火災現場
99話、完成しました
音緒が自身の家に帰った後、凛も鍵を差し込み新しい家に帰っていった
「楓お姉ちゃんただいまッス〜」
「凛、おかえり 転校初日はどうだった?」
「クラスメイトの人達に質問攻めにあって疲れたッス」
「まぁ転校初日はそういうものよ 私が高校生の時も転校生が来ると今日の凛と同じ状況になっていたわ」
「それにしても、冷房効きすぎじゃないッスか?」
「さっきまで次資源ゴミの日の為に、引越しに使ってたダンボールを纏めていたのよ」
「ダンボールに入っていた荷物はどうしたんスか?ある程度置き終わったんスか?」
凛がそう言うと、ソファに座っていた楓は後ろのテーブルを指差しながら喋り出す
「ある程度は... とりあえず、あそこのテーブルには食器類を置いてるわ だから通る時気をつけてよ それとダンボールに入っていた服は、あとでコインランドリーでまとめて洗うつもりでいるから 何処かでかける時はキャリーケースに詰めていた私服を来てちょうだい」
「もう今日は多分外に出ないッスから部屋着に着替えてくるッス」
「あ、それともう少ししたら冴川が家に来るから だから部屋着に着替える前に、この大量の服を大きい袋に詰めておいて まぁ1つに全部は入らないから2つ3つに分けといて」
凛は目の前の山積みに置かれている服を掴み袋に詰めていく
「うぅ、暑い中帰ってきた妹を扱き使うッスね(冴川... あぁ『冴川 瑠斗』ギルドマスターの事ッスか)」
「仕方ないでしょ お父さんが急な転勤で引っ越さないといけなくなって、お母さんは付いて行くって言うし... まぁ私は残るって言ったから、引越し先も探してくれて毎月仕送りしてくれるけど それよりも、さっさと服を詰めてよね!この家には私と凛しかいないんだから手伝って貰うわよ」
「はいはい 分かったッスよ〜」
リビングで座りながら袋に服を詰めていた凛は、楓に急かされると残りの服を一気に袋に押し込んだ
「これて終わり 楓お姉ちゃん全部入れたッスよ」
「うん お疲れ様 そろそろ冴川が着くと思うから、とりあえず部屋に戻って部屋着に着替えておいて」
「了解ッス〜」
部屋着に着替える為、凛は立ち上がり自身の部屋に戻っていく
・・・・・・・・・
同時刻 冴川はマンション前に着いていた
「マンションの場所を聞いた時、もしかして...って思ってたけど まさか陸君と音緒が住んでるマンションとは 楓さんはその事を知っているのだろうか?」
「冴川、1人でブツブツ言わずにさっさと行こうぜ?」
「あぁ ここに居ても意味無いよな」
「さっさと行こうぜ」
冴川と凱は会話をしながらマンションに入り、楓の部屋番号を押しエントランスに入った
「普通、訪ねてきた人物が誰か知るために話すよな?」
「そうだね まぁ荷解きの作業が大変で話す余裕が無かっただけかもしれないし」
「だな さっさと行ってゲーム開始前に今後の事を話し合わないと 最近はほぼ攻略が進んでない状態だからな」
話している間に二人は楓の部屋の前に着いていた
・・・・・・・・・
家に帰ってきた陸は制服から部屋着に着替えることなくソファで眠ってしまっていた そして時計に目をやると時刻は19時に...
