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招待状―ガイアを求めて―  作者: 川口のミネ


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12/24

12 空気

12 空気

 カーゴ内は思いの外快適になっていた。

 貨物室の扉が開いている。

 中からノアが出てきた。

 水筒を人数分持っている。

「エイドさん起きました?

 はい!お水です。」

 渡されたのがペットボトルではなく水筒だ……

「これ、後ろの清水器で作った水ですよ」

 リナが僕に話しかけてきた。

「あれは緊急時のみかと思ってたよ」

「ある意味昨日の夜は緊急時でした……」

 リナは少し得意そうだ。

「カーゴの中がすごい湿気で、このままだと色々と不具合が出そうだったから、ひょっとしたらって湿度取ってくれるかもって起動したんです。

 大成功ですよね〜」

 リナが嬉しそうに話している。

「でも、リナさん指示して寝ちゃったじゃないですか」

 リナの表情が変わったことに気がついていない。

「設置して動かすのに結構時間かかっ…………

 たけど、さすがリナの指示でした。」

 不満顔でノアが喋るとリナの顔が険しいことに気が付きノアの勢いが止まる。

 そんなにリナって怖いのかな?

「リナ、ノア!2人ともありがとう!」

 僕たちはカーゴの中で朝食のレーションを食べると、カーゴを下層へ降りるエレベーターのある付近まで進めることとした。

 もちろん塩の浜からは充分な距離をとってある。

 カーゴの前面のガラスは湿気でびっしょりと濡れていた。

「あそこに見えるのがそうですかね?」

 ノアは向きを微調整し、洞窟の壁面沿いに建つ無機質なシャッターの正面にカーゴを止めた。

 デザイン性のかけらもないのっぺりとしたシャッターは1枚1枚の板が大きく、引いて見て初めてシャッターだと分かる。

 シャッターの右横からは、直径50センチはありそうな配管が何本も出ており湖近くの塩の山に伸びていた。

 反対側にはシャッターと同素材と思われる扉が締まっていた。

 僕たちはカーゴから降りる。

 扉の横についている端末にテラから聞いているセキュリティコードを入力……出来ない……

 反応しない。

「電源が来てないか……さすがに壊れてるな」

 僕は扉の持ち手を引き……押し……スライド……

 扉はピクリも動かない……

 開かない……

 テラの資料からこの奥に下層に降りる通路があることはわかっている……

 グラントが操作盤をチェックしながら辺りを確認したものの修理は難しいみたいだ。

「グラント、開けられるか?」

「綺麗に開けるのは難しいかもしれないな……」

 僕はグラントに普通に聞いたのだが、返ってきた答えは、予想外だった。

「「綺麗に」じゃなければすぐに開けられるのか?」

「ん?

 復旧できるように開けなくていいのか?

 壊すだけなら簡単だぞ?」

 先人が作った物を壊すことに抵抗がないわけでは無い……

 が、こんなところで時間を費やすのは惜しい……

 元々、放置されていた施設だ、今更だろう……

 僕はグラントに壊して構わない事を伝えた。

 グラントがカーゴの側面から工具箱を取り出し背負子(しょいこ)を背負って戻ってきた。

 背負子にはライトがついていた。

 手には少し大きめのグラインダーを持っている。

「こんなの持ってきたの?」

「ん?

 小型のもちゃんと積んで来たぞ?」

「いや、小型だけでよかったんじゃないかって思ってさ」

「あぁ、そういうことか、確かにこいつはちょっと使いにくいからな、俺以外使わせないから大丈夫だろ?」

 ギュゥゥゥュュン

 グラントは一瞬だけスイッチを押して回転を音と振動、目で確認。

 完全に職人モードだ。

 こういう時のグラントの顔は好きだ。

 グラントは扉と向き合った。

 ゴーグルを装着……

「エイド、もう少し離れてくれ」

 高速で回転する工具と金属が削れていく切断音……

 そして熱せられた金属の飛び散る火花、金属の溶ける臭いが静寂に包まれていたこの世界を一気に塗り替えて行った。

 ……

 ゴン!コン、コン…

 シュッシュ〜

 ガッッガァッッッ

 シュ〜

 ……

 グラントが扉を開けてくれた。

 壊して構わないと伝えたにも関わらず。

 おそらくここにロックがあると思われる上部とノブ周辺を切断。

 そしてグラントは、なぜか開ける時に曲がった鉄板と、切断面の錆止めを塗り。

 ヒンジの注油を行い、開閉状況の確認……そして工具の手入れまで行っていた。

「グラント?

 そろそろ準備してくれ……」

「あぁすまない……もう少しで終わる」

 工具の手入れが重要なのはわかるのだが少し急ぎたかった。

 グラントが開けてくれた扉、中は部屋になっており、先にも扉はあったがこちらはスムーズに開いてくれた。

 内部を確認した。

 地底湖のまとわりつく湿った空気は、扉一枚で消えた。

 代わりに漂ってきたのは、微かな機械油の匂い。

 機械の匂い。

 ……いや。

 人が働いていた匂いだ。

 斜行エレベーターの前に出た。

 シャッターが開き、斜行エレベーターが使えれば下までカーゴで一発だった。

 が、下層に降りるための斜行エレベーターは電源喪失したからだろうか動く気配は一切ない……

 奥には光の届かない斜路が口をあけている。

 上と同じ構造のようでステージの隣には、同程度の広さを持つ空間があり、金属のレールが敷かれている。

 その向こうにはメンテナンス用だろうか、階段状の通路が目に入って来た。

 アレを降りるしかないだろう。

 カーゴ周辺ではノアとリナが背負子の準備をしてくれている。

 基本的には重いのは水……荷物の大半を占めていた。

 グラントは今度は背負子の前に工具を並べていた。

 厳選して最下層へ持っていくようだった。

「グラント、僕も少し持つよ!」

 僕はグラントの背中に声を掛けた。


 

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