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ダンジョン辺境伯爵と公爵令嬢  作者: もやい
第二章
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第八話下 倒壊

【仇であるサングイア・フォン・ミューヘ女公爵を追うルーカス】


 我が領土を奪ったサングイア。鳥達が鼻歌奏でる美しき花々の大地を、ホラー映画にしたサングイア! 俺は右手の暴走を抑えながら、左目の力を使って彼女を追跡していた。


 想像してほしい。


 ルンルン気分でネズミのミュージカルアニメっぽいDVD見ようとしたら、中身がテキサスでチェーンソー振り回す怪人だった時の衝撃を! 俺の幼少期はまさにそんな感じだった!


 妹のミラはやたらと平静を装っていたが、内心怖かったはずだ。俺は全く怖くなかったから、ミラをなだめながら領土を脱出したものだ。


 平民となってジェンヌで魔法グッズ店を営んでいた親戚の叔父さん。俺達は苦しい逃亡生活を乗り越え彼の所に厄介になった。


 だが店内は禍々しかった。俺は“そういった物から逃げて来たのに”と思ったものだ。いや、別に怖かったわけではないが。そして叔父さんは俺の“師匠”となったのだった! 師匠は名うてのウィッチハンターだったのだ!


 師匠は厳しかった。右手の暴走の食い止め方。一般人に危害を与えかねない特殊な左目の制御の仕方。俺は何年も修行に明け暮れ、そして多くの事を学んだのだった……。


 我がシュワルツファウ家は“黒き息吹”、生粋の化け物ハンター。俺はそれも相まって、そして遂に伝説のヴァンパイアハンターとなったのである!


 そして今再び!


 俺は第二の故郷ジェンヌへ! 奴の臭いを追跡してやって来たッ! 俺は潰れたはずの公衆浴場の重々しい扉を完全武装して蹴破ったのである!


 ──ドガーン!


「──臭う! 臭うぞッ! 俺の鼻の奥がツーンとするぞッ!」


『『『──え!?』』』


 禍々しい密会を繰り広げる水着と仮面の秘密結社! 奴らは途端に自分の悪しき体臭を気にしだし言った!


『『『──いや今風呂入ってるし!』』』


「──その臭いじゃなーいッ!」


(あ! プフフ!)

(おや? 何故彼がここにいる。謎である)

(あらあらぁ~?)


「さぁ観念するんだ! サングイア! 正体を現せ!」


 ………………。(ぶえっくしょん)


「フッ……いいだろう。あくまで白を切ると言うのならば、こちらからサーチしてやる!」


『チッ……! いい加減くどい中二病患者だ事……!』


「──その声はッ!?」


「アーハッハッハ! センアハトゥ・エミグレーベン! ──再び(リ・ドゥ)!」


 ──ドロン!


「正体を現したな! 禍々しい醜き悪魔! まだ生きていたのか! ダークエルフを辞めたネクロマンサーにしてヴァンパイアの眷属!」


 ──チッ! サングイアじゃなかったかッ!


(((──ッ!)))


(プフフ。やっぱり!)


 俺は左手に持っていた特注銀製マスケット短銃をぶっ放した! それに合わせてセンアハトゥは魔法で俺を攻撃してきた! 俺は咄嗟に横に飛んで近くの柱へ隠れた! そして巨大な湯船の栓を抜いたかのように、公衆浴場は混沌の渦に包まれた!


『『『──キャー!!』』』


 一斉に逃げ出す密会者達! だがお構いなし!


 ──どっかんどっかん!


 俺とセンアハトゥの攻防すさまじく、遂に公衆浴場の天井が崩壊する程に至った!


「あら……あらあらぁ……?」

「なるほど、はえ縄漁か……どうやら銀鱈(ギンダラ)が釣れた様で、謎である」


「──そしてその銀鱈を捕食しに、どうやらクジラも現れた様ね! プフフ!」


「「「──エリザベス!」」」


(いや、私は知っていたのだがついノリで一緒に驚いてみた……謎である)


「あらぁ。でもこれじゃもう仮面無用ですわね……」

「はぁ……やっとこの茶番劇も終わりか……ホッと謎である」


 ──なに!?


