第一話Bの3 バターの襲撃
そしてしばらく行くと、
──クンクン。
「臭う……」
将来の麗しき義妹、アリスちゃんが言った。
「ん? どうしたの? アリスちゃん。コラリーの腋臭がそんなに臭うの?」
──シュッシュ。
私はコラリーに、一吹きで農奴共を一ヶ月養えるほど高級な香水を惜しげもなく振り掛けた。
「ちょ!? お嬢様……!」
コラリーは困っている。
「そうじゃない……この臭いは……。ゴブリンの臭い!」
「へ?」
アリスちゃんがスクっと立ち上がる! すると、
『ゴ、ゴブリンだぁ!』
『狼に騎乗し、頭にバターを乗せたゴブリンだぁ!』
『な、何!? 戦闘態勢! 何としてもお嬢様をお守りするのだ!』
『ウ、ウィー!』
急に外が騒がしくなる。するとアリスちゃんが御者に言う。
「御者さん! 飛ばして! ティオシア産馬の本領を発揮して!」
『あ、はい! て、お? おお! 知ってるね~! アリスお嬢様! 東の帝国を更に東に行った砂漠の多い国々、中東マグナビスのティオシア産馬は、それはもう──』
「──御託はいいから!」
『お、おぅ……! いくぞぉー!』
ギュン! と、猛加速する!
「──わぁ!?」
驚くコラリーはまだまだね。私はお紅茶を啜りながら余裕を持って言う。
「──ゴホッゴホッ! ……さすが、モンスターカー数台並の超高級馬車ね」
「お姉ちゃん。もうその、超高級のくだり入らない……」
(てか、むせてるし)
アリスちゃんに指摘されてしまう。キャッ! カワイイ!
そしてアリスちゃんは御者に尋ねる。
「この馬車に武器は無いの?」
『そりゃ~当然超ありますでさ! 超スパイカー並みの超高級馬車ですからね! 超お嬢様! そりゃ超ボンドカー並に超武装してますよ~!』
「“超”多い」
『ですよね~!』
「…………で、何処?」
『超椅子の下です!』
アリスちゃんは超高級羽毛ふかふかソファーのクッションをぶちまけ探す。
「──あった」
アリスちゃんが手にしたのは“連弩”であった。
(※連弩とは、古代中国で開発された、再装填を素早く行えるクロスボウの様な物)
そしてアリスちゃんは、普通に開けれる天窓があるのに、惜し気もなく血税を注ぎ購入した超高級馬車の屋根を、パンチで破壊すると、
──バチコーン!
上半身を外に出し、騎士の打ち漏らしたゴブリンウルフライダーを迎撃しだした!
──ビュン!
『っぎゃぁ!』
落馬ならぬ落狼するゴブリンは、バターをベチョッと落としながらグルグル転げ落ちて事切れる。
「た、頼もしい限りにございます……!」
コラリーが怯えながらそう言うと、私は得意げに言う。
「さっすが想一郎様の妹ね! ゴブリンも、“バター”だけに、“ばた~ん”!」
(うわっ! さっぶ!)
『てぁっ!』
『とぁっ!』
『へぁっ!』
『『『我ら合わせて護衛騎士三兄弟!』』』
『──団子三兄弟!』
『なんだそれっ!』
『古っ!』




