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ダンジョン辺境伯爵と公爵令嬢  作者: もやい
第二章
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第十二話その四 車懸かり

【車懸かりに参加するロザリー】


「父上に王都へ戻るよう言われたが、次いで次いでで転戦している内に、成り行きでここへ来てしまった。これも何かの縁。共に戦わせて頂きたい!」


「それは心強い! 是非!」


 想一郎殿の許可を得て紅森山軍と合流し戦う私。


 ──車懸(くるまが)かりとは陣形か戦術か。


 私は想一郎殿の陣に初参加させていただくわけだが、非常に纏まりがあって一枚岩と一体となった安心感があるのは物凄い。


 過去に父上の軍や、散発的に侵入していたゾンビ軍に対して単独で戦っていた時は、騎士団、つまり貴族やそれに準する者達は、基本的に我が強く纏まりがない。時には議論が躍るだけでその日が終わるなんて事もあった。これは非常に厄介だ。


 秘訣は何であろうか? それといってコツの様な物を見せない想一郎殿。しかし部下は変幻自在に動き、訓練や演習も殆どなく複雑な戦術をこなしてしまう。素晴らしい……。共に戦えることを光栄に思う。


 私、及び想一郎殿の軍は“車懸かり”で現在非常に広大な範囲に散開するアンデッド軍団と戦っている。


 彼らの言う車懸かり。最初私は陣形だと思っていた。だが重要なのは、これは戦術であり“考え方”のようだ。陣形はあくまでこれを行うのに最適化された形をとっているだけで、状況に合わせて形を変え、それに固執する意味はない。


 どうやら重要なのは、“新鮮な部隊を投入し続ける事”のようだ。


 敵の疲弊を待つと言うのはあくまで対人戦闘での副次的な話。今回の敵は疲労しないし何より“眠らない”。と、言う事で重要なのは、こちらの部隊が疲弊しきっても尚戦わなきゃいけない状況を回避する為にこの戦術を使っていると言う事なのだ。


 ──()()()()()()


 “()()()車懸かり”で細かい説明を言うならば、中央本陣の周りを複数の部隊で取り囲み、三つの仕事をやらせる。その三つとは“攻勢”、“撤退”、“休息”である。攻勢と撤退は同じ経路で交差すると隊が乱れてしまうので別経路を取る。そして撤退が完了したら後方での休息。するとどうだろう? 本陣の周りを部隊が回転している様に見える。なるほどこれが“車懸かり”か。


 因みにこれは今回の様な長期戦での話で、短期決戦の場合、新鮮な部隊を断続的に(多くの場合、側面側面へ)送り続ける事によって局地的な乱戦を有利に図る戦術に切り替わるようだ。これもまた“車懸かり”の様に見える。


 それはともかく今回は、本陣の周囲を三つの役割をこなす部隊。それに最適なのは押し引きを素早く行える騎兵や騎士だ。私はそこに参加している。これで敵を断続的に攻撃し切り崩し、本陣を前進させ、歩兵で戦線を確実にする。


 騎兵での戦闘が不利になる様な森や複雑な地形、市街の場合、砲撃やドラゴンによる支援を交えて乱戦に強い歩兵でこれを抑える。


 都合の良い事にここは“北豊穣大平原”と言う広大な穀倉地帯であり殆どが平野だ。そこに敵は広大であるが局地的には小規模に散開しており殆どが軟目標。騎兵で各個撃破できる。因みに大きな敵集団とは戦闘を禁止し決戦形式に移行するよう取り決めたが、今だそう言った敵集団や敵本体は現れていない。


 そうやって戦い続けてもう何日経っただろうか? 迂回にも警戒しつつ、もう何日も戦い続けて大分奪われた領土を奪還した。私や父、オンドレアの故郷をあともう少しで取り戻せると私は気合が入る! しかし、戦線を押し返せば押し返すほどに次なる問題が明るみになってきた。


 タレダレイダーと言う事で様々な出自の者達が新たに合流する。それは良い。だが、敵に包囲されていたが籠城して守り切り、生存した者達がちらほらとこの軍へ合流すると新たな問題が発生したのだ。


『自領を捨て焼き払い、王都へ撤退しろだなんて馬鹿げてる!』

『墓を掘り起こせ? 人心を無視した強引なやり方は如何なものか!』

『俺なんか危うく妻子を手にかけそうになった! だが踏み留まって生き残った!』


『おい聞いたか? この国を襲った不幸の殆どは、やはりネイ公爵様の謀らしいぞ! このアンデッドとの戦も誘引したと聞いた! 事実ならなんと悪辣な!』


 ──それは、父上アンドレ・ド・ネイへの深刻な疑念であった!

 何やら不穏な空気となって来た対アンデッド戦。しかしそんなのは知る由もないヘンタイヌ男爵は聖セイント骨ボーンの謎を解き明かす為、日出国大和を目指し船旅を急ぐ。


 今度は約束の地より更に東進し、中東マグナビス、アラビア・ペルシアな旧帝国ティオシア領へやって来た。


 現在帝国は分裂状態であり、群雄割拠の戦国乱世と化している。しかし、地域で最も大きい都市とされ、旧帝都でもあるアル・ティオダードは高い要塞能力から戦乱に呑まれることなくある程度の平和を維持していた。


『おい見ろ! 絨毯が人を乗せ空を飛んでいるぞ!』

『おお! マジか! 噂には聞いていたがマジもんだ!』

『ママー! 俺、あれに乗ってみたいよ!』


『『──お前は相変わらずマザコンだな!』』


「……我が妻よ。あれに乗って見たくはないか?」

「アタイでも乗れるかな? ハッハッハ!」


『──これはこれは珍しいお客様! でも大丈夫にございますよ!』


「「……ん?」」


『空飛ぶ絨毯にも色々ありまして、普通乗用絨毯、機動跨り絨毯、そして、そうですね~……あなたの場合は(ジロジロ……)“大型貨物絨毯”など如何でしょうか? 5tまで行けますよ! 値段は応相談にて! ヒッヒッヒッ!』


「──アタイは大型貨物扱いか!? フンガァァァァアアア!」

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