2.クラスメイト
田山の様子が可笑しいと、動揺しつつもドアを開けた琉は、X組の生徒の顔を見た。
窓をずっと眺めている女子生徒。パソコンをひたすらいじっている男子生徒。考えられないくらいの大金を持っている生徒もいた。
そして、教室に鼻が折れるような、男物と女物の混ざり合った香水の香りや、まさかとは思いたいが、煙草やお酒の臭いも混じっている気がした。X組は不良の溜まり場なのか?なぜ自分がこんなクラスの一員にならなくてはならないのだ?疑問が湧いた。
すると、ある男子生徒が琉に気付いた。
その男子生徒は琉に近づき、「君は、転校生かい?」と、優しく声をかけた。黒髪で、優しそうな顔つき。いかにも優等生っぽい青年だ。琉は戸惑っていたが、「うん。如月琉って言うんだ。よろしく。」と、笑顔で言った。
男子生徒だけでなく、クラス全員顔色を変えた。琉にとっては少し引っかかった。「ああ、よろしく、如月君。僕は師走帝…。」と、帝は何事もないように挨拶し、X組の生徒を一人ひとり紹介した。
琉は、一瞬近寄りがたい空気があると思っていたが、帝をはじめ、話してみると案外、雰囲気が良さそうなクラスだと感じた。
「よろしく。…ところで、質問があるのだけれど…。」琉は気になる事を帝に聞く事にした。
帝は腕を組み、机に座り込んで「何だい?」と言った。琉は「ここだけ何で、教室が離れているの?俺はX組なんてあったなんて知らなかったし…。それにこのクラス、担任もいないみたいだし…。大丈夫なの?」と、質問をぶつけた。
すると、帝の隣にいた文月翼が、琉の肩を持ち、ゲラゲラと大声で笑いながら「新人には分かんねってか?なあ、帝?」と、言った。そして帝は何も言わない。すると「よせよ、翼。ビックリしている…。」と、止めに入ったのは水無月環。二人とも見た目がチャラ男っぽくて、特に翼の方はかなり派手目の金髪だ。
「大丈夫だよ。それに恐がっていないし…。それより、俺の質問に答えてよ。」琉は再び質問に答えるように要求した。すると今度は「どうするの、答える気?帝。」と、卯月桜が帝の腕を組んで言った。まばらな茶髪で、色気のある、綺麗な女子高生だ。
帝はしばらく黙っていたが、急に立ち上がって「…知りたいのなら、そうだな…。正午きっかりに分かるよ。まあ、簡単に言えば、僕等X組は、世界を変える事が出来る革命クラス、夢みたいなクラスさ。悪いけど、僕等はまだ君の事、仲間と思っていないんだ。君がこのクラスを気に入れば、勿論、君にもいい役割をあげるよ。そしてはれて、君も僕等X組の仲間入りだね。」そう言うと、立ち去ってしまった。
側にいてずっとパソコンをいらっていて葉月架が、無表情のままこっちを見た。金をいらっていた長月遥と神無月雅はクスクス笑っていた。しかも金は尋常なくらいの札束だった。皐月楓は何かの資料を熱心に目を通していた。チラッと横目で見ると、『生徒会資料』と書かれていた。
琉はさっきまでの安堵感が消え、急に恐くなった。その時、琉の側に霜月茜がやって来た。茜は、琉をジロジロ見ながら、「楽しみね…。今日は特別怒っているから…。如月君、気を付けた方がいいわよ。」と、言って立ち去った。不気味で、近寄れない女だった。
それ以降、クラスメートは琉に話しかける事すらなく、琉がクラスメートに話しかけても、X組の生徒達は無視をした。いや、無視を決行したと言った方がいいだろう。
X組は授業も無く、一体何の為に学校に来ているのかも分からない。琉は居心地の悪い教室で、一人自主勉強をした。だが、この不穏な教室では、集中力が切れ、その場にいる事自体、罪悪感を覚えてしまった琉は溜まらず教室を移動した。
琉がいなくなった後、翼が「あの爺、また転校生なんて連れて来やがって、どういうつもりだ!」と怒りを見せた。雅は「フッ…。最終手段って訳じゃない。爺が言っていた。」と言った。楓が「何してもムダよ…。こっちは世界を制覇するクラスですもんね…。」すると、帝が立ち上がって「爺の考えだ。恐らくあのガキ、何か使えるって事だろ?…まあとりあえず、彼に教えないといけないね…。X組の真の姿を…。もし仮に、X組を気に入れば、盛大に向かい入れてやろう。…まあ、そんな風には見えない、正義感の塊様な男だったけどね…。」そう言って、コップに入っていた紅茶を飲んだ。
着々と悪魔の行為に走っていく。
この時既に、琉がこの行為に気付いていたら、この物語の結末は、変わっていたかもしれない。