「帰ってきてからすぐ寝たんだな それにしても、19時か... コンビニかスーパーでご飯を買いに行かないと」
夏休み前に買っていた食料は、イベントの騒動の影響でほぼほぼ食べられる物は無く処分した その後の夏休みは必要な分を買いに行ったり、出前を取ったりの生活をしていた そして昨日、家に帰る前に買い物をしていなかった為に冷蔵庫はほぼ空の状態であった
「冷凍食品でもいいけど、もし明日も買い物忘れたら最悪だから買いに... ん?なんだあの明かり?」
陸は制服を脱ぎ部屋着に着替えている途中で、窓の外が明るくなっている事に気づく
「古そうな建物が火事...そういえばあの人... 最近古い建物に被害が起きているって」
部屋着に着替えてから、ベランダに出ると近くの商店街の建物が燃えていた
「あれは...」
陸は商店街を凝視すると、消防車とパトカーが火災現場に到着したのを確認することができた
「まぁ俺には関係ない事だな 血液で消火できないし」
寝る前に冷蔵庫から取り出していた麦茶をコップに入れて飲む
「冷えてない... 買い物行く前に冷蔵庫に入れておくか」
冷えていない麦茶を飲みつつ、ボトルを冷蔵庫に仕舞い家を出ようとした陸 だが、その瞬間ベランダの方から爆発音が聞こえた
「っ、あの火災が原因か!(飲食店に燃え移ったのか...)・・・・・・いやこれは別の場所で火災が起きたのか!」
爆発音が聞こえ慌ててベランダに出ると、商店街から少し離れた場所のアパートが燃えていた
燃えているアパートを見ていた陸は直ぐにベランダから飛び降りた
誰も居なくなった部屋にインターホンが鳴り響く
・・・・・・・・・
「《隠密》発動 《血液創造 羽》」
ベランダから飛び降りた陸は、隠密で他人に見られないようにした そしてコウモリの羽を創造し宙を羽ばたく
アパートに近づいたその時、不審な男を視界の端に捉えた 不審な男は燃えているアパートを見ても動じる事なく、フードを被り路地裏に歩いていく
そして近くの建物から、誰かが陸の事を見つめていた
「あの羽は...」
・・・・・・・・・
「チッ、とりあえずアパートの火災をどうにか...」
見つめられていることに気付かず、不審な男も気になった陸だったが、目の前のアパートの火災を無視する事も出来ず《羽》を解除し地面に着地した そして周囲に人が少なく注目される可能性が低い事を確認してから隠密も解除した
「アパートはもう駄目か... 中に人が居ない事を祈るか」
「消火活動の邪魔になるのでアパートには近づかないでください」
「消防士さん まだ家の中にお母さんが!」
アパートの目の前に着くと消防車が消火活動を行っていた 陸は消火活動を行っているのを確認すると、自分に出来る事が無いと思い不審な男を追おうとした
しかし、一人の少女が消防士の方に伝えている内容が偶然耳に入ってしまい動きを止めた
「この火の回り方だともう...」
「おい、それは... お嬢ちゃん我々もお母さんを救いたい何処の部屋か教えて貰えるかな?」
「お母さんは私を逃がす時に棚の下敷きに...」
「(パニックになっているな 部屋が分かれば助けに行けるのに)お嬢ちゃん、落ち着いて 部屋の場所を教えてくれるかな?」
「一階階の右から2番目...の部屋」
「ありがとう 消火活動はそのまま継続...」
消防士が部屋の場所を聞き出し、救助に行こうとした その瞬間、アパートの一階の一部が崩れると続け様に二階に繋がっている階段が一階の部屋の前に崩れ落ちた
「これじゃあ救助は...」
「隙間を作って救助しに行くしかないだろう」
一部始終を聞いていた陸はアパートに向かって走り出す
「おい!君!無茶だ防火衣を着てないのに行くのは!」
「(あの話を聞いた上で、無視してあの男を追っても後悔するに決まってる)」
陸は消防士の言葉を無視し、足に力を入れてジャンプする そして、火災で斜めになり今にも崩れそうな二階の壁に手をかけ、身体を勢いよく捻り崩れた階段の隙間から入り込む
・・・・・・・・・
「っ、コレは煙がヤバい 手も軽く火傷したか....(今の壁に手をかけた時に)」
手の平に軽い火傷を負いながら、陸は部屋の扉を蹴り飛ばした 室内は炎と煙で視界が非常に悪く、天井は今にも崩れそうであった
「(この状況で声を出していたら喉が死ぬ)《レーダー》」
救助対象の母親と家の隅々を知る為に《レーダー》の範囲を広げた 反応した場所に行ってみると、棚の下敷きになり、煙を大量に吸ったのか気絶していた母親がいた
