第十話下の下の上 パサパサ
【高台で狙撃しまくるエリザベス】
う~ん。しかし何故ゴブリン軍団が攻めて来たんだろう? もしかしてアリスちゃんがミスリル製でネイ公爵趣味のゴテゴテ装飾だらけの槍を真上に投げたりしたせいなのかな? ついつい人は理由や意味を考えてしまいがちだけど、実は色々な偶然が重なっただけだったりしてープフフ。
例えばゴブリンが、えっとガーリックゴブリンだっけ? が、何らかの脅威にさらされ軍を起こした所を私達がたまたま現れた……? 考えすぎかなー? とかフラグを立ててみるープフフ。
とにかく矢は有限。私はただのゴブリンではなく、現場指揮する偉そうな将校ゴブリンを狙撃しまくっていた。にしても元気一杯なゴブリン。地上ではなんかゴブリンにしても満たされていない感じだったのに、ここのは違う。
指揮する隊長が居なくなっても、元気一杯に混乱する兵卒ゴブリン。
なんか通販番組で“毎日このサプリは欠かせません!”とか言ってる人達見たいに活力と希望に満ち満ちたゴブリン達。何故か単独でダンジョンにいたウッキースマイルと何か関係があるのかとつい考えてしまう私。
「あらあらぁ~? エリザベス。そう言えばゴブリンは何人にも支配されない安住の地を求めていたそうですわよ? ま、私達にこれから蹂躙されるのですけどねっ! オ~ホッホッホ!」
そういう事か。相変わらず容赦ねーな……プフフ。
「──ファイエルッ!」
ソフィアが“ファイアー”ではなく“ファイエル”とか何のネタかな? まー鈍重だけど一直線に向かってくる巨大なフォートレスシェロプ婆にありったけの砲弾を浴びせた。しかし魔法の障壁が何重にも重なって砲弾を無効化した!
「なんなのじゃ!?」
「くっ! 魔力補充開始! 次弾急げ!」
魔術師達はポケットから、新開発された魔力充填レーションと呼ばれる300グラムある“非常にパサパサしたクッキー”を貪り始めた!
『サー! これは非常に飲み物が飲みたくなります! サー!』
「シット! 口の中の水分と言う水分が奪われる! ガッデムッ! ──ゴフッ!」
乾いたクッキーの粉末が、急いで食べるソフィア大佐の口から噴き出した……プフフ!
「ぬ~! 食べ物ならうまくいくと思ったのじゃが!」
ナウスス様……てかテストしとけよ! 飲み物持っとけよ! つうか300グラムのクッキーとか結構な量だろ! プフフ!
だがそんな空気を読んでくれる優しいゴブリンなわけがない。フォートレスシェロプ婆は確実に迫っている。あれが戦線に到達したら余裕で突破されちゃうだろうなー……。そしたらまたアリスちゃんにやってもらうしか無くなってしまう。もしくはグリムリーパーチキンの居たボス部屋へ撤退。私はそれでいいと思うけど、プライドの高い方々はガッカリするだろうなー。プフフ。
現在私と婆との距離は300メートル。ロングボウの射程距離は200メートルだけど残念。私はウッドエルフなので、風魔法を矢に込めて放てば300は余裕だったんだよねー。まぁ威力はお察し。物は試しで、背中の砦の胸壁狭間から顔を出すゴブリンシャーマンを狙う。
──ピシュッ!
『…………──ウギャッ!』
あっ! 一人倒せた! プフフ!
「あらあらぁ~? さすが田舎エルフね! まさに飛び道具は卑しい身分の使う武器ですわ!」
まったくブレないオンドレアお嬢様。てか連隊長殿はいつまで高みの見物を決め込むのかなー? プフフ。でも時々想一郎様が高台で高飛車してるお嬢様をチラ見すると、安堵して戦っておられる様子。これはこれでいいのかな? プフフ!
「キャーーーーーッ! 想一郎様カッコイイーーー(><;」
しかし真正面から突撃しか頭にない脳筋騎士にとっては、頑丈な鎧も貫通する飛び道具は非常に卑怯な武器、悪魔の武器と忌み嫌われる。だけど、悲しいけどこれ戦争なのよねー! プフフ!
「はい皆ねらってー! ──ファイアー!」
私はロングボウ旅団に命令して、一斉射で防護魔法を唱えるゴブリンシャーマンたちを一掃した。てか物理障壁も出しとけよ! マヌケだなー! プフフ!
「ナウスス様ー! 防護魔法術者一掃しましたー!」
「のじゃ! 良くやったエリザベスや! ──ソフィア!」
「──モゴモゴ! 砲撃レディ!」
(アレを食い切ったのかよ! プフフ!)
「距離が大分近い! 直射するぞい!」
『『『イエスマイ“のじゃ婆”! モゴモゴ!』』』
「──ファイエル! モゴモゴ!」
──ドドドドドドッゴーン!
「ウギャァァァアア! 痛い! あたしゃ痛いのはやだよ! さよなら!」
『……敵移動要塞……退散! モゴモゴ!』
『『『ウェーイ! モゴモゴ!』』』
その様子を見ていた敵将ワッキークサクサは慌てた!
「ギャギャ!? しまった! ドラゴン対策が! これはマズイ! 撤t──」
──ガオォォォオオオオ!
こ、これは……ダンジョンの空を震わせる何かの遠吠え……今あいつ、ドラゴン言ったよね……?
──シギャァァァアアッ!
親族であっても内輪揉めの絶えないヴァイキングの覇権争いは、元ヴァイキングであった“ロロ姉さん”ことローシェ・デ・ロイテル提督をジェンヌへ定住させるきっかけを作った。彼女はその後さんざん外洋で暴れまわった後、幸せな家庭を築くに至ったが、現在はその時出来た名声のプレッシャーで酒浸りの生活となってしまっている。
「なぜ酒がやめられないのか?」
「水は腐るからだ……遠洋を続けていると船上での飲み物は酒ばかりとなる……」
「なるほど……」
『う、うげげぇ! おっかさん! 俺下戸なんだよぉ~!』
『下戸は船乗りには向いてねぇーな……』
『てかお前船酔いに下戸にって散々だな……』
『おっかさん!』




