4.ヒーロー
次の日、琉は期待の気持ちから一転、不安の気持ちに変わった。
本心、X組の教室にだって入りたくなかった。そんな落胆する気持ちの中、校門をくぐり抜けた時だった。「如月君!」とポンッと琉の肩を叩いた。
琉が振り返ると、真由とその兄・竹中陽介の姿があった。「あっ、昨日大丈夫だった?」琉は真由に尋ねた。「うん。私は…。心配なのは如月君の方だよ。顔、怪我しているじゃん。大丈夫なの?」と言いながら顔を撫でた。真由の手は優しく温かなものだった。
「俺は平気…ありがとう…。」この学校で、唯一信じられる真由はそんな存在だった。
「…俺は真由の兄・陽介だ。よろしく。昨日は妹が悪かったな。お陰で助かったよ。お前はいい男だな!学校中が騒いでいるぜ?X組を止めたヒーローが出たって言っていたよ!」と陽介が琉の肩を持った。明るく熱血漢タイプの学生だった。陽介は琉の顔をまじまじと見つめ、「でも君、見かけない顔だな?ひょっとして、転校生か?クラスどこだ?分かんない事あったら俺に聞けよ!」と言った。『クラス』を聞かれた時、素直に『X組』と言えなかった。『X組』なんて言えば、恐れられる。きっと避けられるに決まっている。それが瞬時によぎった。
だから琉はただ、「僕は大丈夫です。気にしないで下さい。」と言って立ち去るしかなかった。立ち去ろうとした時、「待って!」と真由が琉を止めた。「制服…。ありがとう、多分貴方、X組に目を付けられていると思うの。あんな事をしちゃったもんね…。例え、X組の事を何も知らない転校生だからって、X組は容赦しないと思うわ。」と言った。それは、昨日…。直に感じた事だった。
琉は笑って「心配してくれてありがとう。俺は大丈夫だから…。」と制服を受け取って立ち去った。琉は自分の教室X組に辿り着いた。琉は入りたくなかった。もともと、このクラスでの授業はないのだし、担任さえもいない。ムリして入らなくてもいいだろう。と、考え込んでしまった。しかし、逃げたくない気持ちの方が大きかった琉は、決心してドアを開けた。X組の生徒は、一度琉を見た。鋭い目つきで睨み付けるように。そして、何も言わず、琉を無視した。琉は嫌な気分になりつつも、席に着こうとした。
ところが、琉の席が机は翼と遥、イスは雅が陣取り、席に座れなかった。この教室は全くと呆れてしまった。琉はいても経ってもいられなくなって、「おい、どいてくれないか?そこは俺の席だよ!」と、遥の肩をトンと軽く叩いた。その瞬間、X組の目線が一気に琉にいき、背筋が凍りつく程の眼差しを琉に浴びせた。「イッターイ。」遥はわざとらしく言って、肩を抑えた。「大丈夫?遥。」桜と楓がすぐに遥の元に寄った。「やばい。骨折したかも~。」と、なんともわざとらしい声を上げた。その言葉に琉は「ハァ?そんな訳ないじゃん。軽く肩を叩いただけだろ?」と、遥の肩を掴んだ。その時桜が「ちょっと気安く触らないでよ!女はデリケートなの!知らないの?」と、琉に怒鳴りつけた。
その言葉に琉はカチンときた。前日の件の事が遭ったから、X組の言動が矛盾していると思えてならなかったからだ。琉は桜に近寄り、「よく分かっているじゃん!じゃあ、やめろよ。革命なんて馬鹿げた事…。」と言った。すると今まで黙っていた架が、「馬鹿げた事…?俺等は能無しのクズを少しでも無くす為、素晴らしい革命を起こしているだけ。残念だけど…君に止められる事は何一つない。」と、淡々と吐き棄てた。雅も笑いながら、「しゃーねーよ。架。コイツも所詮、能無しの馬鹿なんだよ。」と、琉を威嚇した。「馬鹿だと?」と、琉が怒っていた時だった。桜が笑いながら「そうだわ。茜、コイツの未来、予想して。」と、言った。琉は「何言っているんだよ!」と言っても、X組の生徒は聞かない。ケラケラと琉を馬鹿にするかのように、大笑いするだけだ。茜が近寄ってきて、琉の目をジッと見つめながら「彼の未来、そう、それは、暗黙の未来。味方なんて…いやしない。」と、呟いた。
すると遅れてきた帝と環が「そうだろうな。コイツには味方はいない。いるのは敵だけ…。」と、言って入って来た。桜が「あら、二人とも遅かったわね…。何していたのよ?」と聞くが答えなかった。琉は「敵だけ…って?」と聞き返した。帝は笑いながら「アハハハ、明日になったら、分かるさ…。楽しみだね。」と言った。帝は更に「まぁ仮に、君が、我々X組と手を組むって話になれば、別になるよね。」と言った。琉はきっぱりと「断る!俺はお前等みたいな非道な男じゃない!お前等の仲間に誰が入るか!」と言った。帝は「あーあ、最後のチャンスなのに、君、後悔するよ…。」と呟いた。「後悔するのは貴様等の方だ!」と琉は強気になって言った。「明日、楽しみだよ…。」と帝は言い、立ち去った。琉は、自分の行いが決して悪くない。悪いのは奴らだと何度も言い聞かせ、X組との戦いに挑む。
全ては楽しく美しい学校生活を送るために。




