表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
あの果てしない空の下  作者: kai
第二章
10/14

10.崇理教

『騎碁の話』


王都にて、宿の部屋で瞑想をする仁理。そこに、ユフィが入室する。

ユフィ「少し、休憩にしませんか?」

ユフィは将棋盤のようなものを持っている。

仁理「それは?」

ユ「“騎碁(きご)”です。ルールを教えるので、相手していただけますか?」

仁(“ルール”という語はそのままなのか。)

仁「ええ、構いませんよ。」

数分後。

戦績は仁理が5勝、ユフィは5敗である。

仁(いや弱ぁ......)

ユ「お、お強い......ですね......」

ユフィの目に涙が浮かぶ。

仁「......あ。」

この後、仁理は号泣するユフィを宥めるのにかなりの時間を要することになった。このことを教訓として、仁理はボードゲームで手を抜こうと心に決めた。

『無影廻廊』の展開から5分が経過しようとしていた。

「『無影廻廊』で死なねぇヤツは初めてだ!」

少年と相対する仁理。

分身体は全て潰したが、本体が一向に倒せない。

理由は単純、少年が自身の肉体の上に結界の膜を構築し、術式を遮断しているからだ。

「大技で終わりじゃなくて安心したよ。」

開放結界『無影廻廊』。エイミー・クロードの結界術を見て、見様見真似で有巣仁理が再現した、外殻を閉じない代わりに範囲を広げた術式結界。恩恵は、効果発動時の座標指定が簡単になることだ。

しかし、この技には罠がある。それは、展開した瞬間に『 』が“祝福”から“結界術”へと変化する、ということである。

「じゃあ、これはどうかな。」

結界術の優位性は祝福より低い。故に、より強固な結界により無効化出来る。

そして、

「転写『アリス・ヒトリ』。」

勿論、祝福によって破壊出来る。

「......は?」

少年の隣に現れたのは有巣仁理その人である。

正確には、有巣仁理の複製体である。

結界が崩壊する。同時に、偽ヒトリが迫る。

一瞬、結界の反動で脳の処理が止まる。回避行動が取れない仁理は、攻撃をモロに喰らった。

そして、地面に倒れた仁理の視界に、呪印の刻まれた白い脚が入る。

「さ、死のうか。」


(......痛いだけだな。大したこと無い。溺死のが辛い。)

足音が聞こえる。

次に、サフィアの声と嘔吐音が聞こえた。

(サフィア......)

「.........サ......」

骨を歪められて上手く発音が出来ない。

(頼む、連れて行ってくれ。)

「.........た.........スれ.........」



Now loading......



「ッあぁ......痛かった。」

仁理の目の前には、見覚えのある中年男性の死体が転がっている。

(戻って来たか。となれば、博打に勝った。)

仁理の立てた仮説。それは、『逆流する砂時計』に関するものである。



「砂時計が巻き戻すのは何かぁ?」

仁理の突飛な発言に瑞希が溜め息を漏らす。

「また変な物に興味を持ちますね。」

「魔道具の影響範囲の問題だぞ。変じゃない。」

「で、仮説は?」

「2択だろうな。世界ごと巻き戻して使用者の記憶保持か、使用者の意識を過去に戻して分岐を作り、元の世界はそのままか。」

「へぇそうなんですか。で、予想する意味はあるんです?」

仁理は、砂時計を持ってニヤリと笑う。

「前者なら、『 』(くうはく)で記憶保持が出来る。」



戻る前、仁理は砂時計上に『 』を噛ませ、ちょうど良い位置まで戻って来られるようにした。

「ヒトリ!」

会談中に突如立ち上がったサフィア。

領主らの視線が集まる中、サフィアはふと、手元の砂時計に視線をやる。

「なに......これ......」

少しだけ落ちている砂が、昇りはじめていた。



「誰だ。」

「君を殺しに来た者だ。」

「違ぇよ。」

仁理の瞳が青く染まる。

「名前訊いてんだよ。」

「あぁ、そうかそうか。」


「ボクは崇理教最高司祭が一人、ネギア・ベリトだ。」



#19『動転』



(能力の発動条件が判らない以上、迂闊に大技を出して隙を(さら)す訳にはいかない。)

逆に、迂闊に接近して来るネギアに顔を(しか)める仁理。

(そもそもこの呪印は何だ?おそらく能力関連だろうし祝福ではないだろうが......構造式?それとも呪詛の類か?)

