3.X組の素顔
X組の教室を出た琉は、図書室に行き、自主勉強を一人やっていた。
あのいたたまれない不穏な空気、思っていた高校生活と違った事、そしてX組のクラスメートとは、なかなか仲良くなれない悔しさからか、思わず机を思いっきり叩いてしまった。
すると、向かいの机を使っていた女子生徒・竹中真由が、「ちょっと、貴方!うるさいよ。場所考えてよ。」と注意した。琉は「ごめん。」と言いながら下を向いた。「あれ?見ない顔だね!」と、声をかけた。「ああ、今日転校して来たばかりで…。」その割にはテンションが低い。それに異常に取り乱している。そんな姿を見た真由は琉を見て「ねえ、何かあったの?」と聞いて来た。
いう事を躊躇っていた琉だったが、誰かに聞いてもらいたい気持ちもあったので、「実は…。」と話し出そうとした時だった。
『ピリリ。』真由の携帯電話だけでなく、図書室にいた生徒、琉以外の生徒の携帯電話が鳴り出した。「何だ。携帯電話が一斉になり出したぞ!」琉が驚きのあまり大声を出した。
生徒達は脅えながら「X組だー。X組からメールが来たぞ。」と叫び出す。生徒達は脅え出し、図書室から逃げて行った。X組であり、転校生の琉にはそんなメール届かなかった。届く訳がない。今日転校して来たばかりだからだ。
「X組?」琉は驚いた。側にいた真由も急にオドオドし出して、体全身から震えている。琉は真由に「おい、何のメールだ。これは!?教えろ!」と言った。真由はビクつきながら「X組からのメール…。ターゲットにされた人は、X組の教室に連れて行かれ、非情な行為を受ける。メールにターゲットの名前が書かれているわ。」琉は驚き、「何だそれは…ちょっと見せて!」と言って、真由の携帯を取った。
メール文は単調で、題名は無題。ただ一文だけ、ターゲット名『一年B組 出席番号十二番 竹中真由。』と書かれていた。
意味が分からない琉は真由の顔を見て、「コイツ、誰だ?」と聞いた。真由は恐る恐る「それは私の名前よ…。転校生君。だから私を見捨てて貴方も早く逃げて!道連れを食らうわよ!」真由は決心をついているようだった。だが、手はフルフルと震えている。
それを聞いた琉は自分の制服の上着を真由に被せ、二人で図書室の奥へ逃げていった。「何するの?」驚いた真由が声を出し、被せた上着を脱いだ。すると琉は「そんなの無視できるか!これはどういう事だ!そんな事があるなんて知らなかったよ。」琉は真由の手を引っ張り、急いで真由の身の安全を確保しようとした。
その姿を見た真由はコソッと「フフフ…。」と、微笑した。なぜこのタイミングで笑えるのか不思議に思った琉はイラっとしながら「えっ…。何笑っているの?」と問いかけた。。真由はクスッと笑って「アハハ。やっぱり転校生ね!危険を顧みない、彼等の恐ろしさを知らない行動…。でも、貴方気を付けた方がいいよ。威勢のいい転校生君。X組は卑劣な奴等ばかり。貴方一人では対処出来ないもの…。」と言った。
明らかに職員室とは話が違う。みんないい子…。それはどの口が言っているんだ。
琉は「あのさ、そのX組って…。」と、話していた時だった。『ドンドン。』尋常じゃ無いくらいの大きな音がした。
「おーい。いるのは分かっているんだぜ?開けてくれよ、竹中さん。」聞き覚えのある声、翼の声がした。「うわっ最悪…。文月翼だわ。どうしよう。」真由は急に不安な声を出し、泣きじゃくっていた。
そんな姿を見た琉は、X組の『革命』と言う言葉が初めて分かったような気がした。『革命』とは、この学校を変える事?いや違うな…支配する事ではないか?琉は呼吸が荒くなってきた。
ドアを叩く音が次第に大きくなる。真由は不安になり、座り込んでしまった。このままだと、真由は標的にされる。何をされるんだ…。
すると、朝校門前で出会った女子生徒の泣き姿が目に浮かんだ。
彼女が泣いていた原因は、自分じゃない。X組に何かされていたとしたら…。容易に想像がついてしまった。
そうか、X組は…。
その恐ろしく震える真由を見た琉は、ゆっくり近寄り、「ここは二階だ。窓から下に降りたらもしかしたら、助かるかもしれない…。」と、小声で呟いた。それを聞いた真由は驚いた。「何言っているの?貴方、本気なの?」と、怒鳴るような声で言った。琉は「俺は本気だ。それにこのままじゃ、君はそのX組に捕まっちゃう。この下は職員室だ。うまく先生にかくまってもらえばきっと助かるよ!だから早く行け。」真由は涙ながらにコクリと頷き、窓から降りて行こうとした。そして完全に体が中から見えなくなった時だった。『バンッ』勢いよく扉が開く音がした。
琉が振り返ると、翼と環の姿がいた。翼は「あれぇ可笑しいねぇ…。全校舎探したんだ。後はここだけ…。」と、苛立ちを見せながら辺りを見渡した。すると環が琉に目を行き、「ねぇ如月君…。どこやったの?本日のターゲット。」と、問いかけた。琉は近寄ることなく「ターゲット…だと?」と聞き返した。「そうだ。」そう言って現れたのは、帝だった。「なるほど、君の答えはこれか?」帝は聞き出した。
「答えだと?」琉は怒りをあらわにした。帝はカッターナイフを手にし、「やれやれX組で始めてだ。失敗と言う情けない事実。君はどうやら、X組を受け入れることが出来ない人間みたいだね。…フッ、残念だよ。僕は仲良くできると思っていたのにね…。」と残念がるように言った。琉は「失敗?誰も傷ついちゃいない。むしろ成功じゃん!あんた等は何を考えているかはまだピンと来ないけど、今回の事ではっきり分かったよ!それがX組の本性なんだな?」と、怒鳴った。
その言葉に翼は「本性だとぉ?」と取り乱した。思わず手が出そうになる。すると帝はそんな翼の手を押さえつけた。「帝!?」帝は目を閉じてわずかばかりの笑みを浮かべた。「やはり一目見た時から、君は反対すると思っていたけれど…フフフ…。これほどまでとはね…全く君の考え、気に食わないねぇ!」と言って、持っていたカッターナイフで琉の顔を傷つけた。琉は驚いた拍子に尻餅をついた。
そして「分からないようだから覚えておくがいい!君が転校してきたのは革命クラスと言われるX組だ!そんな君はX組からの略奪者だ!邪魔者だ!裏切り者だ!そんな奴は処罰同然なんだ。覚えておくがいい。如月琉!」と言って、翼と環を連れて部屋から出て行った。
一人になった琉は「イッテー…。」と傷ついた顔を触った。血がにじみ出ている。しかし、琉はX組に打ち勝つ為、その怪我を必死でこらえた。
これがX組の本当の姿だったと愕然としながらも…。




