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あの果てしない空の下  作者: kai
第二章
12/14

12.この心地良い風の音

『お絵描きの話』


リルの部屋で画用紙に絵を描く仁理とリル。

リル「ヒトリ上手!すごい!」

仁理「絵の具粘土じゃあ精密な絵が描けんな。」

リ「リルのも見て!」

リルの画用紙には、仁理とリルの絵が描かれている。

そしてとてつもなく上手い。

仁「なんでこんな上手いの......?」

リ「ふふん!戦いにはかんさつとぶんせきが大事!!だからリルは絵も上手!!」

仁「そういうアプローチもあるのか。勉強になるなぁ。」

「おはよう!」

「おはようリル。」

卓につき朝食を食べるリル。

朝食はベーコンと卵である。

「そんなに急いだら危ないわよ。」

母の言葉も聞かず早々に食べ終えたリル。

「ごちそうさま!」

「今日はどこへ行くの?」

「学校!!」

「珍しいわね。」

「強くなるには賢くならないといけないの!」

「へぇそうなの。頑張って!」

「うん!いってきます!」


学校に到着したリル。

なお、“学校”に屋根は無く、乱雑な作りの机と椅子が並んだ無造作な造りになっている。

「おはざます!」

「おはようリル。」

「おはよ!シンタ!」

机の上に荷物を広げるリル。

「今日は何するの?」

「うーん......わかんない!!」

「そっかぁ。」

その時、リルとシンタの前にある人物が現れた。

「おやおや、2人は仲が良いんですね。」

その人物は、全身黒の装備と、同じく黒のフルフェイスメットに身を包んだ男。

「リヴェイン先生!おはざます!」

「はい、おはようございます。シンタくんも、おはようございます。」

「お、おはようございます......」

「それは?」

リルはリヴェインが持っているガラス玉を指さす。

「これは“スノードーム”というものです。」

「スノードーム?」

「ええ。こういう風に振ると、」

リヴェインがスノードームを振る。すると、中の砂やテープの切れ端が浮かぶ。

「中で雪が降っているような動きをするんですよ。」

「なにがおもしろいの?」

「ハハハ。面白さはありませんね。」

「じゃあ、なにに使うの?」

「例えば、故郷の景色を模倣して作ったり、雪が見られない地域の人が雪に憧れを持ちながら見たりするのですよ。」

「へえ。」

「それ、欲しい......」

と、シンタが言う。

「ええ。あげますよ。元々そのつもりでした。」

「ありがとう、先生。」

「リルもなんか欲しい!」

「では、リルさんにはこちらを。」

リヴェインは、ポケットから小さな箱を取り出す。

「これは?」

「“クレヨン”という物です。こちらの世界では“絵の具粘土”と言うそうですね。」

「えのぐねんど!!」

「お絵描きは好きですか?」

「うん!好き!」

「そうですか。それは良かった。」

「でも、おえかきばっかりしてたら、強くなれないって......」

「そんなことはありませんよ。絵を描くということは、相手を観察し分析して理解するということですから。」

「ほんと?」

「本当です。会長が常々言っていました、『戦うことは、相手を知ることだ』と。」

「知ること......」

絵の具粘土を箱から出してみるリル。

「では、今日はお絵描きの練習をしてみましょうか。」

「うん!」



「リル。ちょっとお使い頼めるかしら。」

「いいよ!なに買う?」

「今晩の食材。覚え書きを渡しておくから、ちゃんと見るのよ。」

「んー......?わかた!」

「......大丈夫かしら?」


案の定、文字が上手く読めないリルは、八百屋の前で立ち往生していた。

「リルちゃん、大丈夫かい?」

「だ、だいじょぶ......」

すると、

「おや、リルさんですか。」

「リヴェイン先生......」

「お使いですか。良いですね。」

覚え書きを覗き込むリヴェイン。

「今晩は肉じゃがですか。」

「肉じゃが......肉じゃが!えっと......肉と......」

「じゃがいも、ニンジン、タマネギですね。」

