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ダンジョン辺境伯爵と公爵令嬢  作者: もやい
第二章
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第十二話その三 議論

【さぁどうする想一郎】


 フィー・イシルディルはチート聖女と言われるだけあって、難民に対する指導力は半端なかった。彼女は一手に難民を導いてくれて、ジェンヌへ向かった。そのおかげで俺達の軍は自由に行動することが可能となった。


 アリスの偵察から推測するに、敵はネイ公爵領を広範囲に散開している模様。そして組織立って集団でいるわけではないようだ。数は膨大で最短経路はアンデッドでひしめいているとの事だが、不思議な事に、俺達の辺境伯領とヴァンパイア領の国境からは敵の侵入がない。


 どういう事だ?


 軍議は難航した。このまま全軍で王都へ迎えばもしかしたらその隙をついて迂回されるかもしれない。敵が散開している所をついて各個撃破すべしという意見もあるが、それも同様、とにかく纏れば纏るほど他経路から侵入される危険性が増す。


 ならば、分散して事に当たったらどうだろうか? 気になる国境に一部の兵を置いて別行動する。……いや、むしろ敵本体とぶつかってしまったら逆に各個撃破のチャンスを相手に与えてしまう……。


 各部隊長全員で議論する中、今回も同行してくれている、ジェンヌ魔法大学教授ロスタエル・ルインシル・ヘレドールはエリザベスとの会話でしれっと重要なツッコミを入れてくれる。


「動くに動けないですねープフフ」


「そもそも両軍の戦略目標はなんだ? 私達が王都へ向かう理由は? 敵の目的、意図はなんだ? まったくもって謎である……」


「あー言われてみれば確かにープフフ。アンデッド化して戦力をかき集めているように見えるけど、その戦力を何処にぶつけるんだろうねー? 王都? それとも拡散して領土の実効支配? もしかしてうちら? ダンジョン?」


 白熱した議論は二人の会話を聞いてストップした。確かに戦略目標はなんだ? あやふやだ。洗い出してみよう。俺達は侵入したアンデッドの駆逐が目的だ。王都へ無理していく理由は、あるとすれば陥落を防ぐことだろうか? それか、戦力を集中して敵野戦軍撃滅の手伝いか?


 王都が落ちたら一大事だ。しかし全国から兵力が集まっていると聞いている。守りを期待してもいいのでは? しかし慎重派のミラは言う。


「希望的観測は危険です想一郎様。とは言え、私達には私達の守るべき物があるのではないでしょうか? ここは無理して王都に向かうべきではなく、直近の問題に集中するべきです!」


「ソフィアはどう思う?」


 俺は積極派のソフィアにも意見を求めた。


「確かに王都に無理していく理由は現在ないですね。別に招集されているわけではないですし。ですが、ここで座して守っていても、奴らゾンビ共は王国領土でスリラーを踊りまくるだけです!」


 そこでロスタエル教授が話に参加する。


「一見、両者の意見は対立している様に見える。だが面白い。よく考えてみれば、実は両者の意見は相反してはおらず、概ね一致している」


「プフフ。要はこの辺のゾンビ共を蹴り出して戦線を押し上げろってことですねー!」


「あ~もう! じれったいですわ! 本陣はこの辺でドシッと構えて戦線構築して、その周りを騎兵でグルグル回ってゾンビーにムーンウォークさせればいいじゃないっ!」


「「「──おやおや!?」」」


 言い方はともかく、オンドレアが珍しくまともな作戦を立案したなと皆は不思議がった。そして俺は決断した。


「よし! それで行こう!」


「──っ!?」


 珍しく自分の意見が通った事に自分で驚くオンドレア。だがすぐに居直って


「──と、当然ですわ! 全ては想一郎様の為! 皆の者! 存分に奮戦なさい! オ~ホッホッホ!」


 と、稚拙な高慢ちき態度で全軍の士気を鼓舞した!


『『『ウェーイ!』』』


 敵の目的は結局分からない。だがそれは継続して探りを入れるとして、とにかく今やることは決まった! ここから敵を駆逐し戦線を押し上げる! ……すると、遠方から騎士団がやってきた!


「あ! あの旗印、真紅の髪は! 勇者の中の勇者なのじゃ!」

「ガハハ! 後方から援軍は来ず、前方から援軍が来たぞ!」


「──我が名はロザリー・ネイ! 想一郎殿! 転戦していた所、流れてこの地にたどり着いた次第! 物資補給等の支援をお願いしたい!」


「もちろんだ!」


「あらあらぁ~……? お姉さまが来ましたわ……」

 神話によれば、人間族は原初、タレダルのエデンに住んでいた。しかし蛇に化けた悪魔がそそのかし、世界樹に実った神々のみが食することを許される禁断の果実を食べてしまったのである。


 ──結果、人間族はエデンを追放された。


 だが同時に古のハイエルフより土地を与えられた。それは、タレダル教の聖地となり、また、大呪われし荒野を憤怒山脈で塞き止める人間族とモンスターとの最前線でもある“約束の地”となった。


 ヘンタイヌ男爵はそんな聖地を訪れていた。


「オークが人に下ったという話は本当だったのか……信じられない!」

「しかし、コレが敵でなくて良かった……戦ったらタダでは済まない!」


 そういう二人は東西聖墳墓守護団団長と、憤怒山脈を守護する聖壁騎士団団長。


「“コレ”とは失礼な……」

「ハッハッハ! 二人とも中々のイケメンだね! 食っちまおうか!」


「「──ッ!」」


(まさかこんなことになるとはな……)

(やれやれだぜ……)


(ママー! 俺、オークと対立する聖地をオークと共に巡礼しちゃってるよっ!)

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