第18話:王都への凱旋と、クロードの逆襲
ルキウス侯爵を無力化し、王国東部に平穏を取り戻した俺――エレノアとセドリックは、王都ローゼンバーグへと凱旋した。
アステリア家の馬車が王都の大通りを進むと、街の人々から温かい歓声が上がる。第二王子派の不正が完全に暴かれ、ローゼンバーグ家とアステリア騎士団が街を救ったというニュースが広まっていたからだ。かつて落ちこぼれと蔑まれていたエレノアを見る周囲の目は、畏敬の念に変わっていた。
「……随分と騒がしい凱旋だな。俺たちの世界じゃ、手打ちの席でここまで目立つのはごめんだが」
俺がワンピースの裾を持ち上げながらため息をつくと、御者台の横に立つセドリックは、灰色の瞳に柔らかな光を灯して微笑んだ。
「王国の東部を救った英雄だからね。君が胸を張って帰ってくるのは当然のことだよ」
俺たちはそのまま王城へと向かった。
王城の広間には、国王や貴族たちが勢ぞろいしており、クロード殿下も険しい表情で玉座の脇に立っていた。父親である国王の表情は厳しく、彼に冷たい視線を向けている。
俺とセドリックが広間に入ると、ざわめきが静まる。クロードは俺の姿を睨みつけ、最後の足掻きとばかりに声を荒げた。
「エレノア! 貴女がここまで我が派閥を貶めてくれたね……! だが、これで終わりだと思うなよ! 僕には王族としての血が流れているんだ!」
クロードは特権意識を丸出しにして、まだ自分が正しいと信じ込んでいる様子だ。かつて組の利権を奪われそうになったとき、同じように喚き散らした若い衆の顔が脳裏をよぎる。
俺はゆっくりと歩みを進め、広間の中央で立ち止まった。その細く白い指先で、床をコツンと鳴らす。
「……まだそんなこと言ってるのかい、クロード。あんたのやってることは、ただの『恐喝』と『ネズミの真似事』だ。上に立つ者は、下の者の血と涙を背負う覚悟がなきゃいけねぇ。それなのに、自分の立場だけを気にして責任を押し付けるなんて、ただのチンピラ以下だぜ」
俺のドスの利いた低音は、広間の天井にまで響き渡った。貴族たちは令嬢の口から出る言葉に顔を引き攣らせたが、国王は深く頷いている。
「クロード、もうよい。ルキウス侯爵の自白により、お前の不正はすべて明白だ。王位継承権の一時停止、および謹慎を命じる」
国王の冷徹な一言で、クロードの顔から血の気が引いた。彼は力なく膝をつき、そのまま言葉を失った。
俺はそんなクロードを見下ろし、フッと冷たい微笑みを浮かべた。
「看板を守るのがトップの役目だろうが。分かったら、その反省室で自分のケツの拭き方から勉強し直すんだな」
こうして、長きにわたる第二王子派との戦いは、俺たちの完全な勝利で幕を閉じたのだ。