迷いなくネギアの首を()ねる仁理。

そして、そのまま手刀に魔力の刃を纏わせ、返す刃で広範囲の横薙ぎをする。

「凄いね。身体を離れても魔力が乱れていない。」

横薙ぎで首が飛んだネギアの姿が次々と別の人間に変わる。

(やっぱ素体に人間を使ってんのか。ということは分身じゃねぇな。)

腕を交差させネギアの蹴りを防ぐ。

(幻術は有り得ない。『 』込の俺には効かねぇからな。)

そう、砂時計で戻る前、仁理は『 』が脳にかける負担がどれほどのものかをおおよそ把握しておいたのだ。

しかし予想に反し、身体をグチャグチャにされても思考の余地が残るほど、脳へのダメージは無かった。つまり、今の仁理は湯水の如く『 』が使える。

(チート頼りか、結局。)

ネギアの掌が仁理の腕を掴む。

そして一瞬ほど間が空き、ネギアの顔が歪んだ。

「ソレがお前のタネか。」

仁理の回し蹴り。ネギアの身体は宙を舞う。

追撃するべく飛び上がる仁理。

「なに」

言葉を発させる間も与えずネギアの口元を鷲掴みにする仁理。

直後、仁理は掌にありったけの魔力を込めた。

体勢を変えネギアを上に向ける。

「ディ・アクティベイト」

ネギアの鼻や目から青い魔力が漏れる。

ネギアは抵抗しなかった。

「エクスプロード」

無属性の魔力が唸りを上げ雲を穿つ。

ネギアの頭は広範囲に内容物を撒き散らして爆散。身体は支えを失って落下する。

地面を見下ろす仁理。勿論そこには、別のネギアが何人も居る。

「ゴキブリみたいだな。」

仁理の髪が白く染まる。

その様子に、ネギアは興味を持った。

「それは何だい?」

「“オーバードライブ”だ。」

「へぇ、凄いね。さっきまで全く魔力を感じなかったのに。」

「隠しているんだ。いつも馬鹿みたいに漏出させるのは勿体ないからな。」

「じゃあ、今の君は馬鹿だ。」

「あぁ。多すぎて制御出来ないからな。」

数発の魔力放出による数十発の魔力弾。あっという間に広場の地面が凹みだらけになる。

「発射した数と当たった数が一致しないんだけど!?」

「一発十中だからな。なんなら、一発百中も出来るぞ。」

一発の魔力放出。弾幕により空が真っ青に染まる。

そして、ネギアの顔が真っ青になる。

「どうした?殺しに来たんじゃないのか?」

「クッ......ソ......」

最後のネギアが消滅する。

しかし直後、ネギアの死体は全く違う姿に変化した。

「そうだよな。俺ならそうする。」

(そして、おそらく本体は街の外だろうな。)



迷わず外へ出たサフィア一行。

瞬間、遠くで青い魔力が爆ぜるのが見えた。

「広場の方!」

「待って!」

走り始めようとしたサフィアをアンシーが止める。

アンシーが指さす先、広場に繋がる通りから、白髪の少年が走って来る。

「お姉さん!」

「大丈ぶ」

「タ〜ッチ!!」

白髪の少年、もといネギアが触ると、サフィアの肩が弾け飛ぶ。

「......へ?」

阿鼻叫喚。悲鳴を上げる一同を、次々とタッチして殺していくネギア。

間一髪、砂時計の砂が昇り切り、ひとりでに砂の方が下になる。

サフィアは、迷わずそれをひっくり返した。



Now loading......



「おっと。」

中年男性の前に戻って来た仁理。

(ヤツの能力が「手で触れたものを改造する」だとして、俺の分身が『 』を持っていた理由は何だ?)

