4.スパイ
少しずつ雲行きが暗くなってきた頃、X組の教室に残った琉は「同じって…、何が?」と、茜に聞き返した。
X組を裏切った茜は鈍感な琉に少し腹を立てた。「意外と鈍感なのね…。分かるでしょう?私は、X組を崩壊する為にこの学校に入った転校生…。つまり、立場的には貴方と同じなの!悪い言い方をすると、私達はスパイなのよ!」その言葉に、琉は驚いた。
自分と同じような人間が、X組にすでに一人いたなんて考えてもいなかった。
茜は話を続けた。「私はね…、貴方を散々止めたのに、全く聞かないもの…。真っ正直で、正義感強いから…。始めはX組の言う事を素直に聞いてればよかったのに…。自分の信念を貫いてガンガン行っちゃうんだから…。だから、私の作戦もグシャグシャになっちゃって…。」深くため息をつく。
それを聞いた琉は「わりぃ…。」と、茜に謝った。思えば、幾度となく茜は琉の前に表れて、止めてくれていた…。少しでも話を聞けばよかったな…。今さらになって後悔する。落ち込んでいる琉を見て、茜はクスっと笑った。「でも、それが貴方らしくって、いいんじゃないの?私は、貴方の強気な姿勢は嫌いじゃないから。」と、近寄りながら言った。
琉は「お前、いつ転校したんだ?」と、茜に聞いた。スパイという事は元々いた生徒ではない。きっと転校生なんだと確信した。
茜は「そうね、貴方が来る三ヶ月前…。X組に転校して来たわ。」と、窓を見上げながら言った。三ヶ月前…茜はこの三ヶ月何していたんだ!そう思うと琉は急に熱くなり、「三ヶ月もあれば、止められるだろ!?何故止めない?」と、言いながら茜の肩を掴んだ。
茜は冷静さを乱す事無く、琉に「如月君…。貴方に足りないのは、理性、落ち着いて考える力ね…。まぁいいわ。実はね、X組はかつて謎に包まれていたクラスなの。私が、転校してきてやっとの思いで、X組の生徒の名前、罪状までも分かったわ。…、こっそりX組の事調べていたんですものね…。」と、笑いながら言った。それを聞いた琉は何も言えず、固まっていた。
だから、真由や陽介にX組の事を聞いても、詳しい事は『分からない』の一点張りだった訳だと。茜は固まっている琉に「貴方に渡したい物があるわ…。」と、言ってポケットの中から、PCファイルを手にした。「これ…何だ?」と、琉は茜に聞いた。「PCファイル…。私が潜入していた三ヶ月の間だけれども、X組の事が細かく記載されているわ。それと、これも貴方にあげる。」と、言って茜は自分の携帯電話を取り出し、何かを書き始めた。
そして、書き終えると琉に渡し、「これは、X組のアドレス…。そして、X組のボス・睦月皇、妹の弥生尊と繋がる唯一の連絡網…。今の貴方には絶対に必要不可欠な物、だから渡すわ…。」茜からその二つを受け取った時、茜の手は冷たく、尋常じゃないくらいに震えていた。きっと、X組の報復に恐れているんだ。そう思えた。
「おい、大丈夫かよ…。」と、琉は茜に言った。茜はその言葉を無視して、「最後に、如月君。貴方はX組を倒すと決めたからには、自分の命を捨てる覚悟で行かないとダメ!X組を救えるのは、最早、貴方しかいないんだから…。」琉は戸惑いを隠せず、つい「待てよ!何で俺だよ?」と、茜に聞き返した。
茜は下を向きながら「どうやら、まだ。自分の能力に気がついていないみたいだけど…。そのうち気付くわよ…。神から授かった天才的な能力を…。」と、言って茜はX組の教室を出て行った。「…天才的な能力…?」この時の琉にはピンと来なかった。
しかし、この天才的な能力で、X組いや、世界を変える事が出来るなんて、予想にもしていなかった。




