20 決断
20 決断
『エイド、一つ提案があります。』
ガイアが静かに語りだした。
『この作戦は、安全性の面から判断は委ねます。』
ガイアは沈黙した。
「ガイア……
それだけでは判断できない。
概要を話してくれ。」
『はい。
現在、第3坑道内の圧力が数ヶ月前から高まりはじめ、計測器の上限を超えるほど高まっています。
単独の計測器なら故障の可能性がありますが、複数カ所のモニタリングで同じ数値が出ている為、内部の圧力が異常なほど高まっている事は間違いないと考察します。』
「えっ?
じゃあガスが供給され続けてるってこと?
ヤバくないですか」
ノアの声が裏返った。
『はい、おそらく火山性ガスの噴出が流れ込んでいると考えられ、ここも隔壁が破壊された場合非常に危険です。』
ガイアが僕たちの理解が進むように、一拍置いてくれた。
『圧力を第3坑道からガイアへ至る搬送ルートを通して地上へ放出します。
尾根の反対側にある都市には、折からの季節風が追い風となり、火山性ガスを比較的安全に海へ向けて拡散することができます。
但し、ガスを放出したからと言って噴火を抑え込める訳ではありません。
噴火した場合、尾根の反対側、都市側に噴火口が開く公算が高く。
都市部に火山弾、噴石、火砕流、場合によっては、マグマの流出が都市部近郊で起きかねません。
この作戦が成功しても、噴火を数日から1カ月程度遅らせる効果しかないでしょう。
住民の速やかな避難が必要と思われます。
この作戦による山火事等の被害は否定できませんが、都市部が被災した場合の人的被害と比較すれば、最小限に留められるでしょう。』
説明が一段落したのか、ガイアが黙り込んだ。
「ガイア
それでも何かあるんだろ……
何を隠している?」
グラントがモニターを厳しい顔で睨んでいる。
何か隠している?
僕には違和感がわからなかった。
「隠している?何を?」
リナは僕と同じ意見のようだ。
『グラントさん
申し訳ありません。
隠しているつもりではなかったのですが……
この作戦は非常に大きな危険を冒すことになります。』
「くどい、前置きはいい
俺たちに何をやらせたいんだ?」
グラントの声が若干大きくなった。
「グラントさんガイアをいじめないであげてくださいよ。」
ノアはガイアに同情的だ。
『……エイド
断っても構いません。
ひょっとしたら何か重大な見落としがあり、状況が変わるかもしれません。』
ガイアは1度話を止めた。
「ガイア
概要は分かった。
気遣いも理解した。
でも、グラントの言うように、具体的な我々の作戦行動が見えない。
これでは判断も何もできないよ。
決断は僕がする。
何をして欲しいんだ?」
『……わかりました。
エイド、あなた方には第3坑道入口ゲートに赴いていただき、ゲートのある壁の左右に6カ所、穿孔型爆薬をセットしてきていただきたいです。
ゲートは非常閉鎖用の為、厚さ30mmの鋼板二枚の間に、500mmの対腐食仕様高耐久コンクリートを打設した複合構造です。
通常の開け方では対処できません。
ゲートの取り付け部と固定している岩盤の間にヒビを入れることで内圧を利用して押し倒します』
ゲートと呼ばれる巨大な壁が倒れてくる絵が頭に浮かんだ。
『ゲートの強度が計算通りなら、このやり方でこじ開ける事が可能だと判断します。』
グラントがガイアの言葉を遮った
「待ってくれ、それだと爆破した瞬間ゲートが倒れてきて、俺たちは吹き飛ばされるか高濃度の火山性ガスに巻き込まれるってことか?
俺たちに死ねと?」
僕の顔は凍りついた。
『いえ……皆さんにやっていただきたいのは爆薬のセットと、私への通信接続です。
その後は、退避していただき、爆破は私の方で行います。』
「退避?どこまで?」
僕は単純に疑問点が口からこぼれ出た。
『セット後、確認のため1度ここに戻っていただきたいです。
最終確認後、地上へと避難していただきます。』
僕は、とっさに答えることができなかった。
「ガイア、少しみんなと話をさせてくれるか?」
『当然です。
このまま避難していただいても大丈夫です。』
ガイアの言葉に寂しさを感じた。
……
「みんなどうする?」
「僕は……正直怖いけど。
今、逃げ出した結果何万人もの人が被災して苦しむのを見て、あの時……って背負って生きれるほど強くは無さそうです。」
ノアは力なく答えてくれた。
「判断としてはエイドに従う。
まぁ、やるとなれば、やれるものは全力を尽くす。」
グラントはいつも頼もしい。
「リナはどう?」
「私はエイドが決めたことなら素直に従うわ。
私の判断は
『エイドの選んだことは限りなく正解に近い!』
って判断」
リナの思考はやっぱりよく分からない……
自分の命に関わることも僕にまるっと投げてきた。
相談はしたものの、既に結論は出ている。
「……
ガイア
作戦を受領する。」
知らない都市の何万人もの人よりも、僕の判断一つで失われてしまうかもしれない仲間の命……
後戻りできない恐怖を必死に抑え込んでいた。
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