ブン、と魔力の刃を振り、背後のネギアを一掃する。

(おそろしく速い手刀......なんて。)

「あ。」

振り返ると、複数の建物がだるま落としのように倒壊していた。

「......やらかした。」

しかしその時、中空に現れるネギア。

彼は、格段に大きな魔力を纏っていた。

少し驚いたものの、なんとかリアクションを抑える仁理。

「馬鹿は力を誇示したがるんだ。高い場所でな。」

「一向に全力を出さないのも馬鹿だろう?」

(本体だ、と誤認させようとしているな。砂時計によって巻き戻ったことを含めて鑑みれば、おそらく狙いはサフィアだろう。しかし、このままコイツを放っておく訳にもいかないか。)

「お前が本体だな。」

「いかにも。」

(殺す前に目的を聞く必要もあるか。崇理教最高司祭討伐:Any%......不本意だが、祈るしかねぇな。)



会談の場に戻って来たサフィア。

その絶望に染まりきった表情を見て、皆が心配する。

「サフィア様。」

砂時計を起き、自身の左肩を掴むサフィア。

(......ある。戻ってる。)

唇が震える。

自然と、手に力が入る。

「......ヒトリを......助けなきゃ。」

「やめとけ。」

そう言ったのはベルモンドである。

「お前さんじゃどうにもならねぇよ。」

先刻、ネギア一人の力により壊滅した以上、ベルモンドの主張は正論である。

「オレなら、何とかなるだろ?」

と、ハインツが立ち上がる。

そして、アンシーも歩み出た。

「行こう、サフィアちゃん。」

「で、でも......」

サフィアの様子がおかしいことに、ユフィが気付いた。

「......追加で、やり直したんですね。」

頷くサフィア。

「やり直し?」

そう、ガザムが疑問符を浮かべた。

「と言うと、その砂時計は」

「『逆流する砂時計』。」

ガザムの言葉を遮るように、入口から声が響く。

声の主は、ネギアであった。

「何者だ!」

臨戦態勢に入る一同。

「おっと。血の気が多いね、諸君。」

余裕綽々といった様子で、ネギアは礼をする。

「ボクは崇理教最高司祭が一人、ネギア・ベリト。」

「ネギア・ベリト!!」

赤髪の獣人騎士、ミラ・グラミィが斬り掛かる。

「ミラちゃん!」

「ぶっ殺してやる!!」

「ッハハ!やっぱ獣人は頭が悪いなぁ!」

ミラの剣を手で受けたネギア。刃が通る前に、剣は砕け散る。そして、即座にミラは掌底に魔力を込めてネギアにぶつける。

「メテオハンズ!!」

火球がネギアの頭を覆う。

「熱い!熱いぃぃいい!!!」

燃え盛る顔面を覆って後ずさるネギア。

「助けて!サフィア様ああ!!」

一瞬だけ視線がサフィアに集まったその時、ネギアを覆う炎が消える。

そこには、苦痛に歪んだ仁理の顔があった。

「ヒトリ......!?」

反射的に駆け寄ろうとするサフィア。

瞬間、窓が割れ大量のネギアがなだれ込む。

即座に砂時計とサフィアを抱えて外へ出るアンシー。

「待って!ヒトリが!!」

「違う!アレはヒトリ君じゃない!!」

「離して!!」

サフィアの主張を無視し、アンシーは全速力で駆けていくのだった。



高濃度の魔力の気配を真っ向に受けながら広場に走るリル。

(いそがなきゃ!ヒトリが!!)

「あら、そんなに急いでどうしたの?」

聞き覚えのある声に振り向くリル。

瞬間、リルの腹をダガーナイフが貫いた。



黒雷が静寂を穿つ。

(闇属性。やはり結界術だけでなく魔法も使えるクチか。)

