7.か弱いウサギ
放課後、琉はカバンを取りに行く為、一旦X組の教室に戻った。
流石にもうこんな時間なんだから、全員帰っているだろうと思っていた。しかし、教室の中にはまだ茜が残っていた。
教室の中でも無口な茜は普段いつも窓ばかり眺めている事が多かった。今も特にする事もなく、何も考えていないような目でただボーッと夕陽に照らされた窓を眺めていた。
琉はやる事がないのなら早く帰ればいいのにと思いつつ、琉はこの重く気まずい空気の中、急いで帰り支度をした。
すると、ずっと窓を眺めていた茜がいきなり「明日、気をつけた方がいいかもね。」と呟いた。
驚いた琉は茜の方を向いて「何?それ、俺に言っているのか?」と聞き出した。「貴方以外に誰もいないでしょ?」と、茜は琉に突っ込んだ。
深いため息をついた後、茜は一瞬、瞳を閉じた。そして、瞳を開けると、琉に近寄って「如月君…。最後の忠告だと思ってよく聞いてね…。帝をはじめX組は、狙った獲物は必ず逃さない猛獣。…狙われた貴方はそうね…。か弱いウサギって所かしら…。貴方は絶対、いつか身も心もボロボロになるわ…。貴方が今ここで、X組の力になると言えば、それで終わる事なの…。私が直接、帝から伝えてあげるから…。だから…。」茜がそう言っている最中に、琉は茜の会話に割り込むように「おい、俺は前にも言ったけどな…。俺は、X組の力にはならない。俺は非道なX組には腹が立っているんだ。だから、X組のテメェーなんかに言われても、俺はX組の仲間にはならないし、力を貸す気もない!それは断言する!」きっぱりと言い切った。
それを聞いた茜はしばらく黙っていた。そして「貴方の度胸は素晴らしいわ。私はとても感心しているの…。でも、忘れない事ね。私の誘いがラストチャンスだって事を…。」そう言って、茜はカバンを持ち、帰ろうとした。カバンを持った瞬間、深くため息をついた。何かを言いたそうだったが、口をつぐんだまま何も言わなかった。
「用がないなら、俺は帰るぞ!」と、琉は荒っぽい口調で、カバンを取りに自分の机に向かった。
茜が先に教室を出ようとカバンを手にして、ドアノブに手を掛けた時、突然茜が振り返った。「…貴方は転校生だから知らないでしょうけど、私…未来を予知する能力を持っているのよ?私の言うとおりに動けば、貴方は助かると言うのに…。どうして言うとおりに動かないのよ?」茜の口調が荒々しくなってきた。
しかし、そんな事も気にしていない琉は自分の意思を固く、ため息をつきながら茜にぶつけるように言った。「お前が予知能力ある事は知っているよ。色々X組の事は教えてもらったから。でも、俺はお前の言うとおりなんかには絶対に動かない!だいたいお前の予知自体も信じていないし…。だからそんな予知、俺は変えてみせるからな!ちゃんと見とけよ!」茜はそれを聞いて、呆れるように俯いた。
「貴方は、本当…正義感の塊みたいな人なのね…。」ボソッと呟いたその言葉は、琉の耳には届いていなかった。
そしてしばらくしてから前を向き、琉に向かって「分かったわ…。じゃあ、明日。楽しみにしてなさいよ…。絶対後悔する羽目になるから…。」と言って、X組の教室を出で行った。茜が出て行った後、一人残った琉は「アイツの言ったとおりになってたまるか!X組は失くさなくてはならない、いらないクラスなんだ。まだ戦ってもいないのに、尻込みするなんて…、臆病のする事だ!」と言って、自分で自分に自信をつけた。
全ては明日大きく動く。琉が地獄を見るまで後、十四時間後の話だった。




