第十一話その四 生還
【考える想一郎】
今の俺にはどうしようもない。空から飛来する決死のバターゴブリン、カミカゼゴブリングライダーを見上げるばかりだ! こちらからの飛び道具は封印されてしまった。では前進開始か? いや、戦力差は相手の方が上だ……! しかしこのままでは! くそ! どうする……!?
ディンゴの雇った空の冒険者、エリノールの鷲が、飛び道具が使えないのを不便そうに近接戦闘の爪で1機撃墜し、アリスであっても自由落下には逆らえず、“空気を蹴って二段ジャンプ”からの2機撃墜が限界だった。
──空気を蹴って二段ジャンプだって!?
「あらあらぁ~? 流石想一郎様の妹ね! オ~ホッホッホ!」
「馬鹿な! 謎である! 物理法則を無視しすぎだ! エリザベス! 説明頼む!」
「そんなのロスタ……私にわかるはずが無いですよねー! プフフ」
「そんなのどうでも良いのじゃ! モゴモゴ! ヒーヒー! モゴモゴ! 『ただの壁』──ッ! ──モゴモゴ!」
ナウススは魔力のクッキーをバリバリ食いながら魔力のポーションでそれを胃に流し込み、『ヒーヒー』言いながら捌き切れなかったカミカゼゴブリングライダー迎撃の為に『ただの壁』を詠唱し続けていた……。他の魔術師達も同様であった。何時までもつのか……? 急がねば! 考えろ!
──ごいんっ!
『ギャ──……!』
──そうだ!
俺は何故か記憶から飛んでいた、アリスのテイムしてきたガーストラドスの存在を思い出した! あのドラゴンを利用してカタパルトを破壊できないだろうか? 俺はアリスに問う!
「アリス! そういえばガーストラドスはどうした!」
アリスはジャンプしながら言う。
「お兄ちゃん! なんか、拗ねた犬みたいになっちゃって後ろで横たわってるっ!」
「──犬!?」
ディンゴが謎反応するがそれは無視して後ろを振り返る。するとそこには百人近くの兵士がリードの様な綱を引っ張って、引きずられる地面に横たわったドラゴンが!
『『『せーの!』』』
──ズリズリズリ。
「──フンッ! 今日は機嫌が悪い! 俺は飛ばんぞ!」
こんな時に! すると姫園が呟く。
「一体何が不服と申すのか! 言わねば判らぬであろう!」
「──うるせぇ!」
ガーストラドスは引きずられながら不貞腐れる。ソフィアが悪態をつく。
「チッ! 腐ってやがる!」
「──早く何とかするのじゃ~! モゴモゴ! 『ただの壁』──ッ! モゴモゴ!」
『そ、想一郎様! ド・ヘンタイ男爵が!』
「「「──何!?」」」
「──想一郎様! 帰還致しましたぞッ!」
そこには失踪していた男爵の姿が!
「「「──ド変態!」」」
「ガハハ! 生きていたか変態野郎! 今までどうしていた? 何があった!?」
「ディンゴ殿! 細かい事は後にて! して、戦況はいかに?」
「あぁ……かなりマズイ……」
「なんと……」
ヘンタイヌ男爵は望遠鏡で敵陣を覗きながら言う。
「ぬぬっ! なるほど……しかし敵は更に増援のようですぞ!」
「「「──なっ!」」」
俺は望遠鏡から敵陣を覗き見ると、新たに合流するオークの一団が! ディンゴが言う。
「くそ! 例のハンカチ奴隷オーク達じゃないか!? 帝国め! しくじったか!?」
「──ハンカチ奴隷オーク!? それはどういう……あ、あのハンカチ! ──そうか! 生きていたか!」
ヘンタイヌ男爵と関係のありそうなオーク達が敵に合流する!? 男爵は何かを思いついたようだ!
「想一郎様! ディンゴ殿! 陣替をお願いします!」
「はぁ!? 馬鹿な! 敵前で陣替なんか出来るか!」
「まてディンゴ! 男爵の話を聞こう!」
「想一郎!?」
「どういう事か説明してくれ!」
男爵は答える!
「──想一郎様! あの合流するオーク達は味方でございます!」
「「「──な! なんだってぇ!?」」」
「そして、敵前で陣替して奴らの気をこちらに引き付けるのです! そうすれば……! うぐぐ……生きていたか! 愛戦士達よっ!」
「あらあらぁ~? 愛戦士! 素晴らしいですわぁ~! オ~ホッホッホ!」
「まったく謎である!」
「プフフ」
しかしもう一々驚いていられない! 俺は男爵生還の感動もとりあえず、決意した!
「──お兄ちゃん! 陣替えするなら“斜線陣”で行こっ!」
「そうか! よし! ──陣替えだ! 斜線陣!」
「「「──イエス! マイ・ロード!」」」
「──コラリー待ってくれ! 違うんだ!」
「何よ! 玉無しアベル! またそうやって子供たちを見せびらかして!」
「違うんだ! この子たちは孤児なんだ!」
「──ッ!」
「ちゃんと話を聞いてくれ! 俺は今、孤児院で教師をしている! 色々考えた。今までの自分を考えてみた! そう! ちょっと前の俺は酷いヤリチンだった! しかし問題の種が潰えた今……潰えた今ッ! ──俺は君の事だけを愛しているって事に気づいたんだッ!」
「────ッッ!!」
神々の悪戯? それとも半神の気まぐれ? チート聖女のフィー・イシルディルは変わりつつある貧困街で、フフッと笑顔になった。