回避に専念して様子を見る仁理に、ネギアはもどかしさを感じていた。

「攻めて来ないのかい?」

「魔術師同士の戦いは“いかに手札を出させるか”と“いかに集中を保たせるか”だよ少年。」

そう言いつつ、仁理は闇属性魔法に魅せられているだけである。

「雷が撃てるのか。いいね、闇属性。」

「良いでしょ。氷属性は撃てないもんね。」

「さぁ?どうだろうね。」

両手で魔力を練る仁理。強固に練られた魔力はやがて一塊の結晶のように変質する。

ネギアが黒雷を放つも高濃度の魔力により阻止。触発され、直後、仁理の魔力が四散し円を描く。

「オーバードライブ」

仁理の髪が白く染まり、身体が浮き上がる。

「アンリミテッド」

仁理の全身に魔力が籠る。

ネギアが防御魔法を展開した。

「グレイシャル・ハウル」

仁理が両手を開くと、周囲に無数の小さな氷塊が生成される。

そして仁理は、掌を握り込んだ。

「ブリザード」

思いっ切り身体を捻る仁理。すると、周囲の氷塊がランダムな速度と方向に高速移動を始めた。

「自然現象としての雷が発生する原因を知っているか?」

快音を奏でる氷塊の中で徐々に魔力濃度が高まる。

ネギアは返答を返さず、防御魔法に集中していた。

「雲を構成する氷の粒がぶつかり合う際に発生する静電気だ。その先に複雑なプロセスがあるんだが、原理はともかく作業は単純だから適当な理解で良い。」

その時、ネギアの目に、氷塊の中を駆け巡る青い雷光が届く。

自ずと、ネギアの口角が上がった。

「氷魔法で、雷を......!!」

「静電気。正確には“電荷”だ。要は、負の電荷が正の電荷に引かれるのが雷の原理だ。」

仁理は、立てた指をネギアに向ける。

「それを、魔力の力で無視する。意味は、解るよな?」

指先に魔力が籠る。

「同属性の魔力は引かれ合う......!」

「正解だ!!」

放たれた魔力弾が大きく曲がり、ネギアを逸れて大きく後ろへと飛ぶ。

対するネギアは、防御魔法の隔壁を増やした。

「時間かけ過ぎ!防ぎ切ってやるよ!!」

「ディ・アクティベイト!!」

氷塊が加速する。

仁理の掌に白い魔力が籠った。

「な......ッ!?」

「エクスプロード・デルタ」

白い雷が空を穿つ。

付与された術式により防御魔法が崩壊。雷撃は、ネギアの頭を撃ち抜いた。

肉の焦げる音。頭を破壊されたネギアが落下し地面に激突する。

しかし直後、ネギアはぬるっと立ち上がった。

「ここまでしぶといと馬鹿馬鹿しくなって来るな。」

ネギアは首元に手を当て、頭をなおす。

「褒め言葉として受け取っておくよ。」

次にネギアは、目元に両手を当てた。

(何を......?)

数度、骨が砕ける音が響く。

そして直後、ネギアの姿は仁理のそれに変化した。

「あー、自分もいけるのね。」

「ッ......アァ......生まれ変わったような気分だね。」

偽ヒトリは長い髪を魔法で作ったナイフで切り落とす。

「ヒトの脳に保存された記憶はね、形を模倣すれば完全に再現出来るんだ。レコードみたいなもんかな。」

「へぇ。」

「早い話、同じ原理で祝福も再現出来る。この契約印があればね。」

両腕の呪印を見せつけるネギア。

(能力の効果を説明しちゃうタイプだ!馬鹿で助かった!)

「悪魔の契約印か。」

「そうだ。ソロモン72柱が一柱、偉大なるバアル・ベリト様のね。」

「ほう、バアルか。」

仁理は横に手を伸ばし、氷の刀を生成する。

(魔界の錬金術師だったかな。おそらく変形と自身や他者の複製は、錬金術にヤツの「尊厳を与える力」を加えた物だろう。)

