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ダンジョン辺境伯爵と公爵令嬢  作者: もやい
第一章
37/97

第三話Cの3 激闘!

【がり勉オタクのロスタエル・ルインシル・ヘレドール】


 くっ……。私とした事が……。柄にもない。田舎エルフにウィンクしてしまうとは……。


 ──しかも二度も!


 私の耳が熱くなるのを感じる。は、恥ずかしい……! これが“吊り橋効果”か……! クッ……! しかし、そんなことを言っている場合ではない! 隠し階段を守るボスはランダム。そして一番最悪なボスに当たってしまった……!


 カンガルーヘッド……。


 こいつは現在の先行攻略組が束になっても苦戦する程の強者! 聞いた話によれば、特にエミュー要素がそれをそうさせているらしい! 何故ならばエミューは伝説の鳥で、一国の軍でさえも勝てなかった怪鳥とあるからだ!

(※オーストラリア、エミュー戦争を参照)


 しかも苦心して倒せたところでドロップアイテムはゴミという糞マズイボス!


 ──しかしアリスの顔は、初撃を受けてもなお清々しかった……!


 カンガルーヘッドは背筋を伸ばして胸筋を誇示する! しかし臆さずアリスは駆け出す! 彼女は速い! これが彼女の本気か! 彼女の移動は目で追うことができない! 私は魔力を集中させ感覚でそれを追う事にした……!


 カンガルーヘッドはエミューの足を使ってトリッキーな動きで標的を定まらせない。だがしかし、アリスは物ともせず鼻先へ瞬間移動すると彼女の盾はカンガルーヘッドの横面を捉えた!


──ポコーン!


 しかし音が軽い……!


 素人目にはわからないかもしれない。カンガルーヘッドは殴られたと同時に、衝撃を受け流すように頭をあえて振っていたのだ!


 道中エリザベスとオンドレアから聞いていた事が本当ならば、ゴブリンを1キロメートルも吹っ飛ばすほどの盾パンチ……! だがそれでさえも、ダメージはこれで大きく軽減される!


 これはボクシングのテクニックだ!


 なるほど、カンガルーもまた伝説の幻獣で、前蹴りという反則技を使うボクシングの使い手だと聞いたことがある!


 そしてカンガルーヘッドはトゥーハンディッドブーメランを駆使し、その巨体にも関わらず、目にも止まらぬ速さで反撃を試みる! アリスはすぐさま、迫るトゥーハンディッドブーメランの入射角に対して盾を斜めに構え、それを受け流す!


 ──でさえも凄まじく飛び散る火花!


 アリスは地面へ激しく叩きつけられた!


 舞い上がる粉塵、一瞬の静寂……! しかし次には、アリスはもうそこに居なかった! アリスはカンガルーヘッドの後頭部へ移動していたのだ! 彼女は盾を大きく振りかぶる! しかし彼女は、


「──あっ!」


 何かに驚き動きが一瞬止まってしまう!


 すると、なんとカンガルーヘッド、“オーバーヘッドキック”でアリスをステンドグラスの方へ蹴り飛ばした!


──ドゴーンッッ!


──バリーンッッ!


『──ゴォォォォォールゥッッッ!!』


 カンガルーヘッドは意味の分からない叫び声を上げた!


 飛散するステンドグラス! 色とりどりに輝く破片! それは美しく飛散し、この状況へさせた原因を私は見逃さなかった!


 魔力を使って、リプレイで見れば、なんとカンガルーヘッドの尻尾は、あるのかないのかわからないコアラの尻尾だったのだ!


 ──いや違う!


 伝説の幻獣コアラに尻尾はないはず! あるのは“ケツ毛”だと、アルフヘイム大図書館の写真付き文献で見た事がある!


 ──そう、カンガルーヘッドにないと思われていたコアラ要素は、実はあったのだ!


 “壁”に大の字でめり込むアリスは驚きで“あっ”としている。お蔭で、地下なのに、ステンドグラスからさしていた光の謎は、L(ライト)E(エンチャント)D(だってばぁ~)だと分かった。


 アリスは壁から出てきて言う。


「──今のはちょっと驚いた……!」


『──オウン・ゴォォォォォールゥッッッ!!』


 何かに憤慨するカンガルーヘッドは、アリスへ向かって音速の右ストレート!