「(あの女の子が言う通り、棚の下敷きに...意識は・・・あるか 良かった点は、棚に何も入ってなかった事だ もし本とかがあったら火の回りが早く手遅れだったかもしれない)《真・付与魔術 壊死》」
右手に壊死効果を付与すると、棚に触れる そして右手に触れられた棚は崩れていく 陸は棚が塵となって完全に消えていったのを確認すると、壊死を解除し気絶している母親を抱えた その時、天井がいまにも崩れそうなことに気づく
・・・・・・・・・
「(このままだと天井が崩れる上に、出口に到達できなくなる...)『雪血』解放」
『雪血』に蓄えられていた血液を勢いよく放出した 血液がこの部屋全体に付着したのを確認すると、陸は小さな声で告げる
『凍えろ』
陸の声と同時に、血液は凍っていく
「《付与魔術 疾風》」
凍らせたことによって崩壊を一時的にだが食い止める事に成功した しかし、いつ崩れてもおかしくはないアパート
その為に陸は、ゲームで使いこなしている《付与 疾風》を自身に付与した
「脱出するか...(それにしてもあの不審な男は... 月海さんに連絡しておけば良かったな)」
疾風での高速移動で無事に脱出はできたが、その瞬間アパートは完全に崩れた
「っ、ギリギリセーフ...(疾風解除)」
「君!無事に脱出できたから良かったものの、一歩間違えていれば君も死んでいたんだ!」
「それは考えていなかったです...」
「無事に脱出できた事とあの少女の母親を救出できたのは評価するが、軽率な行動は二度とするな!」
消防士に説教されながらも気絶している母親を預ける
「とりあえず、君も怪我していると思うからあそこで見て貰うといい」
消防士さんは到着している救急車の所に居る救急隊員を指差し、怪我の手当を促した
陸は、救急隊員の所に向かう途中にポケットから携帯を取り出し電話を掛けた
「月海さんに伝えておかないと、この火災は事件性があるって...」
陸の耳元で電話のコール音が鳴り響く だが、電話は切られた
「切られた... (後でもう一度電話するか)」
「いや~陸くん ボロボロだね」
「月海さん?何故この場所に?」
月海はボロボロになっている陸に声を掛ける
「警視庁で書類整理していたら、火災が発生したって聞いてね 火災場所が陸くんの家の近くだったから気になって来たんだ」
「もしかしてコレって...」
「まぁとりあえず君は怪我を負っているんだから病院で手当てしてもらいなさい 怪我を治す為にも明日の学校は休みなさい」
「え? いやこの程度の怪我は今日中に治りますよ」
「僕が明日学校に電話して休みにさせるようにするから ゆっくり身体を休ませなよ」
「・・・・・・何か裏がありそうな感じで言わないでくれます?」
「ただ心配しているだけだよ?兎に角、何かあったらコッチから伺うから今日は病院で入院して身体を休めな」
「(怪しい...)まぁ周囲の目がありますし、怪我の手当てはしてもらいますよ... それと、ここに到着する前に不審な男を目撃しましたよ フードを被って燃えているアパートを見ても何もしないで去っていった男」
「右手の火傷だけじゃなく擦り傷切り傷があるんだからきちんと手当てしてもらいなよ そうか 助かる 一連の奇妙な放火事件はそいつの仕業だ」
陸と月海が会話している途中で月海の部下が会話に入ってきた
「月海警部補? 鎮火したらしく今から火元の確認を行うそうです」
「ん?あぁどうせ今回の火災も一連の放火事件に該当するから、俺達は防犯カメラの確認に行く」
「それにしても、月海警部補? あの青年は知り合いですか?消防士に聞いた所、火災現場に乗り込んで少女の母親を救出した勇敢で無謀な青年らしいですけど」
「昨日の誘拐事件の被害者だ 事件の後、何か思い出したら連絡してくれ って電話番号を渡したくらいだ」
「な、なるほど? それよりも月海警部補の予想通りで近隣住民がアパートが燃える寸前に爆発音を聞いたとの事です」
「やっぱりそうか それと先程の青年がここに到着した際にフードをした不審人物を目撃したらしい とりあえず防犯カメラで不審人物を探しに行く」
「は、はい!」
月海とその部下は付近の防犯カメラに映っている内容を確認しに行く 陸はというと、救急隊員に手当てを頼んだら月海が事前に手を回していたのか、そのまま病院に連れていかれ一日だけ入院する事になった
