2.陽介の罠
真由が赤裸々に兄・陽介の真意を話し出す。
「お兄ちゃんは、サッカー部のエース。遠藤先輩はサッカー部のゴールキーパー。二人はとても人気者で、実力もあった。ところが、X組が出来てから、全てを支配されるかのごとく、部活動もままならなくなって、人気も衰えていった。サッカー部のメンバーが徐々にターゲットにされて、処罰を喰らって、辞めていった。そして、遠藤先輩も…。遠藤先輩は霜月さんに『あんたの居場所はここじゃないわ…。サッカーのセンスがあんたにはない。あんたは、犯罪の匂いがする。試しに人を殺してご覧よ。』って言われて辞めたらしいわ。お兄ちゃんは勿論、腹を立てたけど、相手がX組。とてもじゃないけど敵わなかった。…お兄ちゃんは遠藤先輩と連絡を取っていたみたいだけど、ある日を境に取れなくなったみたい。そして、その三日後、遠藤先輩は薬物中毒によって亡くなった。何で、中毒死したのか、その時は分からなかったけど、師走帝が勧めた事実を私達は知ってしまった。その時に、お兄ちゃんは思ったのよ。いつかX組に復讐してやるって…。遠藤先輩を殺したX組を必ず俺が仕留めるってね…。」真由の話は終わった。琉は「じゃあ、陸さんが直接死んだ原因になったX組の生徒は…。」と、真由に聞こうとした。
真由は「ええ…。確かに、霜月さんも原因の一人でしょうけど…。直接的な原因は師走帝のせいよ…。」茜はしゃがみ込んだまま、その場から動かない。「ごめんなさい、霜月さん…。お兄ちゃんはX組に怒りを覚えているわ…。貴方達がX組を打破する為にX組に潜り込んだと言ったって、お兄ちゃんはきっと信用しない。許さないと思うのよ…。」琉は腹が立った。
X組の非道な行為は自然と目に見えていた。しかし、命まで弄ぶ、最悪なクラスだとは思わなかった。
「…。仕方ないな、竹中さん、先輩をココに呼んでくれる?」と、真由に言った。「えっ、今!今お兄ちゃん、部活中だから、きっと抜けられないと思うよ…?」それでも琉は「電話して!」と、真由に言った。茜が涙を拭き、「如月君…何するつもり?」と、琉に問い掛けた。
琉は「陸さんが蘇る事はまずないし、正直に問い詰めてみるよ…。」と、言って真由から電話を受け取った。サッカー部は今丁度休憩に入っていた所だった。「何?琉かよ…。俺が言った条件、出来たか?」信頼していた陽介の印象がみるみる変わる。でも、陽介のせいではない。全ての引き金はX組だ。フッと一拍おいて琉は反論した。「…遠藤陸さんは、二ヶ月前に中毒死していますね?先輩は知っていて俺達を陸さんの家にわざわざ行かせたんですか?」陽介は不気味な笑みをし出す。「だってさ…。お前らもX組だろう?陸を殺した同じクラスの奴等と…仲間になれる訳ないって!」琉はしばらく黙った。陽介は、やはり始めから協力する気ではなかった。陽介は言う。「陸が蘇って、学校に復帰したら、考えてもいいけどよ。」陽介が高く笑う。陽介はまだどこか陸が生き返ると願っている。死んでいないと信じているようだった。
琉は小さな声で、「俺さっき言いましたよね?十日後、X組と対決するって…。残念だけど、陸さんを蘇らせるような力、俺にはないし、死んだ人はもう蘇らないんですよ。俺なら、夢半ばで途絶えた陸さんの怨念が、今X組を襲っていると見ていますがね…。先輩、十日後楽しみにしていて下さい…。俺は、X組の問題児三人を逮捕して見せますよ!」そう言うと、琉は電話を切ってしまった。
ツーツーと空しい終話音だけが、その場に広がった。
そして、「仕方ないな…。先輩は動いてくれないみたいだし、三人でX組と戦うしかない!十日後、『笹倉ジュエリー』の隣、オンボロ倉庫で夜八時にだ!」と、声を上げた。「分かったわ。」と、真由と茜も声を揃える。全てはX組を対峙する為、その為にはなんだってやるんだ。
決意を高らかに上げた若い男女三人は暗い夜道の中別れた。いよいよ直接対決の幕が開かれる。




