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招待状―ガイアを求めて―  作者: 川口のミネ


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15/25

15 地力

15 地力

 ――地熱発電施設――

 明るくなった本部を調べると、『発電制御室』と書かれた部屋が見つかった。

「壁にあるのは見取り図か?

 そうすると、横に出てる赤ランプは警報だな」

 グラントが考えながら指を差して確認している。

 壁は少しの緑ランプと多数の赤ランプで彩られていた。

「僕はこう言うのちょっと苦手ですね」

 ノアが僕の方を見てきたが、僕だって詳しくはわからない。

 でも、一緒に考えるのは大事なことだ。

「諦めない!

 詳しいのはグラントだけかもだけど、話のなかにヒントが隠れてたり、別の視点が正解にたどり着くことだってあるでしょ?」

 リナは僕が言わなきゃいけないことを代弁してくれた。 

「設備の多くは斜行エレベーターを利用してるのか。」

 グラントは壁を見つめたまま、楽しそうな表情をしている。

「このフロアに発電タービン上部と補給水槽、給水装置。

 厄介そうなのは全部この階に纏ってるなんて、設計した奴は相当賢いぞ。」

 グラントが僕をみてきた。

「悪い。専門的なことはグラントに任せる。」

「ここに出ている信号が本当かどうか、ログを見て調べてもらいたいんだ。

 ノア、できそうか?」

 ノアが制御室の端にある席に座るとキーボードを叩き始めた。

「ガイアとは繋がってないし、AIも入ってないけど、ログくらいなら見られそうだよ。」

「エラーを重点的に洗ってくれ。

 原因の川上がどこか知りたい。」

 グラントがノアに注文を付けた。

 数分の間、ノアの指先だけが素早く動いていた。

「……1番の上流は、最下層の蒸発槽の水位?

 いや、蒸発槽への給水装置ですかね。

 電動弁の『開』指令信号は出てますが、開いてるってチェックバックが来てないです。」

 グラントがどこからか紙の図面を見つけて引っ張り出してきていた。

「エイド、少し手伝ってくれ。

 ノアはログの解析を引き続き頼む!

 リナは……」

「はいはい『リナは伝令係。たまに客観的な意見も頼む』って言いたいんでしょ?」

「すまん。

 いつも助かる。

 エイド、これでいいか?」

「あぁ、技術的な事はグラントが一番詳しいからな!

 みんな指示に従ってくれ。」 

 僕とグラントは工具を載せた背負子を背負い斜行エレベーター横の建物に向かった。

 暗い施設に入りダメ元で電気をつけると、数カ所の電気が付いた。

 「まずは問題のバルブを見てみよう。」

 部屋の奥へ、次の扉を開けた。

 グラントは壁に貼られた古びた標語を見上げた。

「『「できない」と言うのは難しい。

 できる可能性のすべてを否定しなければならない。

「できる」と言うのは簡単だ。

 一つの方法を見つければいい。

諦めるな。

 それが技術屋だ。』

 ……

 ……いい言葉だ。」

 グラントは見上げながら読み上げていた。

「なんだかグラントのことみたいだな。」

 僕は感想を口走ると、グラントは照れたように頷く。

「そうだな、技術屋たるもの常にそうありたいとは思うよ。

 難しいけどな。

 さぁ、俺達の一つの方法を探しに行こう。」

 僕たちは標語を見上げながら先に進んでいった。

 部屋の奥には巨大な水槽の横に大きな電動弁とバイパスが組まれているのが見えた。

 しかし、グラントはそこに向かうのではなく壁の端へと歩いていく。

「グラント?

 あれじゃないのか?」 

 僕は指を指すとグラントの顔を見た。

「あれだよ、でも先ずは現地の制御盤を確認しないとな。

 電気的な故障か確認してから現物だ。

 テスターを用意してくれるか?」

 軽い背負子は一人でも簡単に降ろせる。

 テスターを用意していると、制御盤を端からチェックしていたグラントが、セレクタースイッチをゆっくりと回した……

 しばらく待つも何の変化もない。

 グラントの手がテスターで端子を数カ所当たり。

 また、しばらく悩んだ顔をしていた。

「エイド、やっぱり実物見に行こう」

「電動弁アクチュエータが怪しいな。

 1度バラして手動でバルブが開くかやってみるぞ。」

 グラントは道具箱を持ちながら電動弁へと近づいた。

 流水音がする。

 パイプのなかを水が流れている音なのは僕でも分かった。

 アクチュエータのバラしを始めようとして……グラントが固まった。

「エイド?