「そう!それください!」

「はいよ。」

「リルさんはもう少し、読み書きの練習をした方が良いですね。」

「ちゃんと読めるもん!だいじょぶだもん!」

「ハハハ。ゆっくり、頑張りましょう。」



「うわっ!」

近所の悪ガキ軍団と戦闘訓練に励むリル。

「やっぱリルは強いなぁ。」

「ふふん!リルが最強!いちばん強い!!」

リルが岩を殴って砕いてみせる。

「スゲェ!」

「リル最強!リル最強!」

皆に褒められて得意げなリル。

そこへ、両親が迎えに来る。

「リル!帰るよー!」

「お父さん!お母さん!」

リルは皆に手を振って、2人の元へ駆け寄る。

「あのね!今日ね!いちばん大きい岩をこわしたんだよ!」

「凄いじゃない!」

「さすがリルだな!」



ある日。

森の中で狩りをしていたリルは、ある看板を見付けた。

「んー?」

看板の文字に目を凝らすリル。

「このさき......この......た、ち?まいっか!」

リルには難しくて読めなかったようだ。

“この先、立ち入るべからず”という看板の忠告を無視して先に進むリル。

辿り着いたのは開けた場所。

そこには、石造りの建物が一つ。

リルの魔力感知器が警鐘を鳴らしていた。

「なに......?」

しかし、リルは好奇心に抗えず、迷わず石造りの建物に入っていく。

建物の中は入り組んでおらず、真っ直ぐの通路と突き当たりに部屋があるだけの簡素な造りであった。

扉が無いため中で動く人影が見える。

壁から中を覗くと、そこにはリヴェインをはじめ、同じような服装をした人が数人。そして、見覚えのある子供達が居る。

そして、壁沿いのベッドにシンタが寝転んでいる。顔が赤く、苦しそうだ。

「シンタくん。これで大丈夫になります。」

リヴェインが注射器を持ち出しシンタに向けた。

「待て!!」

飛び出すリル。

「おや、リルさんですか。」

「シンタにひどいことしようとしてる!!」

「そんなことはありませんよ。これは」

「うるさい!!」

爪で攻撃するリル。

しかし、リヴェインの装備に弾かれる。

「これは困りましたね。」

数度の攻防。リルは必死に喰らいつくが、リヴェインに片手で対処されてしまう。

装備の硬さに攻めあぐねていると、リルは他の人員に取り押さえられた。

「離せ!!」

「リルさん。これはただの風邪薬ですよ。」

「注射だめ!痛いの!!」

「大丈夫です。痛くない打ち方がありますから。」

「先生......まだ......?」

苦しそうなシンタに反応しリルが絶叫する。


瞬間、リルの意識が飛んだ。


その後、リルが目を覚ますと、周囲には複数の死体が転がっていた。

「......え?」

八つ裂きになった子供の死体、ボロボロになった黒いヘルメット、そして、

「リ......ル.........」

「シンタ......?」

シンタにはまだ意識があった。

「シンタ!なんで......?!」

「リル......なんで......」

腹を貫通されたシンタは苦しそうに息を吸う。

「みんなを......殺したの......?」

「ちがっ......ちがう!リルは......リルは......!!」

思わず外へ飛び出すリル。

何が起きたのかはわからない。しかし、とにかく村へ行って大人を呼ばなければシンタはこのまま死んでしまう。そう思い、必死で走る。

しかし途中で、足がもつれて転んでしまった。

「うぅ、うああああ!!」

顔をぐしゃぐしゃにしながら立ち上がろうとするリル。しかし直後、頭痛が小さな頭を襲う。

「うっ、ぐぅ......!!」

脳内に聞き取れない声が響く。

半狂乱になりながら走る。

その後、やっとの思いで村へ辿り着いたリル。

しかし、リルを待ち受けていたのは、嵐のごとく村を呑み込まんとする炎の渦だった。

「え......?」

火だるまになった獣人が手を伸ばす。

「リル......!」

「お父さん!!」

「来るな......!!」

直後、リルの腹を赤い槍が貫通する。

「ぐぅ......!!うぅ......!!」

必死で抵抗するが身動きが取れない。

「愚かな。」

リルの前に立ったのは、赤髪赤目の吸血鬼の男。

