9.危険な香り
X組の連絡を受け、黒田は警視庁の大西と天野、PTA会長の和田光秀、副会長の清水昭雄。学年委員会委員長の福原直也、副委員長の林愛美。A市の市長金子忠志、副市長の山倉栄治。そして、弘子と田山等職員を集めた。
黒田が早速今朝起きた事を皆に簡潔に話をした。
話しを聞き終えた大西は「そんな事になってしまったとは…。如月君が、彼は大丈夫ですか?」と、質問した。「X組の連絡があったのは、今朝ですね。今日は授業どころではなかったので、生徒を全員帰しましたが、明日から恐いでしょうね…。」そう言うと、金子がガックリと肩を落とした。「情けない…。」と小さな声で呟いて。
心配した田山は「大丈夫ですか?」と、金子に聞いた。金子は市長新任一年目の新人ホヤホヤ。市長にはやるべき仕事がたくさんある。目標はA市の更なる飛躍を目指し、住みよい街作り計画を考えていたからだ。そんな期待を胸に立候補したが、自分が市長になった瞬間、X組という非常に厄介な問題に立ちはだかったから、金子としては、少しでも早く解決したかった。
「A市はさほど有名ではないが、昔は静かで落ち着いた市だった。より住みよい街にしようと私は考えていたのだが…。あの名門『黒光高等学校』の生徒達が立ち上げた革命クラス、X組にA市を潰されてはいけません!この学校と市を守る為には、やはりX組を倒すしか他は無いのに…。」悔やみながら言っている金子に天野が「そうですね…。ことごとく我々の作戦の裏を読まれまくって、半年前に出来たX組はさらにパワーアップしていますからね…。早いとこ、破滅しなければ…。」と、過去のX組の資料を見ながら言った。
すると、「それは、私も同じ考えです…。」と金子と同じく、深いため息をつきながら言ったのが、和田だった。和田は、冷静な性格で、数々のモンスターペアレントを解決していたのに、今最大の敵、X組というクラスに悩まされていた。「教育委員会の悩みを全て答えたこの私が、ここへ来て…まさかガキに振り回されるなんてな…。考えた事もなかったよ…。」と、机を大きく叩いた。
ここにいる大人達は、ただ指を銜えて、X組の行動を見る事しかなかったのだ。無能すぎる自らの脳みそを恨みたいと感じるぐらいに…。
学校は愚か、市全体を悩ますX組に黒田を始め、大人達が呆れていた。
先陣を切って立ち上がった黒田は「とにかく、これ以上X組の問題を起こさせない事だ!奴等は調子に乗り過ぎているからな!それには、我々の力も合わせん事には話にならない!まず、福原君と林さんは、委員会で学校内をチェックするんだ。勿論、我々教諭も出来る事はやろう!だが、X組の皐月楓には気を付けろ!奴はリーダー格の睦月皇の指令で委員会に入っている口だからな…。そいつが厄介者だ…。今すぐにでも辞めさせてやりたいところだが、すぐにできないのが現状だ…。次に、警視庁の方々は、X組の犯罪を暴き、一人でもいいので捕まえてくれ!そしてPTAの方々、A市の方々には、我々と一緒に市のパトロールをしましょう…。基本的な事ですが、こんな事しか方法がありません。もう、被害を出さない為にも、我々一丸となって、力を合わせてがんばりましょう!」と、やる気のある大きな声で言った。
それを返すかのように、ここに集まっていた人々皆も「オォー!」と、大きな声で返事した。このヤル気ある掛け声が、空回りしなければよいのだが…。
…皆が退室した後、部屋に残った弘子が黒田に「でも、どうして…如月君をX組に入れたのですか?私が見る限りでは、彼は普通の男子生徒ですよ?…ひょっとして彼も何かの能力者とかあるのですか?」と、尋ねた。黒田は一瞬渋った顔を見せたが、「私は、信じているんだ。彼の秘めた可能性を…。」と、小さく呟いて部屋を出た。
丁度その頃、X組の教室では、とてつもなく悲惨な現状になっていた事にまだ誰も気付いていなかった。