 エリザベスに、オンドレア、ロスタエルまで居るではないか! フッ! なるほど……俺もまんまとしてやられたと言うわけか! クソ! やるじゃないかッ!


「プフフ。オンドレアお嬢様ー! ヴァンパイアの眷属釣るなんて中々ですねー!」


「──え?」


 オンドレアは目が点になっている。


「「「え……?」」」


(……まさか普通にファンクラブだったりした? ……プフフ!)


「アーハッハッハ! そんなのもうどうでも良いわ! どっちにせよ私の目的通りファンクラブをぶっ潰してやりましたわぁ~! アーハッハッハ! 前回はアリスとか言う小娘にボコボコにされちゃったけど、どうやら今回は居ないんじゃなくて? なら余裕ですわぁ~! アーッハッハッハ!」


 ──ドゴーン!


「ギャァァァァァァァ──ッ!」


「「「──ッッ!?」」」


 すると突然の落雷! それはセンアハトゥへ直撃したッ! そして現れたのは!?


「──あ! お姉ちゃんたちっ! 心配になったから(ゴロゴロ)でワープしてきたっ!」


「「「──アリスちゃん……!? お、おおう……しかし下、下」」」


「……えっ?」


 黒焦げになったセンアハトゥは、アリスの踏み台になっていた。


「──あっ!」


 こいつは終わりか……。だが妙だ。一人だけ逃げ出さずにいる女が一人いる……!


 ──フッ! この臭いは間違いない!


『──はぁ……ほんとセンアハトゥはいつも余計な事ばかり……中々居心地の良い場所だったのに……』


 そして俺はこの女に剣を突き付け呟いた!


「──そこに居たか! サングイア・フォン・ミューヘ女公爵ッ!」


「「「────えッ!?」」」


「自己紹介をわざわざどうも。せっかくここまで組織でかくなったのに……ホントつまらない」


「アリスッ! こいつを倒すぞッ!」

「え? あ、うんっ!」


 しかしサングイアは余裕を見せる!


「あなたがオンドレアね? 想一郎様の婚約者の……」

「だ、だからなによっ! 想一郎様に近づく者は誰であれ許しませんわ!」

「あぁ~……そういう事だったのね……ふふふっ」


 コイツ! 何故笑う!?


「何がおかしい!? サングイアッ!」


「ふぅ……あとその子、アリスって言うの? なるほど……貴方()()ね?」

「──あっ!」


(プフフ! 速攻でバレた! さすがヴァンパイア)

(やはりそうであったか……謎は解けた!)

(フッ! 俺の左目に見抜けないものはない!)


 ──マジか~ッ!!


「──当然ですわ! 何言っているのかしら? だって、想一郎様の妹なのよ!? 一々口に出すことでもありませんわぁ~! オーホッホッホ!」


「ふふ~ん……なるほっど……。まぁ……でも今回は退散させてもらうわね」


「──なに!? 逃げる気かッ!」


「そのアホも責任もって連れて帰るわ。じゃ、暫く後にまた会いましょう! ……ふふふっあはは!」


「まて──ッ!」


 ──サングイアは不敵な笑みをこぼすと霧となって消えてしまった!


「くそぅ! やっとここまで来たというのにッ!」


「ん~でも『暫く後にまた会いましょう』って言ってたなープフフ」

「ふ~ん、やれやれ。また謎が増えてしまったのである」

「ん~エリザベスさん。あの人強いかな?」

「アリスちゃん、ん~どうだろうね~プフフ……」


「ギリギリギリッ! 想一郎様に仇名すビッチがまた増えましたわっ! 叩き潰すっ!」



『『『うわ~ん! うわ~ん! 私たちのファンクラブがぁ~!』』』

 昔々、ウッドエルフは環境保護の為、厳しい掟を作り自由を奪った。それに嫌気がさしたハイエルフは、野に出て法律を作ると結局自由を奪った。


 またまたそれに嫌気がさしたダークエルフは、遂に自由主義となった。しかし皮肉にも、自由を奪う自由を行使して結局自由を奪ったのである。


 ──奴隷制の開始である。

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