「お前......!おまえ......!!」

「成程、器に選ばれたか。」

リルの意識が朦朧とし始める。

「お、まえ......!!」



記憶は此処で終わっている。

「まぁ、悲しい過去の一つや二つはあるよなぁ。」

ポップコーンを頬張りながら仁理は言う。

「悪魔の器、か。本来なら治す義理は無いんだが。」

仁理が立ち上がると、映画館が消え、真っ白な空間に大きな魔法陣が出現する。

「リヴェインがまだ此方に居るなら合流したい。それに、最後の吸血鬼は俺が王都で交戦した野郎だな。対処へ近付くためには、リルに情報提供をしてもらうのが吉か。」

魔法陣の中央に、2本の角を持つ人外の女、ボティスが出現する。

「......ま、ただ情が沸いてるというのが本音なんだがな。」

ボティスは動き出さない。おそらく、魂が此処に無いのだろう。

「マーキング、といった所かな。これのせいで器なのか、それとも器だからマーキングされたのかはわからんが、一旦は消せば解決するか。」

仁理が指を鳴らすと、魔法陣は崩壊した。

「さて、エンドロールだ。」



「んぅ......」

リルが目を開くと、満天の星空が目に入る。

そして次に、仁理の顔が見える。

「ヒトリ......?」

「おはよう、リル。」

眠そうに目をこするリル。

「ここは......?」

「んー......俺の心の中、ってとこかな。」

「んー......」

リルが伸びをする。

「ヒトリ。」

「ん?」

「悪魔......どうなった?」

「弾き出した。」

「やっつけた?」

「うん。やっつけた。」

リルはいひひ、と微笑む。

「ありがと、ヒトリ。」

仁理がリルの頭を撫でる。

「ねぇ、ヒトリ。」

「んー?」

「リルね、ヒトリのことが好き。」

「......そうか。」

「それでね、リルのぜんぶ、ヒトリにあげるの。」

「......やめとけ。」

「なんで?」

「何でも。」

「......やだ。」

風が頬を撫でる。

仁理は、空を見上げた。

「......リル。」

「なぁに?」

「獣人の寿命がどのくらいか知ってるか。」

「知らない。」

「150年。対して、人間の寿命は80年程度。その差はおよそ70年になる。」

「むずかしい。わかんない。」

「わかってくれ。俺が今20歳で、お前は今15歳。最低でも75年、俺が死んだ後にお前は生きるんだぞ。」

リルは、黙って仁理の次の言葉を待つ。

「俺の身体はかなり無理をしている。本来の限界を超えて魔力を使ったからな。生きられる時間はもっと短い。」

「わかんない。」

食い気味に言うリル。

仁理は、大きく深呼吸をした。

「......わかってくれよ。」

仁理がリルの頭を撫でる。

「死んだらそこでもう会えなくなるんだぞ。先に死ぬ俺は良いが、リルは寂しいだろ。」

「......リルはね、ヒトリが好き。」

仁理の手を握り、頬に寄せる。

「ヒトリはね、強くて、優しくて、賢くて、いつもリルと遊んでくれるの。いっぱいのことを教えてくれて、いっしょにごはんも食べて、おひるねもして。」

仁理の頬を涙が伝う。

「リルね、幸せだよ。」

リルの掌が、優しく仁理の頬を包む。

「だからね、リルのぜーんぶ、ヒトリにあげるの。」


「ヒトリが、ひとりぼっちにならないように。」


#23『リル』



目が覚めると、知らない天井が目に入る。

そして、仁理の手を、サフィアが握っていた。

「ヒトリ。」

ゆっくり、重い頭を傾けて視線を向ける。

「なんで、泣いてるの?」

優しい声音でサフィアが訊く。

「......夢を見ました。」

「......どんな夢?」

仁理は涙を拭う。

「......寂しい夢です。」


リルが目を覚ましたのは、その直後だった。

「リル。」

「ヒトリ!」

ベッドから飛び起きて仁理に抱きつくリル。

仁理も、その温かさを確かめるように、リルを抱き返した。

「ヒトリ、だいじょぶ?」

「......大丈夫。大丈夫だよ。」

鼻をすすりながらリルの頭を撫でる。

「......ごめん。ありがとう。」

リルを離し、肩を掴む。

「みんな一緒だ。寂しくない。」