「拒否権は無いのか(それにしてもあの時の月海さん... 周囲を気にしていた 部下が近くに居たから俺と会話するのを最小限にしたかったのか? まぁあちらは警察の人で俺は一般人 捜査状況を話せるわけないか)」
陸は火傷を負った右手に包帯を巻かれ病院のベットで携帯をイジりながら、眠った
・・・・・・・・・
「このまま路地を歩き、大通りに出て人混みに紛れれば、犯人を特定する事はできないだろう」
フードを被った不審人物は路地を静かに歩いていた
しかし、突然頭上から声を掛けられた
「そこのお兄、おじさん? こんな薄暗い路地裏で何してるんだい?」
「俺はまだ24だ!というより、お前みたいなガキの方こそ何してるんだ?」
「はっ、ガキって... 僕今年で20歳なんだけど?」
「2、20歳だ?全然見えねぇ...」
「まぁ年齢はどうでもいいよ 24歳のお兄さん?向こうの住宅地で火災が発生したのって知ってる?」
「アパートが燃えたって奴なら知ってる」
「へぇ〜 それで、何でこんな路地裏を歩いているのかな?」
「それはコッチのセリフだ 建物の屋上に座って見下している怪しいぞ...」
「僕が怪しい?ははは、笑わないでよ 怪しいのはアンタだろ? 放火した所をきちんと目撃したからね」
「な、何を言ってるんだい? 放火?この俺が?ただ路地裏を歩いていただけなのに放火犯って疑うのはちょっと酷いなぁ」
「あ、何を言っても無駄だから きちんと携帯で放火の所から去る所まで録画してるしさ 警察に自首しなよお兄さん」
「それを目撃したのは君だけなのかな?」
「まぁ録画したのは僕だけじゃないかな? 他の人は燃えているアパートを見ていたし気づいていないんじゃない?」
「そう... じゃあ君を殺れば証拠は世に出ないって訳だ」
不審人物はフードを捲り、頭上にいる男を確認する
「はぁ〜眠い... あ、今何か喋った? あくびして聞こえなかったわ」
「死ね クソガキ」
青年は建物の屋上から飛び降り、不審人物の前方に着地した その時、火の球が青年に命中した
「こんな路地裏で燃やす事になるとは...さっさと遠くに逃げて身を隠さないと」
「《斬風》なるほど 人やアパートを燃やす火力はあるってことか まぁ当たっていればの話だけど」
「直撃したはずじゃあ・・・お前、俺と同じか?」
「当たる直前に消えたよ 強い風の影響でね」
「(質問には答えない だが普通の人間なら避けられるはずが無い)だったら至近距離で強力な《業炎》..」
「『狼衝』」
フード男は青年に向かって走りながら、強力な火の球を発動しようとした だが放とうとしたその時、正面から勢いよく衝撃を受けて後ろに吹っ飛んだ
「っ、今のは...」
「さすがに周りの建物に被害が出るのは困るからね」
「俺を殺す気か?」
「殺しはしないよ? お兄さんが放火犯ってのは知ってるし、気絶させて警察に渡すだけ」
「どっちもお断りだ!」
そう言うと、男は人一人通れるか微妙な横道に入り身体を狭めながら逃げていく
「逃げるか...(斬ってもいいが、あの細道だと引きずり出すのは困難だな それに警察が近辺を探っている可能性もある 『斬狼』を見られたら厄介...)」
「こっちの方で物音がしたぞ!」
「一連の事件の犯人が潜んでいる可能性が高い 慎重に行くぞ!」
青年こと『グリム』は細道に入ったフード男に斬撃を飛ばそうとした だが、自身が捕まる可能性を考え止まった すると、フード男が逃げていた方向から警官の声が聞こえた
「噂をすればなんとやら... もし警察に見つかれば、僕が犯人だと疑われる(ここは逃げるしかないか)《隠密》 《斬風操》」
隠密を発動させて姿を隠すと、風を操り建物の屋上に移動するグリム
そして、横道を何とか抜けて大通りに出るフード男
「あのフード男 次出会ったら捕まえる」
「あのクソガキ 次出会ったら燃やしてやる」
グリムとフード男は、警察に見つからないように人混みに紛れ去っていく
「にしても、燃えているアパートに突っ込んでいったリクは無事かな? まぁアイツの事だし、火災の現場から脱出するのは容易だろう」
「兄さん 早く家に帰りましょう 兄さんと違って私は、明日も学校ですから」
「了解了解...」
「はぁ、病院先は聞いたので心配なのであれば明日会いに行けばいいのでは?」
「ん?あぁ、そうしようかな」
グリム達の前を救急車が通り過ぎっていった
どうだったでしょうか?
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