5 出発
5 出発
リナと荷物を運んでいると、カーゴの移動先で大きな音がしだした。
いつの間にか防炎シートが天井から吊り下げられており、音や光が届きにくくなっているのに、音がデカイ……
そして大きな音がする度に、僕は頭を抱えたくなる…
カーゴ返す時に僕だけが怒られている姿が脳裏に浮かぶ。
交渉もそうだったけど、上から怒られそうなとき、このメンバーは絶妙に逃げ足が速い(苦笑)
「エイド、早く終わらせて向こう見に行きましょう?」
リナは心配よりも好奇心が勝っているようだ。
「リナさん?
見に行きたいのは山々ですが、向こうよりもこちらのほうが重要です。
リストを確認しながら積込みをしていきましょう!」
そうなのだ、ここの積込みを失敗するわけには絶対にいかない……
でも、向こうが気になって仕方なかった。
……
………
「エイド、こっちは切りが良いから昼にしないか?」
グラントがこちらに来ていた。
顔にはうっすら煤がついており、作業着には真新しい錆止めがついている。
時計を見ると昼少し前、早飯をした方がお店も空いているだろうし、良いだろう。
「いいんじゃないか、リナも良いよね?」
「ちゃんと揃ってるわ、あとはグラントの工具のスペースね……」
リナはリストを見て頷きながらコンテナから出て来た。
「あれ……ノアは?」
見回すとコンテナの影に隠れるようにしていたノアが諦めたように姿を見せた。
「エイドさん……
僕は止めましたからね……」
わかってはいたけど恐ろしいことを言ってくれる。
「みんな、とりあえずお昼にしよう!」
近くの定食屋で昼飯を済ますと、僕はグラントの改造とノアの不穏な発言が気になるものの、午後から予定していた、地上の支援スタッフとの打ち合わせに向かった。
……
………
僕は支援スタッフとの打ち合わせを終え倉庫に戻った。
そこで分かったことは……
なんと、斜行エレベーターの修理が間に合ったということだった。
テラ様は並行して使えるものは使う方向で動いてくれていたようだ。
しかし、『間に合いませんでした。』では僕たちの落胆が酷くなることを考慮してくれて黙っていたようだ。
外は少しだけ暑さが緩み、夕方の心地よい風が吹いている。
倉庫のシャッターは閉められているが、まだ少し音が漏れている。
まだ作業してるのか?
シャッター横の扉を開けると、ちょうどコンテナを積み込もうとしているところだった…………
「なっっっ…………」
僕は言葉を失った。
あの美しかった真っ赤なスッキリした円筒形の外観が……
見るも無惨にゴテゴテと鉄骨や鉄板が溶接され、ところ狭しと資材がラッシングベルトで固定されている。
原型を留めているのはコックピットとシャーシ、切り離しできるコンテナだけだ……
「僕は止めましたからね……」
昼に聞いたセリフをノアが呪文のように繰り返す。
「あぁ、エイド
ちょうど今終わったところだ!」
グラントの作業着がずいぶん汚れている。
「これで積載問題も解決だ」
「ちょっと、グラント大丈夫かよこれ……」
僕は目眩を感じ目頭を押さえた。
「あぁ、そうなんだよ、
予想外に防護壁の装甲板が薄くてな、軽くてちょっと焦ったけど、フレームは弄ってないから強度は問題ない。
外した物と載せるものは重量も同じにしてバランスも問題ないぞ!」
グラントは得意顔だ。
ノアは少しビクビクしている
リナは……ダメだこの人絶対に楽しんでる。
「そうじゃない……
グラントこいつはミッションをこなすための借り物だぞ」
「そうだな、だからこそだ。
ミッションの成功率を上げるための最大限の努力は惜しまないさ。」
僕はもう何も言うことはできなかった。
「エイド……これ飲む?」
リナから水と胃薬を渡された。
「悩もうが怒ろうがもう元には戻らないわよ?
なら、前に進みましょう?
ね!」
……
………
翌日の早朝、僕たちはカーゴに乗り込んでいた。
『今から出発すればお昼過ぎには現地に到着予定です。』
カーゴのエンジンを始動すると早速テラがモニターに映り込んできた。
「……おはようございますテラ様
なぜこのタイミングで?」
僕はテラ様に報告無しで出発しようと考えていた。
報告したら、絶対に改造したことの報告を入れなければならない……
隠し通せる気は無いけど、少しでも進んでからの報告にしたかった……
「……あの、テラ様。
一点ご報告がございます。
カーゴですが成功率を上げるための軽微な改造を行いました。」
『……あの改造を軽微な改造というかについては議論の余地があります。』
「ご存じでしたか……」
『昨日の防犯カメラを通して確認しています』
「勝手に改造してしまい申し訳ありませんでした」
『問題ありません…
こちらでも重量計算、バランス計算等行いましたが、強度、積載量共に問題はありません』
「ではなぜ?」
『あなたが悩んでいるようでしたから。
このままでは成功率が低くなる予想が出ています。
大丈夫です。ここからは私がサポートして進めます。
昨日、備品の積み込みが終了していることは把握しています。
人の準備さえ良ければこのまま出発します。』
僕らは、テラに背中を押されるように倉庫を後にした。
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