「うん!」



被害は大きかった。

ネギアに改造された人々、戦闘で破壊された広場周辺や近くの平原。そして、砂時計。

「......やっぱ、どうしようもないか。」

肩を落とすハインツ。ベスタは首肯する。

「ええ。本来、契約印で成立していた物のようですから。」

「まぁ、世界に直接干渉するなんて、悪魔の力でも無いと無理だよなぁ。」

「悪魔って、そんなに凄いの?」

サフィアが首を傾げる。

「と言うより、悪魔が使う契約の力が凄いのです。対価さえ払えるならどこまでも無理が通りますから。」

「......祝福より凄い?」

「どうでしょうか。少なくとも、ヒトリ君が居るなら大丈夫かと思われますが。」

「......でも、ヒトリは負けた。」

「......ええ。」

俯くサフィア。

「その、ノワールってヤツが何者なのかにもよるんじゃないか?」

「ノワールさん......悪い人じゃなさそうだったけど......」

「同感です。というより、この件を解決したのが彼なので、信じざるを得ませんねぇ。」

そこで、仁理が入室する。

「ヒトリ。もう大丈夫なの?」

「はい。元より、大した怪我もしていませんし。......魔力の使い過ぎで身体はガタガタですが。」

「ヒトリ君はどういった要件で?」

「ベスタさんに話があります。」

モノクルの奥の瞳が、僅かに光った。


高台に移動した2人。

「それで、話というのは?」

「少し釘を刺しておこうかなと。」

「ほう?」

2度、手を叩く仁理。すると、アンノウンとリヴェインが現れてベスタに影を突き付ける。

「......どういうつもりで?」

「おぉ、ちゃんと出て来るんだ。」

「ええ!勿論ですとも!!私は敬虔で信心深き愛の信徒ですから!!」

「有巣会長の動きは把握していましたから。」

ドン引きする仁理。

「......一旦引け。」

仁理の指示で2人が影を収める。

そして、ベスタは蝶ネクタイを直す。

「それで、要求は?」

「要求は一つ。俺がノワールであると何人(なんぴと)にも明かさないこと。」

「そんなことですか。構いませんよ。」

「それと、もう一つ。」

腕を広げる仁理。

「新しく組織を作る。そこに、お前を勧誘したい。」

「組織?」

「名前は“三星会”。当面の目標は『崇理教と吸血鬼連合の打倒』。」

「それなら、騎士団で良いのでは?」

「良くねぇよ。でけぇ組織ぶっ潰して裏社会を手に入れるのが目的なんだからな。」

ベスタの口角が上がる。

「ほう、面白い。」

「正直、騎士団じゃトロい。全てを表沙汰にする以上、黒いことが出来ないからな。」

アンノウンとリヴェインを指さす仁理。

「しかし、こいつらは優秀だ。倫理観や立ち居振る舞いは終わっているがな。」

「お褒めのお言葉!!身に余る光栄!!!」

「......まぁ、そうですねぇ。」

ベスタに手を伸ばす仁理。

「やべぇ味方にやべぇ目標、そしてやべぇ代表。どうだ、面白いだろ?」

「ええ。無論です。」

迷わず、ベスタは仁理の手を取った。

「“契約成立(ディール)”だ。」



#24『進むべき道』


決着から3日後。

「ね、ねぇ、ヒトリ?大丈夫?」

仁理は、宿のベッドから起き上がれずにいた。

「ま、まだ、大丈夫じゃないかもです......」

「あーあ、無茶するから。」

呆れ顔のハインツ。ユフィもやれやれといった様子。

「この調子で鳥車なんて、大丈夫なのかしら。」

「あ、アンシーさん......おぶって......」

「あいよ!お姉さんに任せなさい!」

「あ、あう......優しくしてぇ......」


鳥車にて、仁理はサフィアの膝枕でぐったりしていた。

「起き上がった直後に無理して外出するんじゃなかったぜぇ......」

「もう。ヒトリはいっつも無理するんだから。」

「今回のは毛色が違うような......」

「こうなりゃ、一旦身体ぶっ壊して治癒魔法で......」

「ダメよ!絶対ダメ!!」

「ヒトリ様、遂に治癒魔法が使えるように......?」

「ええ。やっとですよ。」

「なんと!遂に努力が実を結んだのですね......!」

「久しぶりにユフィの表情が変わってるわ......!」

