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招待状―ガイアを求めて―  作者: 川口のミネ


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4/24

4 始動

4 始動

 僕たちは大きな倉庫の前に集まっていた。

 集合時間はまだ一時間も先だ。 

  それなのに全員揃っている。

 ……目的は言うまでもない。

  みんなカーゴが見たいのだ。

 僕もそうだから気持ちはわかる。

 僕は警備会社に連絡し、予定より1時間早いが遠隔でシャッターを開けてもらった。

 普段はほとんど使われていないのだろう。

 シャッターは軽く軋みながらゆっくりと開き、朝の光が倉庫の奥へ差し込んでいく。

 赤いホイールの8輪のタイヤが……

 格納された真っ赤なアームが……

 赤い車体が……

 …………真っ赤だと!?

「これ誰も突っ込まなかったの?」

「いいじゃない!

 私は好きよ!

 こういうの特別感あるじゃない?」

 リナは知ってて黙ってたな……

「そうですよエイドさん!

 工作重機とは違うんですから

 これくらい派手な方が」

 ノアのやつ完全にノリだな?

「グラントは何とも思わなかったの?」

「ん?色か?

 色なんて何でもよくないか?」

 聞いた僕が愚かでした……

 早速ノアがドアを開けようとしているが……

 車高も高ければ車床も高い……

 背の低いノアではドアまで手が届かない。

「ノア、説明書読んでたんだろ?」

 グラントは近づくとタイヤの上部の蓋を開けてスイッチを押した。

 丸みを帯びた車体がゆっくりと下り、ドアまでのタラップが降りてきた。

 さすがはグラント!

 ちゃんと押さえる所は押さえている!

「知ってたよ!

 ちょっと早く見たかっただけ!」

 ドアを勢いよく開けて姿が見えなくなった。

 みんなもノアに続く…

「おぉ~すげ~!!」

 ノアがはしゃいでいる。

 タラップを登ると叫びたくなる気持ちがよくわかる。

 上からノアの声がする。

「すげ~見晴らしいい!

 前と横が全部見えるよ!」

「あまり騒ぐな!

 前面は半球体のガラスだから下まで声が響く……」

 早速グラントは半地下状のマニピュレータ席に降りてきたらしい。

 操縦席と助手席の間にある狭い通路から大きな体が出てきた。

「エイド、マニピュレータの座席もっといいのにならなかったのか?

 あれじゃ長時間は座れないな……」

「いや、あそこでの作業って長時間する作業じゃないだろ?」

「うわーちゃんとしたトイレと簡易シャワーまでついてるじゃん!キッチンまで付いてたら完璧だったのに〜」

 後部座席の間にある扉からリナが出てきた。

「エイド、後に荷室に行ける扉あるよ!」

 僕は引っ張られるように貨物室へと連れられていった。

「エイド、後に行くならそのまま貨物室降ろすからコレつけろ」

 グラントからヘッドセットを渡され装着すると、耳元からグラントの声が聞こえてきた。

『切離しは確認しながら行うから復唱忘れるなよ?』

「わかってるって!

 リナ、早速切離しのテストするから本体に戻るか掴まるかして?」

 僕は貨物室の操作盤の前に立つと脇にあるポールのベルトで体を固定した。

 リナは壁にあるグリップを掴んでいる。

 どうやらここで見学するようだ。

『貨物室内の飛散物確認は良いか?』

「OK!」

『カーゴ、アウトリガー展開!』

「…………」

『復唱は?』

「貨物室に関係なくても復唱するの?」

『当たり前だ!

 安全のための手順をお互いに確認する意味合いが強いんだ』

「分かった。

 カーゴ、アウトリガー展開」

 モニターに【アウトリガー作動中】と表示され、貨物室に作動音が低く響く。 

 少しの振動と共に数センチ持ち上がったようだ。

【アウトリガー作動中】から

【アウトリガー展開中】に替わった。

 グラントの声が聞こえてくる 

『アウトリガー確認!

 貨物室、安全装置手動解除』

「アウトリガー確認

 貨物室、安全装置手動解除します。」

 僕は操作盤の横にあるレバーを下ろす。

「貨物室、安全装置手動解除!」

『カーゴ内からの安全装置解除信号を受信!

 カーゴの切離しを行う、傾斜に備えろ』

「切離し了解。

 傾斜に備えます。」

 僕はリナに目で合図する。

 楽しそうに目を輝かせグリップを持つ手に力が入ったのが分かった。

 僕はベルトがちゃんと締まっている事を確認する。

 カタン!

 何かが噛み合った音が聞こえると、貨物室内の照明が赤くなった。

 静かに前方が上がり始める。

 傾斜がドンドン強くなる。

 カコン!

 静かな音と共に僅かな振動と不思議な浮遊感が……貨物室が動いてあるのが微かにわかる。

 ズッ……ズッ……ズン!

 接地の大きな音と振動と共に室内の照明が通常の光に戻りモニターには接地完了の文字が出て来た。

『貨物室切離し完了!こちらでは異常は確認できないが、そちらはどうだ?』

「こちらも警告灯はついてないよ

切離し完了だ!」

『じゃあ1度このまま資材の積み込み始めるか?』

「そうだねノアにも伝えて降りてきてください。」

 僕はベルトを外しリナと貨物室を出た。

 外見は真っ赤なコンテナそのものだ。

 一応、前方に自走出来る機能は付いているけど、基本的にはウインチで上げ下げするので使わない予定だ。

 カーゴを見るとコンテナを下ろした車両には丸みを帯びた防護壁が残っていた。

 横から見ると、全体を包むような円筒形のシルエットは変わっていない。

 本来ならマットグリーンやカーキ色に塗装され威圧感を放つ軍用車両だったはずだ。

 しかし、真っ赤な外装と相まって、今は玩具にしか見えない。

 逆にその親しみやすい外見が、これから挑むミッションの緊張感を少しだけ和らげてくれているようだった。

「この壁って何のためにあるのかしらね?」

 リナが疑問を口にする。

「おそらく火器や弾薬、燃料なんかを輸送するときの誘爆防止だな。

 砲弾飛び交う戦場を走るならともかく、今回はただの飾りだ」

 降りてきたグラントが考察を語ってくれた。

 カーゴは後ろのコンテナがはいるところだけ、ポッカリと口を空けていた。

「エイド!

 リナと積込みをお願いしていいか?

 俺は向こうの方でノアとコイツを少しいじってくる。」

「良いけど、何するんだ?」

「あそこに室内クレーンがついてるから利用してもう少し荷物を積めるようにしようかと思ってね

 まぁ楽しみにしててよ。」

 グラントがこういう顔をしている時は何か良からぬ事が起きるものだ……

「グラント……ほどほどにな

 ノア頼むぞ!」

「えぇ~……

 絶対に僕じゃグラントさんを止められませんって。」

 ノアとグラントはカーゴを操縦して倉庫の奥へと行ってしまった。

 僕はリナと共に貨物室を開けると資材を運び始めた。

 僕は改めてカーゴを見上げた。 赤い巨体は、これから向かう場所で僕たちを守ってくれる唯一の存在になる。

……そう思うと、少しだけ不安より期待が勝った。


お読みいただきありがとうございます

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