「あんま俺の姿で悪魔の名を呼ぶなよ。」

「いいだろう?それに、“悪魔”じゃない。」

同じく、ネギアも氷の刀を生成する。

「“神”だ。」

ちょうど、日が沈むと同時、夜闇を裂くかのように剣戟が交差する。

「滅式!『遺恨離魂』!!」

ネギアの切っ先から緑のビームが発射される。しかし、ビームは仁理の目の前で上向きに逸れた。

刀を手放しながら空間圧縮で大きく後ろに距離を取るネギア。

そして、右手で爪弾きの姿勢をとる。

「圧式!!『銀』!!」

巨大な銀の弾丸が飛来する。

一方、仁理は蒼炎を引き絞る。

「熱式『火威』」

1500℃を優に超える炎の矢が能力攻撃を掻き消して真っ直ぐに飛ぶ。

「ッハハ!!」

ネギアは空間圧縮で回避。『火威』は、雲に衝突し爆炎を巻き起こした。

「いいねぇいいねぇ!!大技と大技のぶつかり合い!!正義と正義の押し合い!!!」

「借りモンの力で戦って楽しいかよ。」

「楽しいさ!!楽しいとも!!」

無数のエネルギー弾が展開される。

「そんな乱発して良いのかよ。」

「脳へのダメージは通常の運用じゃなく世界線を移動したことによる反動だ!そうだろう?!!」

ハッタリが通用せず小さく舌打ちをキメる仁理。

(やっぱ、ちゃんと記憶の再現は出来てるっぽいな。都合良くどこかしら欠落していることを祈っていたが。)

エネルギー弾で街が破壊されないよう、同じ攻撃で全て相殺する仁理。

「なってないな。戦い方がスマートじゃない。」

「殺すための手段にスマートもクソもあるかよ!!」

エネルギー弾が光線に変わる。

「音がメインのオーケストラでも流石に楽器の見た目ぐらい綺麗に整えるだろうが。お前は派手な技に拘って目的と手段を履き違えてんだよ。」

光線の威力を保ちつつ、仁理は指を銃の形にしてネギアに向ける。

記憶から何をするかがわかったネギアだが、悠長に腕を広げた。

「効かねぇよ!ボクはキミなんだからなぁ!!」

「『断空』」

瞬間、ネギアの腹が両断される。

「......へ?」

「そりゃ、知らんだろうな。今思い付いた技だし。」

「何を!!何をした!!?」

「言わねぇよ。」

『断空』とは、先述の通りたった今仁理が思い付いた技である。その効果は、「指定した座標の連続性を0にし、空間ごと切り裂く」というもの。

そもそも、『 』には祝福や魔法など、超常的な手段を用いた攻撃を無効化する効果がある。しかし、あくまで『 』でそれらを無効化出来るのは「掛かる効果を0にする」というプロセスを経るためである。そのため、この効果はデフォルトで全てに通用する訳ではなく、使用者によって手動で対象選別を行う必要があるのだ。

つまり、既存の攻撃は止められる。よって、今回仁理はネギアの記憶に無く認識の範囲を超えた初見の技を使ったのだ。

しかし、

「死ぬわけないだろう!切断ごときで!!」

下半身を拾うネギア。

即座に『断空』を再度発動してネギアの両腕を斬り落とす仁理。

「再生させる訳が無いだろう、切断ごときで。」

「クッソ!!」

瞬間、

「なんてね。」

ネギアの顔が仁理の眼前まで迫る。

そして直後、ネギアの身体が爆発した。

しかし残念ながら、仁理は無傷である。

(『 』に自爆技なんて無いんだがな。理論上は可能か?いや、あの自信満々な目付きからして、元々持っていた技だろうな。)

「余所見!!」

次いで、ネギアが背後から殴り掛かる。

仁理は軽々といなし、鍔迫り合いに入る。

(傷が無いな。治したか、それとも別個体か。)