「ヒトリすごい!!」

「あ、あんま揺らさないでぇ......」



数日後。

「知ってる天井だ......」

「おはよ!ヒトリ!」

リルが仁理の上に居る。

「おはよ〜......」

大きな欠伸をして起き上がる仁理。

「さて、リル。今日は少し面白いことをしよう。」

「おもしろいこと?」

「ああ。秘密のシークレット会議だ。朝食が終わったら出掛ける用意をしてくれ。」

「わかた!」



森の中を歩いている仁理とリル。

すると、かなり立派な、木で出来た小屋を見付けた。

「これは?」

「入ればわかる。」

迷わず戸を開ける仁理。

「おお!これはこれは会長殿!随分とお早い到着で!!」

これはわざとらしいベスタ。

「朝早くから仁理様の御姿を拝見出来るとは!!恐悦至極!光栄極まりない!!!」

と、騒がしいアンノウン。

そして、

「リヴェイン先生!!」

「おや、リルさん。お久しぶりですね。」

「なんで!?なんでいるの?!」

「身体を復元しましたから。御覧の通り、無事ですよ。」

「感動の再会!素晴らしいね。」

仁理が拍手し、上座に座る。

「さ、卓に着こうか。」


「まぁ、最初は殆どごっこ遊びみたいな状態になるのは仕方ないね。」

「とんでもない!仁理様の素晴らしきお考えが“ごっこ遊び”だなんて!!」

「狂信盲信全て結構。しかし“仁理”という呼び方は避けろアンノウン。三星会会長は“ノワール”だ。」

「これはこれは。失礼しました、ノワール様。」

「うわぁ急に落ち着くな。」

「では、今後の方針を。」

「そうだったな。」

ベスタに促され仁理は居住まいを正す。

「さて、事前に共有した通り我々の当面の目標は2つ。崇理教の打倒と吸血鬼連合の打倒である訳だ。」

「リル聞いてない!」

「そうだねぇ。それで、その2つを達成するにあたっての中間目標は2つ。個々の戦力強化と、組織としての基盤の確立だ。」

「つまり、信徒を集める、ということで?」

とアンノウン。

「正確には、信徒、フロント企業、コネクションの3つ。」

「知らない単語が出て来ましたねぇ。」

とベスタ。

「順を追って説明する。信徒......というより、構成員は各自で集めてくれ。幹部それぞれに下っ端が付いている形が望ましいだろう。」

「ええ!このアンノウン!!是が非でも布教活動に邁進して参ります!!」

「ええ。助手は大いに越したことはありませんから。」

アンノウンとリヴェインが息巻く中、仁理はベスタを指さす。

「しかしベスタはそうもいかない。表向きは騎士団員である以上、その他の人員を部下には出来ないだろう。」

「私は結構です。数居ても邪魔なだけでしょう。」

「まぁその意見はある。しかしだ、しかしだよベスタ君。君が単独で動くのはもう一つ、騎士団の情報を握り込むという大きな意味を持つ。」

「ふむ、面白いですねぇ。無論、情報は流しますとも。」

「頼もしいな。」

「リルは?!リルも手下ほしい!!」

「リルは俺の右腕だろ。」

「むう、リルも手下ほしいのに!」

「我慢しろ。続いて、フロント企業。要は、組織の存在を隠し、かつ活動資金を集めるための隠れ蓑だな。」

「アテがおありで?」

「無い。が、熱心な愛の信徒が居るんだから布教活動で天才商人の1人や2人ぐらい見つけ出せるだろう。」

「身に余る信頼!!このアンノウン!!命を賭してでも人員を確保してみせます!!!」

「それと、リヴェインの技術力な。」

「ええ。商品開発や量産はお任せを。」

「......人道は守れよ。」

「勿論です。」

「んで、最後にコネクション、他の組織との横の繋がりだが......」

仁理は指を鳴らす。

「要らん。極道や盗賊団は突っかかって来次第、念入りにに潰せ。表の企業や商人は我々のフロント企業のライバル、すなわち好敵手となる。潰すつもりでかかれ。」

「物騒ですねぇ。どういったお考えで?」

「答えは単純、崇理教や吸血鬼連合の養分となっている可能性があるからだ。」

「流石ノワール様!!思慮深く実に!実に実に堅実!!!」

「そうでもなくね。」

「ええ、そうでもないですね。」

呆れ顔の仁理とベスタだが、リヴェインは同調し頷く。