 なんか変だ。」

 目線の先には一回り小さなバルブがあり、『常時閉』の札がかかっている。

 札の横に目立つ黄色い通信筒がかけられている

「通信筒?」

 なかの紙をグラントは取り出した。

「……後は頼んだ。か」

 グラントが黙り込んでいる。

「グラントどうした?

 何が書いてある?」

「……」

 返事のないグラントから僕はメモを受け取った。

 グラントの手は小さく震えていた。

「『緊急退去となった。

 念のためバイパスのバルブを少しだけ開けていく。

 すまん。

 後は頼んだ。』

 これがどうかしたのか?」

「……昔の技術屋は、本当にすげぇな」

 グラントの声は僅かに震えていた。

 アクチュエータをバラす作業をしながら、落ち着いたグラントが先人の残したメモの意味を語ってくれた。

「おそらくここにいた技術屋はこの電動弁が壊れることを予見していたんだ。」

 グラントはバラしてるアクチュエータを軽く叩く。

「このモーターバルブは『緊急遮断弁』ってタイプなんだ。故障すると、中のバネの力で自動的に閉じるようになっている。」

 先ほどとは打ってかわりグラントは饒舌に語ってくれている。

「昔の技術屋は、閉じたままになってしまうことを予見し。

 バイパスのバルブを少しだけ開けとく事で、最低限の電力を確保……

 彼らは『ガイア』を守ったんだ。

 昔の技術屋ってさ……

 凄くないか?」

 語りながらもグラントの手は止まることなくカバーを外してしまった。

「エイド、テスター取ってくれ!」

 このタイミングでテスター?

 予想をしてなかった僕は、慌てて制御盤の前まで取りに戻った。

 ……グラント

 あんな短いメモから、そこまで読み取れる君も十分に凄いと僕は思うよ……

 テスターを取ると僕は急いでグラントの元に戻った。

 扉の開く音がした。

 リナが来ていた。

「ここにいた。

 エイド、お昼過ぎてるけどどうする?」

 リナの手には僕たちの分のレーションと水が握られていた。

「グラントー昼めしどうする〜?」

 グラントは時計を見る。

「すまん。 

 ちょっと切りが悪いから、後でもらうよ。

 先に食べててくれ」

 また始まったか……

 僕はリナと顔を合わせた。

「ひょっとしたらノアも?」

「そうね、この二人は作業が始まると自分のことは後回しになるの。

 置いてくから必ず食べさせてね。」

「そう言えば、ノアの方はどうだ?」

「まだ何とも……

 ノアお得意の解析も限られた条件下じゃあ大変そう。

 さっき甘い物食べたいって言いながら塩タブ食べてたわ。

 一応、取り上げたけどね」

「そうか、とりあえず何かあったら連絡を頼む、こっちも目処が付いたら知らせに行くよ。」

 ……

「……よし、コレで通電テストしてみよう!

 エイド、その増設したブレーカーを入れてくれ!

 ヤバそうなら直ぐに落とすから手は掛けたままで頼む!」

僕はブレーカーに手を掛けた。

「電源投入!」

「電源投入!」

 グラントが復唱するのを一瞬待ちブレーカーを押し上げる。

 小さなモーター音が聞こえてくる。

「……さぁ動け!」

 グラントはバルブの小さな覗き窓とバルブの軸を忙しく交互に見ている。

「……モータ動作正常……

 ……バックラッシュ……ちょっと大きすぎたか?……

 動け、動け……

 動け!」

 荷重がかかったのかモーターの音が鈍くなった。

 低く唸っていたが、やがて少し軽い音にかわり……

「よし!」

 グラントが右手を大きく上げた。

 シュィィィィィ〜ン

 緊急遮断弁がバネの力で閉じてしまった。

 僕は慌ててブレーカーを落としてしまい、開きかけた緊急遮断弁が閉じてしまったのだ。

「悪い!

 驚いて落としちゃった。

 ごめん」

 一瞬にして原因がわかる……

 今のはグラントが喜び手を上げた。

 その瞬間に驚いて反射的にブレーカーを落としてしまった。

「エイド、悪いのは俺だ!

 でも、間髪入れずブレーカーを落とす判断は正解で、むしろありがたいんだ。

 折角だからちょっと遊びの調整する。

 また声かけるから待っててくれ。

 よろしく頼む。」

 ……

 補給水槽の水位が下がっていく。

 修理はほどなくして終わり、電動弁は大きな流水音と共に正常に動き出した。

 僕たちは工具を片付け、ノアとリナの待つ部屋へと戻って行った。

 

 

 

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