第一話Bの1 ネイ公爵令嬢オンドレア
「フッフフ~ン! フッフフ~ン!」
レディッシュの色が、有機的な曲線美を魅せる若干雨に弱い自慢の美しい髪!
厳選に厳選されたトリートメントが、バラの芳香で周囲を魅了するサラッサラヘアー!
「フフ~ン」
──完璧だわ!
流石に、好きでもないロリコンが爆死した時は、可愛そうな境遇の“自分自身”に涙したけども、今となっては好都合ね! やった! 喪に服し、未亡人として退屈な日々を数年……。今では最新式超高級馬車に揺られ、下々の景色を楽しむ私。
そんな私は、ファンセイヌ王国建国から続く、由緒正しい歴史ある国王直参にして、王国大元帥であられるお父様、アンドレ・ド・ネイ公爵の麗しき次女で、誰もが羨む聡明にして天才、唯一無二の絶世の美女! そうそれが私、オンドレアお嬢様よ!
──バーン!
「オ~ホッホッホ!」
それにしてもさっきから下々の者は、先端に平たい何かをつけた長い棒を、地面に突き刺して何をしているのかしら?
(※畑を耕しています)
修道僧なのかしら? 馬鹿みたい!
(※いや、畑を耕しています)。
「お嬢様。ご機嫌ですね?」
ただの茶髪の二十台後半。結婚を焦る時期に差し掛かった侍女コラリーがそう言う。
「当然よ! だって、あのお方、そう、黒くて愛くるしい程に微妙なくせっ毛の想一郎様にまた会えるのですもの!」
そう。彼は私の初恋の人。紆余曲折はあったけれども、ついにやっと……!
「し、しかしダンジョン辺境伯爵領は相当に危険地帯と聞きます……」
「気にしすぎよ! コラリー。何とかなるわ! それに、お父様と、ロザリーお姉さまの選りすぐりの精鋭騎士達もいるじゃない!」
「さ、左様にございますね……」
侍女のコラリーは何をビビッているのかしら? すると、騎士達の隊長を勤めるイケメン、紫髪のアベルは窓越しに言う。
「何も問題はございません! コラリー様、オンドレアお嬢様! どうやら聞いた所、この先でゴブリン共が暴れていると聞きましたが、な~に、たかだかゴブリンにございます!」
「そう! たかだかゴブリンよ! 何てこと無いわ!」
「し、しかし……」
「ええ! まったく心配には及びません! その醜悪な姿を見せたが最後! 私めが一蹴りしてご覧に入れましょう!」
アベルはそう言うと、侍女のコラリーにウィンクして見せた。
「ま……!」
コラリーは赤くなって呆れてみせる。
「え!? 何々!? 二人とも出来てるの? まぁ~なんて素敵なのかしら!」
「お、お嬢様! お戯れを! そ、そんなんじゃございません!」
「ハ~ハッハッハ!」
アベルは風で棚引く紫髪を掻き分け、高々と笑い、やたらホワイトニングした歯が輝く。すると、下々共が何度人生を重ねようが手に入らない程高い超高級馬車が急に止まる。
突然の事にアベルは叫ぶ。
「ん? おい! 何故、超高級にして、最新モデルの高級車のような乗り心地の馬車を止める! 一体何事か!?」
『そ、それが……アベル様……』
御者は戸惑い、するとアベル。
「ゴブリンか!? ええい護衛騎士隊長であるこのアベルめが、直々に叩き切ってくれる!」
──シャッキーン!
アベルはカッコつけて勢い良く剣を抜き放つ!
『──あ! いえ! ち、違います! それが……そ、空に少女が……!』
「え?」
御者は空を指差す。その先には輝く光を纏って宙をゆっくり下りてくる少女の姿が!
「お、おお!? こ、これは一体!?」
「何々!? 何なの!?」
私は、下々に施す小銭の10億倍もする超高級馬車のドアを惜しげもなく蹴り破る。
「オンドリャ!」
オンドレアだけに。
──バゴーン!
「お、お嬢様っ!」
(さぶいです!)
驚く侍女は放っといて、私は馬車を飛び降り、空を眺める。
するとそこには……。
「さぁ愛する殿方の所へ参りますわぁ~!」
「しかし……何故爆死したのでしょうか?」
「特に理由なんてありませんわぁ~! オ~ホッホッホ!」
「えぇ~!?」
(爆死した夫、おいたわしや……)




