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ダンジョン辺境伯爵と公爵令嬢  作者: もやい
第一章
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第二話Bの2 オンドレアの野望

「……ちょ、ちょっと! グスッ……それの何処がグットニュースなのよ! グスッ……」

(うわぁ~流石のお姉ちゃんも涙目……)


 コラリーが気遣って加勢する。


「そ、そうにございますエリザベス様! ウソにも程が! これは、あ、あまりにも、バッド(グッド)ニュースにございます……! さあ! オンドレアお嬢様? 家に帰りましょう!」

(は、はやく家に帰りたい!)


「いえー。それがですねぇ~。話を最後まで聞いてくれると、これがグッドニュースかもしれないのですよ~」


「グスッ……想一郎様が既に婚約しているという事の何処がグッドニュースなのよ~! ウワァ~ン!」


「それがですねー、実は……」

「え……? グスッ……」


 エリザベスは周囲を気にしだすと、急に声を落として皆の額を引き寄せ、今までとは打って変わってキリッとヒソヒソ話し始めた。


(私の信頼できる情報筋からすると、その婚約者、想一郎様にまったく相応しくない可能性が大でしてね? 本当の顔はまるで角の生えた悪魔の様だとか……)


(((ま、まぁ……!)))


(シッ! 静かにお願いします皆様方。──それで、それが、想一郎様の地位と財貨に、リスクはあっても莫大な財源となるダンジョンと、金融と貿易の自由都市ジェンヌを、大胆にも裏で根回しして乗っ取る腹積もりなのだとか……。正直、本心から言わせて貰いますと、私も周りもどうにかしてその悪魔めを婚約破棄へと追い込みたいのですよ……プフフ!)


 コラリーの顔が真っ青になる。しかし、私は見開く!


「あらぁ~! それはとてつもないグッドニュースですわね! 『小石にすっ転んだら、目の前に破壊すべき石橋がっ!』ですわ! 大義名分は私にあり! ならば、私直々に正義の鉄槌を下して差し上げますわよ! ──最も、私の得意武器は“鉄槌”ではなく“斧”、なのですわけどブヘッ!」


 ──バーン!


「オ~ホッホッホ!」


(あ! 今、お姉ちゃん噛まなかった?)

「お、お嬢様! しかしどうやって!」


 ん?


「──わからないですわ!」


「お嬢様!」

(プフフ……)

(分からないって、お姉ちゃん……)


「ちょっといいですかー? 皆さんー」


 するとエリザベスが再び全員の額を引き寄せ、またキリッとヒソヒソ話を始めた。


(シッ。シッ。あまり大きな声で言わないで下さいね! 皆さん)

(あ! そ、それもそうですわね……)


 今度のエリザベスはニヤッとキリッと話し出す。


(そして、ここで更に皆さんへ新たに情報投下するのですが、皆さんいいですか? まずその婚約者とは、ここ、ダンジョン辺境伯爵領と国境を接する東のアクティム帝国の公爵領を統治するアルベルト・フォン・ウィース公爵の妹で、名は“アデーレ”といいます。想一郎様はモンスター共との戦いでお暇がありませんから、帝国と仲良くする算段でのご婚約だったのですが、実はこれ、アルベルトの謀略だったりして……)


(アデーレ! とんだ阿婆擦(あばず)れビッチですわ! 叩き潰しますわよ!)

(シッ。声が大きいです!)

(ふふ~ん! それで?)


(それで……そのアデーレ。部類の冒険好きで、殆んどダンジョンに篭っているのだとか……)

(なるほど~。つまり、──やるなら、そこでやるのですわね?)

(お、お嬢様! まさか!)

(お姉ちゃん……?)


(うわ~お! 話が早くて助かりますー)


 ──決心しましたわ!


 私は馬車の上に立ち上がり斧を構えて宣言する!


「いいわ! やってやるわ! 私と想一郎様の(ラブ)を阻むものは、何であれ叩き潰しますわよ! そう! 私は愛の戦士(ラブウォーリアー)オンドレアなのよ! 如何なる手段を使ってでも、婚約を破壊して見せますぶへぁっ!」


 ──バーン!


「オ~ホッホッホ! ──アデーレ潰すっ!」


(あ、またお姉ちゃん噛んだ!)


 ──ブンブンブンッ!


「お、お嬢様! そんなに斧を振り回したら、あ、あぶのうございます!」

「ふっふ~ん! ──アデーレ潰すっ!」


 ──ブンブンッ!


(プフフ……ねぇねぇ、ところでアリスちゃん?)

(な~に? エリザベスさん)

(なんで斧なの?)

(わかんない……)


「アデーレつぶへぁっ!」

「あ、お嬢様噛みましたね?」

「アデーレつぶべぁっぶへぁっ!」

「噛み過ぎにございますね……」


 ──バーン!


「オ~ボホッブホッゲホゲホゲホッッケホッ……!」


「──あ! むせてたのか!」


(お姉ちゃんそこまでしてセリフを……)

(プフフ……)

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