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BLACK HIGH SCHOOL  作者: 寿 絆
第一章
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10.四面楚歌

翌日、X組からの警告があってか、他のクラスの生徒も琉に話しかける事はなかった。


勿論、ついこの間まで琉と仲の良かった竹中兄妹も、琉に対して警戒心を浮かべながら、登校していた。竹中兄妹と一瞬目があった琉だが、話しかけて迷惑かけてはいけないと思い、逃げるようにその場から立ち去った。


琉は複雑な気持ちの中、X組に入っていった。正直、この教室に入る意味なんてあるのかどうかも分からない。深いため息をついた。教室に入った琉は驚愕した。


昨日、教室に入った時は綺麗だったのに、X組の教室が一夜にしてゴミ屋敷になっていたからだ。部屋全体に広がる生ごみの臭い、まさかと思うが、煙草とお酒の臭いもわずかにする。足の踏み場もないくらい汚れていた。


「なっ、何だよ、これ…。」琉はその酷さに言葉も出ない。すると机の上に置かれている一枚の置き手紙に目がいった。どうやら帝かららしく、殴り書きしたみたいな字で、「如月琉、今日中にここを綺麗にしておく事!もし、命令に背いた場合…どうなるか分かるよね?」と、命じられた手紙だった。


どうやらこの部屋の汚さは、帝をはじめとするX組が仕組んだ事だった。


怒った琉はその手紙をビリビリに破ってしまった。「ふざけんじゃねぇーよ!何だよ、自分勝手な事ばっりかしやがって…。」と、言って帰ろうとした。

当然、帝達が汚したX組の教室を掃除する気なんてさらさらなかった。


その時、「帰る気なの?」と、琉は誰かに止められた。振り返ると、腕組みをして歩いてくる茜の姿がいた。ああ、またコイツかよ…。

茜の毎度に続く忠告は、琉にはもう耳にコブが出来そうなくらい聞き飽きたのだった。


琉はため息をついた。「また、てめぇーかよ…。ほんと、毎回何なんだ?」と、尋ねた。

茜はゆっくりと近づきながら、「私は、ただ忠告しに来ただけよ…。」それを言った途端、琉は切れ出した。「忠告、忠告って!お前は一体何が目的なんだ?俺の観察係か?帝に言われてやっているだけか!」思わず大声を出してしまう。

「違うの、私は…。」茜は首を横に振りながら近づいてくる。

茜のウジウジした態度もそうだが、茜が何を言いたいのかもイマイチ分からない。短気な琉にとって、それも苛立ちの原因だった。

「いい加減にしろよ!はっきり言ってお前、うざったいよ?イチイチ訳分かんない事ばっかり言ってさ…。言いたい事があるのなら、はっきり言えよ!」と、茜の忠告を無視して帰ってしまった。


「あっ…待ってよ…。」と、茜が言っても、琉は待たなかった。「違う、違うの…。」茜が小声で呟いても琉の耳には届いていなかった。


琉は廊下で偶然、真由とばったり会った。真由は驚きながらも、琉を避けて行った。覚悟していた。X組だとばれた時、避けられると思っていた。標的にされた時、避けられると感じていた。でも、心のどこかで、自分の味方になってほしいと願っていた。


避けて行く真由を見て、「竹中さん!」と、つい真由を止めてしまった。その言葉に真由は足を止めた。琉は真由に近寄り、言葉を掛けようとした時だった。「…。如月君。助けてくれた事は、凄くうれしいわ…。それは感謝する。でも、今もそうだけれども、X組の標的と話しているところなんて誰かに見られたら、私はもう二度と、助からないし、今度は命もないかも…。貴方はX組の生徒らしいけど、優しくて素敵な人だったわ…。でもごめんなさい。こればっかりは、ムリなのよ。…ごめんね、如月君。」と、言って走り去った。


「竹中さん!!」と、言っても、真由は振り返ってもくれず、走った足が止まらなかった。今の自分には味方がいない。初めて分かった瞬間だった。

真由が去った後、今度は下駄箱で陽介等、サッカー部のメンバーと歩いて来た。最後の望みをかけて、「先輩!」と、琉は陽介に明るく話しかけた。陽介は一瞬琉を見て、顔をしかめた。そして、琉を無視した。


琉と話したら、自分にまで罰が来る。罰が来ない為には、琉を無視するしか他は無かった。「ここへ来て、予想はしていたけど、俺の考えていた、学校生活じゃなくなったな…。皆に無視される為に、皆を苦しめる為に、俺はここへ転校したんじゃない。俺は、俺の生活を取り戻さなくてはいけない。X組なんて馬鹿なクラスにつき纏っていたら、もう学校は愚か、このA市も潰れてしまう!」と考えた琉は、例え味方が一人もいなくても、自分一人でX組と戦う。そう強く決意した。


琉やX組の生徒皆もが考えもしなかった事が、これから起こるとも知らないで…。

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