8.地獄の門
翌日、X組の闘いに備え、琉は校門に向かって走って行った。
すると、近くに真由と陽介が目に入った。琉は二人に挨拶する為に近づいた。「おはよう。」と琉が言った時、二人の顔は強張っていた。
「如月君…。」と、真由は陽介の後ろに隠れていた。凄く怯えているようにも見えた。陽介は琉の肩を軽く叩き、「悪いが、俺ら今ちょっと急いでいるんだ。」と言い残して走って行った。
「ん?どうしたんだろう…?」と、琉は思いつつも、教室に向かって行った。
X組の教室に入ろうとすると、誰かに肩を持たれ、琉が教室に入るのを止められた。
「やっと来たのね…。如月琉君。意外と遅いのね…。」琉が振り返ると桜がいた。桜は「さぁ、いらっしゃい。ショーの始まりよ。」と、言って半ば強引に琉を連れ出した。琉の手が赤く腫れていくのを感じた。「痛いだろ!どこ行く気だよ?」と琉が言っても、桜は答えない。早足で、何に急いているのか分からなかった。
琉が連れて来られてきた場所は、学校の屋上だった。屋上には皇・尊以外のX組の生徒が揃っていた。帝は琉を見て、ニヤリと笑った。「最後の確認だ…。我々の力になる気は本当にないんだな?」帝はそう呟く。「当たり前だ!」琉は強い口調でそう言った。「その前に、何するつもりだ!説明しろよ!」声を上げたが、帝は説明しようとしなかった。
そして「さて、役者は揃った!今から行うぞ!」と、大きな声で言い、翼が「おいっ!オメェーら!黙れ。今から、大事な話をする!うるせぇ奴は、今すぐ処罰するぞ!」と脅した。「処罰って…。何言っているんだよ?」と琉が止めようとした時、帝に強く押され、琉は尻餅をついた。そして帝は全生徒に向かって「全学年、全教師の諸君に言う!昨日の午前零時きっかりに送ったメールを見た者は分かると思うが、一年X組の如月琉は、我々X組を裏切った。いくら転校生とはいえ、これは許せない事だ!よってX組、いやこの学校の標的とする。もしコイツに同情したり、話しかけたり、助けたりした奴が出てくれば、我々X組からの厳しい処罰を受ける!」と言った。
琉には理解が出来なかった。近くにいた桜を捕まえて「おい、どういう事だよ!」と尋ねた。桜はクスリと笑って「そういう事よ…。これがX組のやり方…。X組を甘く見た罰ね。」と言った。琉は走り去って、屋上から下を眺めた。上から見た全生徒の顔は、強張っていた。中には厳しく睨み付ける生徒もいた。琉に話しかけると自分にも処罰が与えられるから…。
そういえば、朝、真由と陽介が自分に対しての態度が変だった。変だったのは自分も処罰の対象になるかも知れないから…。その恐怖心から話しかけられなかった…。
そう言う事かと、琉は思った。
帝はフッと笑い、一拍置いてから「以上で、X組からの連絡を終了とする!」そう言って、帝達X組は屋上から去って行った。状況が読み込めない琉は呆然と、ただ理解した事は、これから始まるのは、地獄の日々だという事だけだった。
そして一番最後に、去って行こうとした茜が琉を見て、少し躊躇いながらも琉の前に行き「…始まったわよ。地獄の門。昨日、私が言ったとおりにしていればね…。こんな事にはならなかったでしょうね…。」と言った。琉はキッと茜を睨み付けて「言っただろ?俺は逃げないって。どんな事があってもな!」と、強く言って屋上から去って行った。
一人になった茜は、思い詰めた顔をして、空を見上げて誰にも聞こえない本当の独り言のように「…私だって、好きでこんな事を…。」と、言ってしゃがみ込み、すすり泣きしていた。波乱の学校生活が始まる。