「例え、どれだけ単純明快な考えでも、明言することは大切ですよ。我々人間は、言葉無しで互いを理解することが出来ませんから。」

「良い事言うなぁお前。倫理観終わってるけど。」

「賞賛と受け取っておきますね。」

パン、と仁理が手を叩く。

「よし、これで終わりか。各自何か言いたいことは?」

「それでは、私から1つ。」

リヴェインが手を挙げる。

「はいリヴェイン君。」

「これを。」

リヴェインは、人数分の黒い立方体を取り出した。

「これは?」

「魔力操作膨張式機械細胞。別名を“ナノマシン”と言います。」

「ほう、ナノマシン。」

仁理が魔力を流すと、立方体は魔力に乗って自在に動く。

「おぉ。」

ナノマシンを動かして身体に纏ってみる。

「アイアンマンのスーツみたいだな。」

「かっこいい!!」

「魔力で直接的に動くので、影や氷の操作より直感的に動かせます。服装を変える場合や武器を用意する時にも役立つかと。」

「ふむ。これは扱い易い。ナノマシンを魔力回路として使用することで出力の向上も出来そうですねぇ。」

「素晴らしい!素晴らしい!素ン晴らしい!!これぞまさに叡智の結晶!!」

「まぁ、慣れは必要そうだな。それに、」

ナノマシンでナイフを作ってみる仁理。

「扱い易い分、硬質化は難しいか。」

「ええ。そこはまだ改良が必要です。」

「いや、構わん。」

ナイフで机を刺してみる仁理。

「俺やベスタの精度があれば十分だろう。流通するとマズい技術である以上、此処は個人の研鑽に頼るべきだ。」

「では、そこは据え置きにしておきましょう。」

「末端まで配布するのか?」

「ええ。そのつもりです。」

「なら魔力面の育成も力を入れなきゃな。」

「ええ。人員の確保が必要ですね。」

ナノマシンをキューブに戻す一同。

「で、他は。」

「では、私から。」

ベスタが挙手をする。

「はい、ベスタ君。」

「会長殿だけでなく、我々の偽名も用意しましょう。」

「確かにな。俺が考えた方が良い?」

「いえ、各自で考えた方が都合が良いでしょう。それで構いませんか?」

「俺は良いぞ。皆は?」

「ノワール様のお手を煩わせる訳にはいきません!このアンノウン、活動に相応しい名前を考えて参ります!」

「私も、適切な名前を考えて来ましょう。」

「リルがんばる!」

「リルのは俺が付けようかな。」

「やった!!」

「じゃ、終わりで良いか?」

皆から伝達事項はもう無いようだ。

「んじゃ、今後ともよろしく。」



「戻りました〜。」

仁理とリルが庭に入ると、サフィアとユフィがパーゴラで紅茶を飲みながら談笑していた。

「あ!ヒトリ!」

手を振るサフィア。

「どこへ行ってたの?」

「リルと一緒に森の中を探検していました。」

「秘密基地作った!」

リルの口止めとカバーストーリーの伝達は済んでいる。

「良いわね。私も今度お邪魔したいわ。」

「ええ、是非。完成したら皆で遊びましょう。」

(三星会は影の組織。マフィアみたいなもんだから貴族を関わらせる訳にはいかないし、何より、秘密にしていた方がカッコイイからね。)

少し強い風が吹く。

「にしても、良い天気ですね。」

「ええ、すごく。」

空を見上げる一同。

「ねぇ、ヒトリ。」

「はい。」

「ずっと、平和に暮らせたら良いね。」

「ええ。」

(平和じゃ困るな。戦えないと退屈で死にそうだ。)

新しい一日。今日も仁理は戦闘狂のままである。

二章リザルト

人員変動

・死亡:アニア

・加入(クロード領):無し

・加入(三星会):有巣仁理、リル、ベスタ・カース、リヴェイン・ステイコール、アンノウン・アンダー・アンジェラレジアン

・発狂:ネギア・ベリト

戦闘

・有巣仁理の勝率:50%(勝5、負5)(砂時計によるやり直し前の戦闘、および契約印の一方的な破壊を換算。)

・最大与ダメージ:ボティス

・最大被ダメージ:アンシー・ヴィオルテ

・最大破壊半径:有巣仁理

・キル数最多:ネギア・ベリト(改造を換算)

・回復力最多:有巣仁理

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