第十二話その二 パンデミックゾンビー
【航空偵察を行うアリス】
お姉ちゃんの故郷を攻撃するヴァンパイア。お兄ちゃんは対アンデッド装備に急いで換装し、王都を目指していた。しかし王都へ真っすぐ行くには隣接するネイ公爵領を通らないといけない。前にお姉ちゃんと一緒に通って来た道を空から逆走する。とにかく現在の状況が分からないので私はガーストラドスに跨り空から威力偵察を行っていた。
初めは沢山の難民がお兄ちゃんの領土へ向かうのを確認した。だけど次第にそう言った人の数は減り、だんだん必死の喧騒で兵士達がありとあらゆる物に火を付け走っている。中には民間人を殺しちゃってる兵士たちまで居た。
『わたしゃ殺されたってここから出て行かないよ!』
『黙れババァ! 残ればゾンビにされるんだぞ!』
『だから何だい!? 私の様な老婆は戦力になんかなりゃしないよ!』
『く……仕方ない……!』
『──うっ! うわぁぁ! ドラゴンだぁぁ!』
『『『──ッ!』』』
私はすぐさまガーストラドスで脅してそれを辞めさせるけど、こういったのは何処でも起きていた。まさに混沌の極みって感じだった。兵士たちは諦めて馬に跨り撤退する。老婆は私を見送った。そしてその場所を境に人気が無くなる。そして異変は起きた。
「生存者?」
黒く焼けた小麦畑を行く一団を発見する。
「駄目だな。あれは手遅れだ」
ガーストラドスは諦めの声を上げる。近づいてみれば“アーアー”と唸り声をあげるゾンビ達だった。ガーストラドスは命令されることもなく焼き払う。
「お姉ちゃんのお父さんは焦土作戦中?」
「見るからにそうだろうな」
至る所で立ち上る黒煙。人が燃やされた跡も点在し、その異臭も相まって、先へ進めば進むほどゾンビ達は死の行進をしていた。まるでゾンビ映画見たい。でもちょっと違うのは、焼かれなかったり打ち砕かれなかった骨は犬であろうとも、黒いフードを被った異質な者達によってみるみるアンデット化されていた。私とガーストラドスはそれを攻撃して阻止する。
「もうこの先の皆はゾンビにされちゃったのかな?」
「最初に見た難民はまだ幸運だ。この戦は奇襲されている。全体のどの位が撤退に成功できたかはわからん。残念だが逃げ遅れた殆どの者は今頃死んでアンデッドとなって居る事だろう」
ガーストラドスはそう予言し、偵察すればするほど人影は全てゾンビと化していた。数えられない。とにかく膨大な数のアンデッドがこの地をウロウロしていた!
「このままだとお婆ちゃんが危ない!」
「……一旦戻るか」
──しかし手遅れだった。
お婆ちゃんは何処から来たか分からないゾンビ達に襲われ……
「ウーアー……」
ゾンビにされちゃった……!
☆
「──お兄ちゃん! 偵察してきたっ!」
苦い思いをしたけど、きっちり自分の手でケリを付けて本陣へ帰る私。
「アリス、戻ったか! どうだった?」
「王都へ行く道はもうダメみたい。アンデッドだらけ」
「く……そうか……ありがとうアリス……」
そこは軍隊の数以上に難民でごった煮状態! 対応に迫られ、てんてこ舞いのお兄ちゃんは進軍できずにいるみたいだった。
「あーくそ! どっちにしたって想一郎! これじゃ進軍できねーぞ!」
「このままだと兵糧を食いつぶされちゃうのじゃ!」
「──難民なんてほっといて進めばいいのよ! オ~ホッホッホ!」
「駄目だオンドレア! 捨ておくわけにはいかないッ!」
「あ、あら!? 想一郎様!? ……私ったら何を言っていたのかしら! まさに想一郎様の言う通りですわ! ──てへぺろ! オ~ホッホッホ!」
「謎である。人道に走るのかリアリストに走るのか。難しい命題である」
「これもサングイアの作戦だったりしてープフフ……」
「──想一郎様」
すると、一人の女性に導かれて現れる沢山に荷馬車。
「ん? あ! 貴方はチート聖女フィー・イシルディル殿!」
「帝国より物資を届けに参りましたよ」
「おおっ! ガハハ! こりゃ棚ぼただぜ!」
「ん? しかしなのじゃ……何故に帝国はタレダレイダーなのに援軍ではなく物資なのじゃ?」
「帝国はオークに奪われた領土の奪還作戦で動けない様子」
「ボボンギャマッチョが落ちた今が攻め時と言う事か……」
お兄ちゃんは残念そうな顔をする。チート聖女フィーお姉さんは言う。
「想一郎様方はどうか進軍を続けてください」
「しかしこの状況では……」
反論するお兄ちゃん。難民たちはざっくり5万人位いそう……そして彼らは怯えて軍隊から離れようとしないっぽい。だけどフィーお姉さんは落ち着いた自信を見せて言う。
「──問題ありません。私が設備の整ったジェンヌまで彼らを導きましょう」
タレダレイダーが発令してもなお、使命を感じ航路を東へ進むヘンタイヌ男爵は、帝国傘下のテーヌ王国へやって来ていた。そのテーヌ王国は、まさに古代ギリシアな国であった! アリスが居たら喜んだだろう。
しかしそんな街中を堂々と闊歩するボボンギャマッチョとヘンタイヌ。人々は驚き怯えながら言った。
『『『──デ、デケェ!』』』
「我が妻に対して失礼な……」
「ハッハッハ! アタイは別に構わないよ! むしろ誉め言葉さ!」
(デカいはオークの誉だからな!)
(ママー! やばいよやばいよ!)




