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招待状―ガイアを求めて―  作者: 川口のミネ


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17 結晶

17 結晶

 斜行エレベーターが動き始めた。

 最初はゆっくりだったが、途中で1段ギヤが上がったのか、近くを見ると次々と踊り場が流れては消えてゆく……

「早い早い!」

 だれよりもリナが嬉しそうだ。

「階段使わなくていいの快適!」

 みんなこの階段を登らなくてはいけないと思っていただけに、このスピードは本当に嬉しい。

 全員の顔が緩んでいる。

「なぁ、ノア!

 さっきのログだとガイアは熱崩壊まではしてないんだよな?」

 僕はノアに確認する。

「熱崩壊って言うとちょっと違うと思います。」

 ノアは、困り顔で語り始めた。

「熱暴走しかけてガイア自身が緊急停止した。

 その後も予熱で温度が上がっていってたけど、しばらくして安定……

 多分冷えれば大丈夫だと思うんだ。

 ただ、古いから……

 壊れていても不思議はないです。

 正直、現時点では分からないことが多いですよ。」

 僕たちは動くステージ上で流れる空気を感じながら静かに座り込んでいた。

 斜行エレベーターは、ものの30分で地底湖までたどり着いた。

 基本的に資材搬入用の斜行エレベーターだ、スピードはそんなに出ている訳ではない。

 でもあの暗闇の中、60キロもの荷物を背負い息絶え絶えだった半日がかりの行軍……

 なんだか少し悲しかった。

「こんなに速いならガイアを助けるのも簡単かもね!」

 リナは持ち前の明るさに磨きがかかっている。

 やはり、周りが暗いよりも照明がついている方が気分も明るくなる。

 リナはその効果が顕著に出ているようだ。

 ステージが減速を始めた。

 横には薄暗く扉が開いている部屋が見える。

 熱暴走の先入観があるせいか、中が熱気で揺らいでいるように見えた。

「エイドさん

 今のところがサーバールームですよね……」

 ノアも違和感を感じたのかもしれない。

「そうだな、あそこがガイアの心臓部だな。」

 古い施設とは思えないほど滑らかにステージが地底湖階に到着した。

 何やら蒸し暑い……

「やな予感がしますね

 とりあえずシャッター開けましょう」

 ノアが少し忙しなく動いている。

「グラント、シャッターを開けるフォローをしてやってくれ。

 シャッターが開いたら、ここで待機。

 勝手に行動しないように。

 リナ、1度カーゴの様子を見に行こう」

「エイド、念のためサーモ取ってきてくれ」

 グラントの指示がとんできた。

「分かった。」

 僕は収納場所を聞き、全員が行動に移った。

 扉を開け、地底湖に出ると空気が湿っぽいが涼しい。

 そして、そこには幻想的な湖畔にカーゴが佇んでいた。

 発電施設が復旧したおかげで投光器が輝き、不気味だった地底湖が鏡のように景色を映し込んでいる。

「来た時はそこまで感じなかったけど、綺麗ね……怖いけど」

 リナはカーゴに歩きながら、僕の方へと少し寄ってきた。

 地下の暗闇の中へ降りていったり、死の湖の湖畔に来たり……少しリナはメンタル的にきつくなってるのかもしれない。

 ギャギャギギギググ…

 大きな音と共にシャッターが開きはじめた。

 少し離れているのに空気が動いている気がする。

 僕たちはカーゴからテラとの交信を試みた。

「やっぱり反応ないわね……」

 リナの声が沈んでいる。

「リナ、大丈夫か?」

 ふぅ~

 リナが大きくため息をついた。

「大丈夫も何も、終わらないと帰れないじゃない?

 早くお風呂に入りたいのよね〜

 頑張りましょう!」

 リナが少しだけ元気に振る舞った。

 疲れているのは間違いない。

 でも、こういう時のリナに僕はいつも助けられている。

 ただ、限界が近いのも意識しておかないといけないな……

「水だけ持って戻ろう!」

 僕たちは人数分の水を取るとステージへ戻った。

 解放されたシャッターからはちょっとした風を感じる。

「グラントこれがサーモか?」

 僕は実物をグラントに手渡した。

「一応、熱関係だからな。

 準備して損はないさ!」

 僕たちは階段をくだり始めた。

 前回ここを通った時、辺りは真っ暗闇の中、ライトに照らされた足元だけを見つめながら背負子を背負い汗にまみれ歩いていた。

 今回は、照明に照らされた階段。

 先が見えるだけでもずいぶん気は楽だし、目的地も近い。

 が、近づくにつれ頬をなでる風が熱を帯びていて、最初の時とは違う汗をかきはじめていた。

 サーバールームが暑い……

 いや、熱い……

 グラントがサーモグラフィを使って確認している。

「サーバールームは50度超えてるな。

 周りのものに絶対に触るなよ、簡単に火傷するぞ。」

 グラントはサーモの画面を見ながら進んでいく。

「まずいな、ラック全体は真っ赤だこりゃ90度〜100度はあるぞ……」

 グラントが汗を拭う。

「そんな、扉開けといたのに?」

 ノアが悲しそうな顔をしている。

「あの白いの?配管がある……

 このサーバー水冷だ!

 どこだ、どこに繋がる?」

 グラントがサーモ越しに配管を追いかける……

「エイド、あれだ!

 あの配管追っかけるぞ!」

 その配管は見覚えがある。階段を降りる時に常に頭上高くに通っていた配管だ。

「あれが冷却水の配管だ。

 冷えない原因が分かればきっと対処できるさ」

 グラントの声はまるで自分に言い聞かせているようだった。

 僕たちは今降りてきた階段を今度は見上げながら登っていった。

 斜行エレベーターのシャッター脇に2本の配管が地底湖まで続く、その先は……

「そんな、これは塩の結晶?」

湖の砂浜ならぬ塩浜に高さ2m以上はある塩の山……

「これ、クーリングタワーだったのか……」

 グラントが呟きながら塩の山を触った。

 近づくだけでも熱が伝わってくる。

「これ、どうするの……」

 ノアが少し途方にくれている。

「そうだな、配管の結晶をある程度落せば冷却効率は大幅に回復するだろうけど……

 問題はどうやって剥がすかだな……」

 

 

 

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