! ──おい!」
「──はい」
「──き、貴様はッ!!」
「……俺はすべき事がある! ネイ公爵よ! 地獄で再び会おう! フハハ、フフフハハハハハハ!」
「ダウアスル! 貴様ぁぁぁぁああ!!」
ああ消えた! ダウアスル! ダウアスルダウアスルダウアスルッッッ!!
「……お久しぶりです。御義父様」
「己ぇぇ! 貴様は爆死したはずだ!」
「はい。確かに爆死しました。でも首は残ったようです。ほら、他の体は別な人のを繋ぎ合わせて……。これ全部、御義父様が殺した人の一部なんですよ? クヘ、クヘヘヘヘヘ!」
「このロリコンめ! ネクロマンシーに手を染めたのか!」
「ネクロマンシーに手を染めた? いいえ? されたのです? あ、いや。やっぱ手を染めたのか……? はぁ……それよりロリコンですか? 御義父様が領土欲しさに婚姻させておいてそれはあんまりですね~。でも、可憐なオンドレアちゃんを娶れたのは至福でした。……が、心は開いてはくれませんでしたけど……クヘ! クヘヘヘヘヘヘ!」
「貴様! 俺をどうするつもりだ!?」
「──親孝行しに来ました」
「──ッ!?」
「見てくださいこの樽。この樽の中に入っているのは、水攻め拷問用の水ではありません。──ほら、中には粉末状にした魔鉱石が……安物で申し訳ありませんが御義父様。これ、所謂火薬ですね」
「────ッッ!!」
「そんなに驚かなくても。大丈夫です。私も一緒に逝きますから! ……さて、ずっと健康の為禁煙してきたのですが、せっかくなのでここで一服……」
「アアアアァァァァァァァアアアアッッ!! ダウアスルゥゥゥゥゥゥゥウウウウアアアアアアアッッ!!」
──爆死ッッ!!!
ネイ公爵。彼なりの努力も無駄に終わり、そして野望陰謀と共に吹っ飛んでしまった……。だがそれとは他所に、ヘンタイヌ男爵は案の定、遺跡で秘宝を取った瞬間、ミイラとその王に追い掛け回さる落ちとなっていた……!
「ぬぅ! これはまずい……!」
『『『ママー!』』』
人間には体を保護する為に、潜在意識的に筋力にリミッターが設けられているのだと言う。ボクサーはそれを自己暗示により解除して戦うと言われるが、ミイラとなった人間にはそれがそもそもない!
──とは言え、ボボンギャマッチョのHPは53万だった!
──ペチペチ!
「フンガァァァァァアアアアア!!」
──ピューッ!
ミイラ達はどっかへ放り投げ出された! そしてボボンギャマッチョのお蔭で何とかなった男爵は約束通り砂漠の秘宝をサラ・ア・ディールに渡す。すると彼は、艦隊を引き連れ砂金海峡を封鎖するシッダールの艦隊へそれを使用した!
──ゴォォォォォオオオオオ!
海峡を突如襲う砂嵐! シッダールの大艦隊は突然の砂嵐に、帆は破れマストは折れた!
──シッダールの艦隊は海の藻屑となったのである!
そしてヘンタイヌ男爵は砂金海峡を越えた! 遂に大裂海を出て、デール海へ抜けたのであった!
『ああ! 流石に俺も親の顔が目に浮かんだ!』
『くっ! 恥ずかしい! つい叫んでしまったじゃないか!』
『ママー! やっぱりミイラに追い掛け回されたよぅ!』




