第十話下の下の下 天然の謎行動
【戦いがあまり得意じゃないジュリア・ナポリターノ大佐】
私は姫園一生に頼まれてグリムリーパーチキンをボス部屋で調理していた。冒険者や魔術師支援大隊があれほど恐れていたのに、調理してみれば普通のチキンだった。オーブンが無いので鍋に蓋を被せて代用する。
にしても外が騒がしいね~……。そしてニンニクの臭いが凄まじい。私は鼻が敏感なので、この臭いはあまり好きじゃないの。調理でニンニクは使うけど、あくまでほんのり香味付けで使っていつも取り除くのが私の定石。コーヒーの匂いは大好きだけどね。
(※イタリア風のジュリアはイタリア人と同様、実はそこまでニンニク好きではない)
──ドッゴーン! ドッゴーン!
(あっ! この音は砲撃? 戦闘してたんだ! なんだ~言ってくれればよかったのに!)
私はチキンの焼き加減をチラ見して、いい焼き加減であるのを確認すると、それをもって破壊された門をくぐった。
──シギャァァァァァ!
「──え? なにこの鳴き声……」
「おいジュリア! 何してたんだ!?」
「あ、ディンゴ准将! チキンがそろそろ焼き上がりますよ!」
「それ所じゃない! ガーリックゴブリンが襲ってきた!」
「あ~だからか~」
「だが、それは何とかなりそうだ! しかしどうやら今度はあの鳴き声! やばい! 間違いなくドラゴンだ!」
「え!? ドラゴン!? あわわ! このチキンどうしよう!?」
「──バカな! それ所じゃない! 捨ておけ!」
「え!? ミラ!? ダメだよ勿体ないよ~!」
──ガオォォォオオオオ!!
「「「──ッ!」」」
うわわ! 本当にドラゴンが現れた!
「ギャァァアア! ガーストラドスだぁぁあああ! 逃げろぉぉぉおお!」
「ダァァァァァァアアア! さっさとどっか行け! 俺の縄張りに勝手に王国を作ってからにッ! このニンニク臭いゴブリン共め! 何が桃源郷だ! 安住の地だッ! その匂い、俺の寝床まで匂ってくるんじゃぁぁぁああああ!! この匂いは、ごま油並みに飯テロだと何度言ったらわかるんじゃぁぁぁあああッ!!」
──シギャァァァァアア!
『『『ギャァァァアアア! 逃げろぉぉぉおお!』』』
そしてニンニク臭いゴブリン達は急いで去って行った……。ん~ごま油。確かにあの匂いは凄まじいねぇ~……。
「──ん? 人間!? ほほうこれはこれは……」
そう言うドラゴンが私達の臭いを嗅ぐと、いきなり地面を踏み鳴らし、勇ましく自己紹介してきた!
──ダーン!
「「「──ッ!」」」
「我が名はガーストラドス! この地の覇者! 食物連鎖の頂点であるドラゴンなりッ!」
──シギャァァァァアア!
まるで爆発でも起きたかのような咆哮! 私達は成す術もなく圧倒されちゃう! だけど、むしろ動じる所か、勇敢にも突っ込みを入れるロスタエル博士とエリザベス。
「ガーストラドス? 一体どういう冗談だ? 酷い名だ。謎である……」
「あ~これは古エルフ語で、直訳すると“少女が跨る”って意味ですねープフフ」
──え?
「ご名答だッ! 我が名はまさに、少女が跨るドラゴン! さぁ誰が跨るのかぁぁぁ!?」
すると変なドラゴンは巨大な翼で突風を引き起こし、特に女性冒険者殆どのスカートが捲られてしまった! ──わ、私も!
『『『キャーーーーーーーー!』』』
「ガァアッハッハッハ!」
ご満悦の変態ドラゴン! 何考えてるの!? あいつっ! しかし全身鎧のミラ、袴を履いた姫園、ジーパンのソフィア、そして黄昏色に輝く貞操帯のオンドレアお嬢様は堂々としていた!
「下らん……」
「クッ! 何か損した気分にござりにて候!」
「チッ! 野蛮な! しかしお前らも下半身の防備が甘いぞッ!」
「あらあらぁ~? 好きなだけ見るがよいですわ~! ──私の宇宙をっ! オ~ホッホッホ!」
そして……
『『『ウェーイ!』』』
『『『ウェーイじゃないわよっ!』』』
歓喜を上げる男性陣に突っ込みを入れる女性陣。私は腹が立ったので、失言した政治家の様にヘイトを集めた変態ドラゴンの足を蹴ってやった!
「ん~! この変態ドラゴン!」
──ゲシッ!
しかし変態ドラゴンには利かなかった……!
「……ん?」
変態ドラゴンはギロリと私を見る……あ、あわわ……しまった……!
「謎である。エリザベス……さっきのがパンチラであろうか?」
「いや、どう見てもパンモロですねープフフ」
「想一郎様想一郎様! お好きなだけど~ぞ~! キャーーー(><;」
「…………」
すると変態ドラゴンは、私の手に持っていた鍋の匂いを嗅ぐと
「ん? これはグリムリーパーローストチキンだな!」
クチバシで勝手に蓋を開けて食べてしまったっ!
「あ~っ!」
──テッテレー!
「うまいッ!」
……なんか私はもうどうでも良くなって、この変態ドラゴンの背に飛び乗ってモフモフできるか試してみた。
『『『──え?』』』
「──硬い!」
──ゴン!
やっぱり鱗で硬かったので、空になった鍋で変態ドラゴンの後頭部を殴って下りた。
『『『いやいやいやいやッ!』』』
「おい……今何をした……? 娘……もしや貴様、天然か?」
あ~またあの鷲モフりたいな~!
「──お兄ちゃんっ! コイツぶっ飛ばして良い?」
「ああ自称妹アリス。好きにしていい……」
「なに? おい貴様ら人間! 調子に乗るなよ! 俺はドラゴ──」
──ポコーン!
──シギャァァァァ────…………!
そして変態ドラゴンは星となった。
「ガハハ! ジュリア! ペペロンチーノ頼む!」
「あいよっ!」
「な、なんなのじゃ!?」
「謎である」
「プフフ」
アトランティアはハイエルフの女王が統べる地。その歴史はアルフヘイム共和国に次いで非常に長い。千年? 1万年? いや、なんと“6600万年”の歴史を誇っているのだ!
しかしリザードマンやネプトゥホミヌス(海底文明)の歴史は億単位であるから、対して特に長い訳ではないと、若干上から目線な態度でヘンタイヌ男爵を迎えてくれるアトランティア女王の側近は言う。
「だが、書物に関してはこの王国の図書館に1億年分所蔵されている。それは最長である」
「それは凄い……!」
『一億年分だって!?』
『積み重ねたら月にも行けそうだな!』
『おかあちゃん! 俺、そんなに読めないよ!』
「“最近”館長が変わったが、思えば“数千年”ほど出てきていないな……。もしや迷っているのではないか? 彼なら在り得るな……」
側近はそんな冗談のような“事実”を口にしながら図書館の扉を開けて見せる。そこに広がっていたのはまさに
──本のダンジョンだった……!
ヘンタイヌ男爵は思った。
(聖セイント骨ボーンの書物をここから探しだすのか……不可能に思える……)
「──そち。よもや聖セイント骨ボーンを知りに来たのであるか?」
「これは女王陛下。ご明察にございます」
「「「──ッ!」」」




