23 操縦
23 操縦
カーゴは揺れながら坂道を登っていく。
所々に照明がある。
行きは、ライトの光だけで来たことを考えると雲泥の差だ。
いくつ目かのカーブを曲がった所で、カーゴが急停車した。
停まった反動でカーゴが大きくゆれた。
動く気配がない。
「ノア、どうした?」
「エイドさん……前方に落石です…かなり大きいです。」
次のカーブとの間に、石と呼ぶには大きすぎる、人の背丈ほどもある岩塊が道を塞いでいた。
「通れない……な」
僕は思考が止まってしまった。
ここから徒歩?
何の装備もなく数時間下ってきた道を登るなんて現実的ではない……
どうする?
アイデアは一向に出てこない。
「みんな!
アレ使えない?
ほら、腕!
マニュピレーター使えない?」
リナが大きな声で提案した。
「そうか、その手があったか!
ノア腕の届くところまで進んでくれ!」
グラントが席を立ち上がるとマニュピレーターの操作席へと降りて行った。
カコン!
おそらくロックが外れたのだろう、次の瞬間静かにモーター音が唸り始める。
前面のガラスに下から赤い丸太のような太い腕が現れてきた。
眼前の岩を左右から掴むと、モーター音が大きくなって……
カーゴが突然前方に傾いた!
「ノア?」
「僕じゃありません」
「グラントか……
どうした?」
「岩を持ち上げようとしたら……
カーゴが負けた。
車体が軽すぎるんだ……」
グラントの声が小さくなった。
「グラントさん車体が持ち上がらない程度まで上げれますか?
カーゴごとバックして引きずってみます。」
「わかった。」
車体が数度、浮き上がりかけたが、バランスを見つけたのか揺れが収まった。
「ノア!
いつでも良いぞ、慎重にな!
エイド、リナ無駄かも知れんができるだけ後に下がって何かに捕まっててくれ」
僕とリナはコンテナに繋がっていた扉を開けて狭い通路に入った。
ゴ……ゴガゴリゴゴ……ゴゴ……
引けている。
ノアの操縦で、岩塊はゆっくりではあるが、少しずつ壁際に押しやられていった。
「これ以上は僕の腕では無理ですね……」
ノアが悔しそうに岩塊を見つめている。
眼前にはギリギリカーゴが通れるか分からない隙間が開いている。
「僕らで誘導しようか?」
「ダメです。操縦席からは見えません。
センサーだけが頼りなんです。」
僕とリナが誘導しようかと提案したが、どうやら無理らしい。
「行ってみます。」
カーゴがゆっくりと前進……
岩塊と壁が迫ってくる。
ピピッピピッピピッピピッ
ビーーー
警告音と共にカーゴは停まってしまった。
この先はもっと狭い……
マニュピレーターを使い岩塊を押してみたが、やはりカーゴの方が動いてしまう。
「センサーはカーゴ周囲100mmの余裕を見て停止してしまいます……
センサー類を切って行ってもいいですか?」
ノアが震える声で提案してきた。
「ノア
ハマったらマニュピレーターで俺がなんとかしてやる!」
グラントが声を掛ける。
「ダメだったら歩けば良いんだし、いいんじゃない?」
リナが後押しする。
2人ともノアの提案に賛成のようだ。
「ノア
センサー類を一時停止、有視界で間を抜けてくれ。」
僕はあえて命令として発令した。
失敗した場合は判断した僕の責任……
ノアの気持ちを少しでも軽くしてやりたかった。
ビーーープッ
耳障りだった警告音がやんだ。
「いきます……」
ノアの声は小さい。
静かに車体が動き出した。
ガザッッッ
左の車体を擦った音で車速が落ちた。
「擦っただけだ!
気にするな!」
グラントが声を掛ける。
左下を擦ったようだが、右側もギリギリだ……
ガリ……ガリガリ
右上からも音がした。
今度は車速は落ちない。
ノアも腹をくくったのかゆっくりと前進を続けていく。
ガリン!
前面のガラスにヒビが入った。
車速は変わらない……
ガガッッッゴゴッッッザザ……
車体のあちこちから擦る音が聞こえる。
車速は落ちない。
ノアはもう迷わなかった。
「よし!
1番狭い所は抜けました!」
しかし依然として車速は上がらない。
完全に岩の横を抜けた所で、1度停車してカーゴの破損状況を確認しようとしたが、グラントに止められた。
「もし、修理が必要でも、応急処置すらできない。
1度停まったら、動かなくなるまである。
いけるようならこのまま行くべきだ。」
『警告、警告
センサー接続異常を感知しました、センサーの設置状況を確認してください。』
ノアがセンサーを復旧すると警告音と共にアナウンスが流れた。
「すいません。
センサー壊しちゃいました。」
「センサー類は1番外側に有るからな……
でもノア、安心しろ動力系や燃料タンク周辺からは異音を感じなかった。
おそらく走行には支障ないはずだ。」
グラントはあの音でどこに被害が出てるかを判断していたらしい。
「わかった!
ノア
センサー類をカット
有視界で走行してくれ!
なに、お前ならできるさ!
頼む」
僕はノアに全員の命を託した。
カーゴは車体を軋ませながら速度を上げて斜路を登っていった。
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