「どうした?!殺すんじゃないのか!!」

突然、仁理の頭を骨のような構造体が覆い、こめかみから湾曲した2本の角が前に伸びる。

「言ってねぇよ。」

青い魔力の砲撃。ネギアの顔面に命中するが、大したダメージは無い。

「何だ、それ。」

骨の仮面が完成する。その異質な気配に、ネギアは興味を示す。

「多分、言っても信じねぇよな。」

瞬間、仮面の頬に契約印が浮かぶ。

「悪魔の......!?」

黒い魔力の砲撃。ネギアの右耳を掠める。

「悪魔に成り下がったつもりは無いんだがな。」

そして、命中した箇所からネギアの顔面が崩壊を始めた。

「じゃあ!!コレか!!!」

ネギアは両手で顔を覆い契約印を光らせた。

雑音。

ネギアの四肢と首が長く伸び、顔は鼻を頂点とした円錐型に変わる。

元の世界のキリンのようなフォルム。しかしソレは真っ白な外殻に覆われており、3つの目を除いて生物らしき器官が見当たらない。

「神格実体S-05!!お前の!前世の姿!!」

「気を違えたか。」

衝撃波。仁理はビクともしない。

「どうした?!ビビって声も出ないか!!?」

「あまり俺の姿でデケぇ声出さないでもらえるか。格が落ちる。」

「格?格だと!?!どうせ殺さなきゃ獣人の女も砂時計も()れねぇんだ!!関係ねぇよ!!!」

「ご丁寧に説明どうも。」

仁理の視線が中年男性の死体に向く。

(あんまホトケさんを弄るのは好きじゃないんだがな。)

「遊びは終わりだ。目的を聞いたからな。」

直後、空間が大きく歪曲し、死体を含む三者は奈落の底へ沈んでいく。

「場所を変えようか。」



Now loading......



果てしない青空の下、無数に広がる摩天楼の上空。

そして、ネギアの姿が元に戻っている。

「ここは......?」

「“裏側”。まぁ、やぶれた世界とか、ミラー・ディメンションとか、何でも良いけどね。」

ネギアの正面には、白いワンピースを着た少女が浮遊している。

「誰?」

「そうだな。敢えて言うなら、」


「“エンドロール”かな。」


#20『エンドロール』


「エンドロール......」

「ネギア・ベリト君。君は本体じゃないね?」

答えないネギア。そもそも、この状況が呑み込めていないのだ。

「別に答えなくて良い。(おれ)の目的は、君の目的を聞いて阻止することと、圧倒的な実力を見せて撤退させ他の最高司祭に情報を伝達させることにある。」

「何を......?」

エンドロールが手を伸ばす。

「考える必要は無い。」

瞬間、大きな無数の瞳が空間を切り裂いて出現する。

「さ、発狂してくれ。」



「ッあああああああああ!!!!」

「いや!!いや!!いやああああああ!!!」

突如、絶叫し始めたネギアらを見て、領主達や騎士団員は困惑する。

「何だ?何が起きている?」

シンジエッタがベスタに視線を送る。

そして、ベスタは『万世の備忘録』を開く。

「これは......」

ページは、大きな空白で埋まっていた。



サフィアを抱え、広場に向かって走るアンシー。

「離して!離して!!」

サフィアが暴れる。

「ヒトリが!ヒトリを助けなきゃ!!」

氷でアンシーを滑らせて手を振りほどいたサフィア。

走り出すが、アンシーに腕を掴まれる。

「アレはヒトリ君じゃない!!」

「でも!!」

アンシーがサフィアの頬を叩いた。

「じゃあ、アレがヒトリ君だったとして、“助ける”ってどうするの。」

「で、でも、放っておいたら、ヒトリが」

「それは広場で起きてたことでしょ。」

アンシーの言うことは最もである、と感じサフィアは黙る。

「わかったら、広場に行くよ。」

その時、

「何か、お困り事ですか?」

2人に話し掛けたのは、ワ装を着た長髪の男である。

その異様な気配に身構える2人。

「そんなに警戒せずに。」

瞬間、

「では、砂時計は頂きますね。」

サフィアの耳元で囁く男。

振り向くサフィア。既に男の姿は無い。

腰やアンシーの装備を確認する。砂時計も無い。

「やられた......!」

『移動中の話』


鳥車に戻るサフィア。

サフィア「ただいま。」

ハインツ「おかえり。それじゃ、出発するか。」

鳥車が動き始める。

サ「そういえば、ヒトリは大丈夫なの?」

仁理「ええ。」

サ「でも、2日間一度もおしっこしないのは変よ。」

仁「まぁ、魔力に換えてますし。」

サ「そんなことができるの!?」

仁「えぇ、まぁ。」

仁(魔門こじ開けたら本来使わない老廃物も魔力に変換されるからなぁ。)

サ「お前ホントに人間か......?」

ユフィ「おそらく物の怪の類ですね。」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