 ──ズドゴーンッッ!


 凄まじい怪力! めり込む拳! 大聖堂らしきにほとばしるひび割れ!


 ──だがしかし、アリスはカンガルーヘッドの腕の上に立っていた!


『──ッ!?』


 驚くカンガルーヘッド!


 その隙を突きアリスはカンガルーヘッドの鼻っ面へ、盾逆水平チョップの構え! カンガルーヘッドは思わず受け流しで顔を振ると、アリスのそれはフェイントで、盾ラリアットへと移行した!


 ──ガチーンッッ!


 そしてアリスは力任せに、カンガルーヘッドの後頭部を床へ叩きつけたのだ!


 ──ズドゴーンッッ!!


 強烈な縦揺れ! 壁、柱、天井はもうガタガタだ! 私とエリザベスと、そしてオンドレアに至っては腕を組んだまま、縦揺れによって強制的にジャンプさせられた!


 ──ポ~ン!


「「「あらぁ~……?」」」


 しかしカンガルーヘッドはタフだ! 仰向けからすぐにうつ伏せになって立ち上がろうとする。が、しかし逃さずアリスは盾アッパーで、むしろカンガルーヘッドを強制的に立たせた!


 ──バチポーンッッ!


 そしてアリスは止まらず、奴の腹へ!


「──盾ボディー! がら空きっ!」


 ──ズドォォオオンッッ!


 突き抜ける衝撃! 激痛に叫ぶカンガルーヘッド!


『ぬぅおぁぁぁぁぁぁあああ!!』


 カンガルーヘッドは止まった……。アリスは余裕を持ってカンガルーヘッドの頭を持ち……、どうなっているのやら……、“垂直落下式DDT”をかました……!


 ──キュォォアアッ!


 加速する落下!


 ──チュ・ドォォォォォオオオンッッッ!!


 叩きつけられる頭頂部。吹き荒れる衝撃波……!

 大聖堂らしきはもう崩壊寸前だ……!


 ──ドッシーンッ!


 そしてカンガルーヘッドは、倒れた……!


 唖然とする私とエリザベス。


 ──パンパン!


「ふぅ……。つよかった……!」


 服の埃を払って呟くアリス……!


「「お、終わったのか……?」」


 冷や汗を垂らす私とエリザベス。


 ──あっという間だった……!


 そこで何を思ったのか、オンドレアは倒れたカンガルーヘッドの頭へ近づき、斧で角を、へし折った!


「──ふんっ!」


 ──バキッ!


 ──オンドレアは、カンガルーヘッドの角笛を手に入れた!


 ──ぷっぷかぷー!


「オ~ホッホッホ!」


「「──ッ!?」」


『ディンゴォォォォ────……』


 そしてカンガルーヘッドは無数の光の粒となって消えていった……。


 ──カンカンカンッ!


 私の頭の中で、試合終了のゴングが鳴り響いた……!


 1ラウンドK.O…………!


「まったくもう! たまには槍も使いなさいよ!」

「あ、そういえば槍持ってた……!」


((えぇぇ…………))


 因みに、カンガルーヘッドの角笛はただのパーティーグッズである。故にただのゴミである……。な~んの意味もない……。謎である。しかし、へし折った瞬間に角笛になるのは知らなかったが……それも謎である。


 ──ぷっぷかぷー!


「オ~ホッホッホ!」


 ──ぷっぷかぷー!


 カンガルーヘッドの角笛はパーティーグッズ。ゴミである。


「ちょっとお姉ちゃん! それ貸してっ!」

「あらぁ~? アリスちゃん。吹いてみたいのですわね?」


 ──ハァ~ッ……!


 ──ブォォォォォォォオオオオオ!!


『──ディンゴォォォォオオオ!!』


 ──アリスはカンガルーヘッドを召喚した。


「「「────ッッ!?」」」

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