13 階段
13 階段
改めて装備の確認をした。
一人につき3日分の食料と水。加えて工具、ライト、予備バッテリー。
水だけでも相当な重量になる。全員分を合わせれば240キロを軽く超えていた。
それらを4人で分担すると、一人あたり約60キロ。
人ひとりを背負っているのと変わらない重さだった。
しかも下層までは、まだ高低差約500メートル。
ここまで下ってきたのと同じ距離を、今度はすべて階段で進まなければならない。
そして、階段は10m毎にクランクした踊り場があり、50m毎に大きなステージ状態の踊り場があることになっていた。
「みんな聞いてください。
ここから高低差で50m降りると、サーバールームがあるはずです。
まずはそこまで降ります。」
「エイド、隊列はどうします?」
僕が指示し忘れることをすかさずリナがフォローしてくれる。
「そうだな……
途中で入れ替えるけどまず。
先行はノア
次にリナ
僕が3人目で
殿はグラントでどう?」
「殿がグラントで大丈夫?
荷物一番重そうだけど」
リナが心配している。
「そうだね、だから元気なうちは殿で、疲れてきたらグラントを先頭に回そう、その時はリナか僕が殿で行こうと思う。」
僕はノアに顔を向ける。
「ノアわかってると思うけど、ペースはゆっくりで構わない。
手摺や階段は信用しきらないように、少しでも怪しいと思ったら、必ず声を掛けることを徹底してくれ!」
「大丈夫です……
この中で一番体力ない自信があるから、迷惑かけないペースを守るよ!」
「よし、他に何かあるかい?」
「エイド良いかな?」
グラントが控えめに手を挙げてきた。
「ライトだが先頭と殿だけでリナとエイドは省電力モードか消灯してバッテリーの消費を抑えられないか?
下で電力がなかったら……
発電機は持っていけないから3日も持たない……」
「そうだな、電力は極力抑えよう。
リナと僕は消灯して進んでみよう。
危険を感じたら安全を優先、そこで改めて考えよう」
「エイドすまない。
簡易運搬バギーか何か積んでくれば……」
グラントが謝ってきたが僕は途中で止めた。
「ないものを悔やんだらここに出てくるのかい?
誰も気が付かなかったんだから気にしない!
今は進もう!」
僕たちはまずサーバールームを目指し歩き始めた。
階段を降りる足音が微かに反響して……すぐに闇に吸い込まれていく。
一歩一歩、歩みを進める。
階段を降りるたびに背負子の重みがずしりと肩にのしかかってくる。
僕は腰ベルトをきつく締め直した。
少しだけ肩の重さが軽減された気がする。
背中にぴたりと付く背負子はじっとりと汗で濡れ始めていた。
かなりスローペースとはなったが、確実に下へと降りて行った。
事前の情報通り小さな踊り場を数個過ぎると大きな踊り場に出た。
踊り場にはサーバールームの入口がある……
まだ全体の1/10も進んでいないのに息はかなり上がっている。
「グラント、ノアの背負子を降ろしてやってくれ。
リナ、背負子降ろすからこっちに来てくれ……」
まずは体力に不安のある2人の背負子を下ろす。
下ろすのは一人だと重くて危ない、場合によってはひっくり返ったり、腰を痛める……
背負う時もまた二人がかりだ……
交互に背負子を下ろす……
疲れてくるととにかく降ろしたい、2人で重荷を下ろす……意外とこれがちゃんと出来ない。
サーバールームの扉は目の前だが、ここで小休止をとる。
扉を開けたい気持ちは山々だが、結局開けてしまえば中を見たくなるし調べてみたくもなる。
結果全然休めないのだ。
だからあえて扉は開けず水分補給を促す。
少しでも荷が軽くなるようにノアとリナの荷物から水を消費していく。
「ノア!
ガブ飲みしたい気持ちは分かるけど、少しずつゆっくり噛むように飲むって教わったでしょ?」
すかさずリナに見つかって注意されていたが……
危なく僕が先にガブ飲みするところだった。
グラントは、頭から水をかぶっていた。
久しぶりの強行軍はさすがにみんなこたえてる。
「水分補給はしっかりな!
ここで10分小休止したらサーバールームを調べる。」
僕は言うと両足を投げ出し呼吸を整えた。
……
「扉は簡単に開きそう?」
ノアがグラントの横で待機している。
必要な物を取るつもりのようだ。
ドアノブが……いや、扉全体が熱を帯びている。
「熱で扉が膨張して競ってるな……」
扉がかなり変形し、ドア枠と扉が擦れているらしい、簡単には開かないようだ……
が、少し動いているので引っ張れば開きそうでもある……
「ノア、悪いけど油差しとバールを取ってくれ!」
そういいながらもグラントは力ずくで扉を引いてゆく……
グラントが体全体を使いながら引くと5mm……10mmと徐々に開いてはいく……
中からモアっとした熱気が溢れてきた。
ノアから油差しとバールを手渡されると、ドアの擦れているところに油を差す。
「油を回すために1度閉めるぞ」
ガァーン……
大きな音が闇に飲まれていく……
グラントは体当たりでせっかく数十mm開けた扉を1度閉めてしまった。
グラントが再度ノブを引っ張るとさっきと同じぐらいのところまで一気に開く……
その後、油を差しながらバールで抉りながら何とか人が入れるぐらいの隙間を確保して、ノアとグラントが入っていく。
僕とリナはサポートで外にいるが……正直ファンの音で室内の二人の会話は聞こえてこない……
え?ファン生きてるのか?
……
グラントとノアが汗だくで出て来た。
「たくさん並んだラックでは小さなライトの点滅が確認できました。
この熱量からして一応サーバーは生きてます。」
ノアが汗だくで話し出す。
「ただ、ここには接続する端末が全然ないので、データをピックアップするには、やっぱり最下層のAI『ガイア』のところまで行く必要がありそうですね」
テラから言われていてみんな分かってはいたが、少しだけ期待していたのも事実だった。
「電源は完全には喪失していないようだ。
でも圧倒的に電力が足りてない……
どこかでブレーカーが落ちてるかもしれないな……」
グラントは別の視点から報告を上げてくれた。
「あの、やっぱりサーバールームでこの暑さはちょっと……
扉開けときませんか?
少しでも熱が逃げるかもしれません」
ノアの提案で、僕たちはサーバールームの扉を開放した。
まぁ、扉が歪んで閉めるのが大変だったというのも大きな要因ではあるけど。
ノアとグラントの回復を待って、僕らは下層へと歩き出した。
会話は減っていった。
数時間後……
脚は鉛のように重い。
何度休憩を繰り返したのかもわからない……
僕たちはやっと下層の扉の前にたどり着いた……
背負子を降ろすと、全員が崩れ落ちた。
「すっ…水分補……給だ…けは、忘れる…なよ」
誰も返事をしない。
それでも全員、水筒だけは震える手で口へ運んでいた。
僕の声は掠れ、全員息も絶え絶えだった。
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