第十一話その七 こんにちは
【戦いたい気持ちを抑えながら指揮するディンゴ】
よ~し!
アリスは現在“ボボッチ”と熾烈な決闘をしている。お蔭で飛び道具を引き寄せるスキルを無効化出来た俺達は敵右翼にかなりのダメージを与えて、遂にミラの精鋭鉄薔薇がそれに突入した!
姫園は無双して敵右翼騎兵を壊滅、突破して敵右翼後方へ回り、それに続くジュリアも順調に側面へ展開した。
……しかしあのアリスと渡り合えるなんて、とんだぶっ壊れ“ボボッチ”だぜ……! それはともかく
「ファランクス! ──前進開始するぞ!」
『『『ハウッハウッ!』』』
俺はそう叫び隊形を組むファランクス隊の掛け声。想一郎とオマケのオンドレアお嬢様は俺と共にアリス不在のファランクスの指揮をしていた。
わざと出遅れての前進。これは斜線陣の戦術通り。しかし薄く伸びた俺達の中央と右翼を敵の左翼騎兵は見逃す気が無かった。
『ウガガ! 敵はオレたち右翼に戦力を集中シタカ! だが正面ががら空きダッ! ──トツゲキ!』
『『『ウゴガゲェェェ!』』』
──ゴゴゴゴゴゴ!
俺はてっきり敵左翼騎兵は機動力を生かしてこっちの右翼を迂回すると思っていた。その為のソフィア魔術師騎兵中隊と変態男爵の第一騎兵連隊だった。だがオークは中々実直な奴らだ。あいつ等はなんとハリネズミと化したマケドニア式ファランクス正面へ突撃してきたのだ!
想定していたが、ファランクスの威力を実際に見る俺も想一郎も驚きを隠せない! まるで敵は生け花で使う剣山にパンチしたみたいに自滅した! 奴らは殆ど肉薄する事が出来ずに“生け花”と化した!
『『『ウガゴグェェェ!』』』
「やべ~な想一郎! このファランクスがあれば地域の覇権も夢じゃないぞ!」
「そんなにうまくいかないさ……それに俺は覇権に興味はない」
「ガハハ!」
敵が正面突撃で壊滅してくれたお蔭で暇になったソフィア隊と変態男爵隊だったが、かえってそれが功を奏した。中央と右翼に追随するソフィアは、突然馬の蹄の足音が変わるのに気付いたのだ。
「チッ! 目立った功績を出せないじゃないか! このままじゃ将官に──」
──ゴッゴッ。
「──ん? なんだこの音は……ほほう?」
ニヤつくソフィア。
「おいお前ら。神々が錬金術の威力を実験する機会をお与えになったぞ!」
『『『──?』』』
「例の奴を出せ!」
“あっ!”と何かに気づいた魔術師達は懐から長細い何かを取り出した。
「準備はいいか? 合図したら一斉に放り込めよ!」
ソフィアは満面の笑みで地面にあった“隠し扉”を開けた! するとなんと、いつ出ようかモンモンとしていた敵が居たのだ! 地下に潜伏した奇襲部隊だ! しかし意図せず突然差し込める光で呆気にとられるオーク達とゴブリン達。ソフィアは長細い物に葉巻の火で“点火”し奴らに言い放った!
「──神々は与えたもうた!」
ソフィアと魔術師達が一斉に長細いのを放り込んで蓋を閉めた!
──ちゅどーん!
「──ダイナマ~イト!」
『『『イーハー!』』』
「ZTN!」
それに気づいた変態男爵と第一騎兵連隊は周囲を警戒した。すると少し離れた別の場所から湧いて出て来る別の奇襲部隊! だが奇襲部隊は少数であった……変態男爵は敵を、それはもう滅茶苦茶にした!
「うお! 想一郎! あいつ等またホリネズミしてきたぞ!」
「危なかった! いいぞソフィア! 男爵! ……ん?」
想一郎が周囲の異変に気付く。
「お? どうした想一郎? また奇襲の臭いか?」
「そういえばオンドレアはどこに行った!?」
「え!? あ、あれ!? いない!」
すると突然頭上通過する巨大な影!
「──オ~ホッホッホ! さぁ私が“跨って”あげているのだから当然奮戦なさい! ガーストラドス! オ~ホッホッホ!」
──テッテレー!
「シギャァァァァアアア! 元気MAX! やる気MAX! 敵陣に俺の喜びをぶちまけてやるっ! ──ガォォォォォオオオオオ!」
「「「──ッ!」」」
「謎は解けた! あ奴は跨って貰えない事に不貞腐れていたのか!」
「あーやっぱりー? ……てかキモッ! プフフ」
「フィリップ王太子殿下……!」
「うむ。よい。楽にせよ」
「ハハッ!」
(齢八歳でこの貫禄たるや!)
「スパイマスター。頼みがある。ある者に探りを入れて欲しいのだ」
「……誰でございましょうか?」
「──冒険者。エマ・リスモンだ……!」




