6.儚い命
次の日、まだ体に傷が残る琉は、必死に痛みを堪えながら学校に行った。
入って行くと学校の雰囲気が少し変なのに気がついた。そんなに早くない時間帯なのに、誰も来ていないみたいに静かであった。
「可笑しいな…。今日は、休みか?」と、琉は思いつつも、X組の教室に入った。すると、「遅い!」と、帝が言った。琉は「何だよ?別に、遅刻ギリギリの時間ではないし、そもそもお前に言われる筋合いはない!」と、帝に反発した。
その時だった。「ほら持てよ、これ。」と、翼は琉に黒い塊を渡した。その黒い塊の正体は、今後一生手にする事はないだろう…拳銃だった。
琉は「これなんだよ!?」と、琉は大声を出した。桜が「大きな声を出さないで!」と、琉を叱った。帝は、手足を縛られている茜を琉に見せた。茜の様子は怯えている訳でもなく、落ち着いていた。「おい、お前。その拳銃で茜を殺せ!」と、言った。琉は驚きのあまり声が出ない。一体こいつらは何を言っているんだ…。理解に苦しんだ。
帝は「タイムリミットは正午…。つまり、今九時だから、残り三時間…。殺せなかったら、貴様を殺す!」琉は、戸惑った。自分の判断で、自分か茜の命…、今日どちらかが消えてなくなってしまうのか。考えたくなかった。「如月君!」茜が、突然大きな声を出した。「私を殺して!貴方には、任務があるでしょう…。早く、引き金を引いて…。貴方が、私を殺さなければ、貴方も殺されちゃうのよ?」茜にそう言われても、琉は引き金を引く気になんてならない。いや、人を殺す事なんて出来なかった。
琉は固まったまま動かなかった。時が過ぎて、このままの状態に呆れた楓が「ダサッ…。なんもしないで一時間だよ?帝、あんたが殺しちゃいなよ!こんなの時間の無駄だよ?」架も「同感!俺等も暇じゃないんだ!帝、お前が殺せよ!」と、X組の生徒はざわつき始めた。暇を持て余し、この空間に耐えられなくなってしまったのだろう。
帝は、落ち着きの無いX組の生徒に「静かにしろ!これは、皇様の指令だ!」と、大声で言った。琉はピクッとした。聞いた事のある名前…。「皇…そうかX組の黒幕か?」帝は琉に「ああ、お前何故知っている?…フン、まぁいい。別に隠しているわけじゃないからな…。そうだがどうした?」これを命令したのは、X組を取り仕切る男、皇…。睦月皇…。こんな酷い事を考えて、アイツは一体何がしたいんだ…。琉は許せなかった。
だが、時間はあまりにも残酷に過ぎて行く。もう、一時間切っていた。
生徒が一斉に「撃てコール」を叫びだす。琉は目を瞑った。茜も苛立ちを見せて、「私を殺せばいい!早く殺して!」と、叫んだ。すると、何かを決意したような顔をした琉は茜に笑みを見せ、「おい、俺はお前を殺させやしない…。命を預けたと思って目を瞑っていろ!」と、呟いた。茜は、「何…言っているの?ダメよ。貴方が死ぬなんて…。」と、言っていた時だった。
「十、九、八…。」死のカウントダウンが始まった。琉に銃口が向けられる。「七、六、五…。」帝は笑みが毀れた。「四、三、二…」琉は目を開けた。「一…」もう時間がなかった。「零」と言い掛けた、その時だった。「ダーン!」琉は、X組の生徒に向かって乱射し出した。X組の生徒は驚き、慌てふためいた。
「貴様、何する?」帝が琉を止めようとしても、止められない。琉が撃った銃弾は的確にX組に当てて、そして全て急所を外していた。
琉は、茜に近寄って「逃げるぞ!茜!」と、言って、茜の手を持ち、X組の教室から出て行った。琉が茜を完全に信頼した瞬間だった。
琉が乱射されたX組の教室は弾丸の痕が残っていた。「クソッ…。翼、環!追え!今ならまだ間に合うはずだ!」と、帝が大声で言ったが、桜が「ダメよ、二人とも足を負傷しているわ…。ひょっとしたら、アイツ、狙って撃ったのかも…。」と、言って二人の足を診ていた。よく見ると、X組生徒全員の足が負傷し、生徒全員動けなくされていた。
その光景を見た架が、「ハハ…馬鹿言うな…。あんなむちゃくちゃな乱射で、足をわざと狙うなんて…普通の高校生に出来る訳ない…。あんな事が出来るなんてただの神業ではないか…。」と、桜の肩を持った。帝は不気味な笑みを浮かべ、「…アイツにまた…やられた。クソッ!」と言って、床を叩き悔しがった。桜は足を引きずりながら、「…帝。」と、言って帝に近づいた。
琉は儚い命を守る為、命を張って闘い、X組との心理戦に勝った。
琉の逆襲が今、始まろうとしている。




