5.本当のX
窃盗に失敗した架達は警察に拘束されていたが、ある男の声により、いとも簡単に解放された。
その瞬間を見ていた琉は大急ぎでボロ倉庫から飛び出し、その男の胸ぐらを掴んだ。
「おい!どういう事だよ!こいつ等は犯罪者だぜ?証拠もあるだろ?何で解放するんだよ?」その男は怒鳴りつけられても動揺の顔一つ見せなかった。
慌てて茜と真由が琉を止めに入った。琉は大西に目がいった。学校であった警部さんだ…。そう思うと余計腹が立つ。
「警部さん…何で逃がすんですか?何で…。」と、涙ながらに言った。大西も天野も口を噤んだまま、話さない。すると、琉に胸ぐらを掴まれた男が、「君は、随分と偉そうな口を叩くな…。」と、ボソッと呟いた。
琉はその男を見た。男は笑っていた。「君、名前は?」男が尋ねた。「…如月琉…。」琉は小さな声で挨拶をした。
すると男は琉の手をパンッと払い除け、「如月君に言っておこう…。君はX組をどうやら止めたいみたいだね?でも、ムリだよ…そんな夢物語。」そう吐き棄てた。その様子に琉は怒った。「ムリじゃないよ!実際、俺は窃盗は止められた!お前が、解放してやるなんて言わなきゃ、X組は三人も消えるはずだったんだ!」だが男は笑う。「…何故、私がX組のアイツ等を解放してやったか分かるか?」
琉は「えっ…?」と、聞き返した。そんなの分かる分かる訳が…。と思っていた時だった。一つの可能性が脳裏をよぎった。
男は笑いながら、「フン、答えは簡単!愚息が頼んだから。」琉はその言葉に疑問が少しずつ確信に変わっていく。「愚息って…、もしかして息子?」茜はハッとした。「まさか、貴方、帝のお父さん?」男はフフッと笑って、「そうだよ…霜月茜さん…。君の事は帝達から聞いている…。どうやらX組を裏切った女だそうじゃないか…。」茜は言葉を詰まらせた。
初めてみる帝の父は、凛としているが、どこか闇のオーラを抱えているように見えた。
琉は「どうでもいい!お前、警視総監だろ?息子を捕まえられねぇんのかよ?」と、怒りが頂点に達しかけていた。「息子の言う事第一だ!かと言って、私は、愚息の愚かな行為に賛成している訳じゃない。君達は信じる、信じないは別として、私の話を聞いてくれ…。」琉は聞く気なんてなかったが、「聞きましょう。」と、茜が言った為少し癪だったが聞く事にした。「X組を止めたいらしいんだね?でもね、X組には影の支配者がいるんだ。」真由は「ひょっとして、睦月皇さんと弥生尊さんの事?」と、聞いた。「違う。」男は言った。琉は「えっ?じゃあ誰なんだよ?」と、聞いた。男は「これは、警察のごく一部しか知らない情報だ。哀れな君達に教えてあげよう。」琉はその言葉に腹を立てたが、何も言わず、黙って聞いていた。「実はね…、大の大人だよ…。大人が絡んでいるんだ。このX組には…、つまり、X組を立ち上げたのは、皇君ではないよ。どこかの馬鹿でガキな大人が立ち上げたんだよ。それ以上の事は、私も詳しくは知らないがね…。」琉達は衝撃が走った。大人が絡んでいる。そんな馬鹿な話があるか!この真実を信じたくなかった。「さて、帰ろう。大西君、天野君、速やかにここを立ち去ろう。…如月君、君みたいな男にもう一度出逢いたいものだ…。私は、警視総監、師走智則!X組のリーダー、帝の父親だよ…。」と、言って智則等警察官は立ち去って行った。
真由はその後、しゃがみ込んだ。「ウソよね…。大人なんて、こんな姑息な真似、大人がする訳ないじゃない!」茜は琉に話しかけた。「如月君、どうしたのよ?いつもみたいに捕まえてやる!て、言わないじゃない?」琉は何も言えなかった。大人が絡んでいる…。こんな姑息な真似をしている大人がいるんだ…。琉は呆れて何も言えなくなった。
やがて、「…この世の中には、くっだらねぇ大人がいるもんだ…。」と、言ってこの場を後にした。




