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ダンジョン辺境伯爵と公爵令嬢  作者: もやい
第二章
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第十話上 コーヒーの飲み方

【オンドレアの軽率な行動に悩む想一郎】


「想一郎や。もうオンドレアが勝手な行動しない様に常に傍に置いといた方がよいんじゃないのじゃ?」


 ナウススはもう無理やり語尾に“のじゃ”を付けるのが定番となっている。


「ガハハ! 思えばそうだな! そうすればもう心配する必要はないな! 多分! ガハハ!」


 二人の言う事には一理ある。しかしオンドレアが傍にいると常に“かまってちゃん”で滅茶苦茶面倒だ……。


 あの後、彼女は浮気でない証拠にお姫様抱っこを要求してきた。恥ずかしすぎたので、ホテルのロビーから最上階までに限らせてもらったが、その間でも“あれやこれや”と我儘し放題だった。オンドレアの侍女コラリーがすぐに飛んできて、使用人総出で彼女の我儘を肩代わりしてくれたりしたが、結局最上階まで行くのに数時間かかった。彼女は最初“しらふ”だったのに、最上階に着くまでには“泥酔”していた程だ……。


 俺は“淑女たる者は”なんて年寄り連中みたいな事は言わない。しかし彼女は度を超えていた……。とは言え、大喜びで興奮する彼女をどうにも怒る気にもなれず、いい加減寝かしつけるのに(まるで子供の様な扱いだが)買っておいたお土産を使用人を使って城に取りに行かせた程だった。


 芸術の街フローツェで買った、硝子切子のゴブレット(※正確には江戸切子の様な硝子細工の事で、硝子切子と言うのはこの世界特有の言い回しです)。贅沢三昧の公爵令嬢に、これがお気に召すかどうか不安しかなかったが、彼女はまるでゴブリンの様に喜んで、遂にはそれを抱いて寝てしまうほどで安堵した。


 一応硝子細工なので危ないと思い、そっと傍に置いてあったクマのぬいぐるみとすげ替え、近くの机の上にそっと置いておいた。そして俺はまるで泥棒にでも入ったかのようにそっと寝室を後にし、無言で侍女のコラリーにバトンタッチした……。


 ──いつもああなのか? 侍女のコラリーは相当胆力のある優秀な侍女に違いない。


 そんな事を思いながら、さて今度は城に戻ってからも大変だ。エマ・リスモンの事だ。俺はだいぶと言うか、かなり周りに誤解させていたようだ。初めに言っておくが、俺は彼女の事が好きとかそう言う感情は、彼女には失礼かもしれないが、他の女性たちと同様に無い。いや、全く無いと言う訳でもないが……とにかくやましい事は何も無い。


 ──とにかく士官従者侍女全員を招集し弁明。誤解が解けるのに半日の時間を要した!


 ……どうして彼女がローラン国王陛下の娘かもと思ったかは、単純に小さい頃に会った面影に似ているからだった。とは言え、その頃の彼女はまだ赤ん坊で……しかし今は、国王陛下とお隠れ(おなくなり)になられた王妃殿下の遺伝的特徴が随所に見られたから、もしやと思ったのだ……。


 だがもしかしたら違うかもしれない。王の娘と思い込み、違ったらそれはそれで大問題だ。なので探りを入れる為に個人的に誘っていただけだったのだ。だが、それも軽率だった。もっと早くディンゴやナウススにこの事を打ち上げるべきだったか……。


「オンドレアの件は確かに……うん、そうしよう。彼女を目の届く場所に置くよ」


「ガハハ! 戦いの火の粉(キケン)が彼女に及ぶかもしれないが、一人にして城を焼き落とされる(もんだいをおこされる)よりかはマシだろうな! ガハハ!」


「へぇ、やれやれじゃのう……。ネイ公爵が絡むと面倒事ばかりじゃわい……。因みにエマの事じゃが、魔術的なアプローチで身元を探ったのじゃが、強力な呪詛でロックがかかっておったわい……」


「なるほど。もう少し探りを入れる必要がありそうだな」


『想一郎様。ソフィア大佐がお見えです』


「通せ──」


 ──バーン!


 ソフィア大佐は埃っぽい軍服をそのままにビシッと敬礼を済ませると、ズカズカ入ってくるなり勝手にナウススのコーヒーを受け皿に入れ直し一気に飲み干した!


(※紅茶やコーヒーの受け皿には昔、移して飲む習慣があったって知ってましたか? 冷ます意味もあったようです)


「おおい! ソフィア! 行儀が悪いのじゃ!」

「ガハハ! ソフィア! いいぞいいぞ! 許す!」

「のじゃっ!?」


「ディンゴ准将、ナウスス様、想一郎様……報告します……」


 だが、ソフィアの様子が少しおかしい。彼女はその辺にあった椅子にドカッと座ると、難しい顔をして葉巻に火を付け一呼吸置くと、少しためらう様に言った。


「先行攻略組と我が隊が最深部へ到達しました。──しかし、しくじりました!」


「「「──なに!」」」


「そこでカンガルーヘッドに替わる大ボスが登場……で、尻尾巻いて逃げてきたわけですが、近いうちに必ずリベンジしたい次第……。指揮をお願いします!」


 俺達は顔を見合わせた。

 ヘンタイヌ男爵はルーデリオンによって足止めされていた。命からがら洞窟に入れば、入口と出口を爆撃され閉じ込められたりもした。穴掘り好きのドワーフにそれは無意味であったが、暫くしてこれはもうだめだとドワーフ達はヘンタイヌ男爵を置いて遂に帰ってしまった。


 すると、ルーデリオンの攻撃はパタリと止んだ……!


 どうやらルーデリオンはドワーフにしか興味がないらしい……!


 何だと難なく突破して、当初の予定の北西へ向かうヘンタイヌ男爵。するとそこは見渡す限りの大密林だった。ヘンタイヌ男爵は密林へ入る。そして少しすると事態は悪化する。なんと光学迷彩で武装したウッドエルフに包囲されてしまったのだ! だがヘンタイヌ男爵は、過激派環境保護主義のウッドエルフ対策として魔法の言葉をエリザベス大佐により教わっていたのだった!


「──グレタ!」


 ウッドエルフ達はヘンタイヌ男爵を歓迎してくれた!

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