第98話 灯
ラグーンは兵士の死体の物や、そこらに落ちるあらゆる使えそうなものを拾いながら戦場を駆け回っていた。
一方で塹壕内でベッツはすぐに立ち上がると壁に寄りかかるように陰へと隠れる。
....油断はできないですね....ここは陰なので[影移動]はできませんが追撃は余裕で可能です....今にも来ておかしくはない。思考しろ....
ベッツはその瞬間、すぐに塹壕内を走り進む。
今ようやく....違和感に気付きました.....!一度も手榴弾を出す魔法使いを見ていない....!
ディアやラグーンが戦闘した2人の能力は1人は道具系、もう1人は正確な能力はわからないが対応から強化系の可能性が高いです.....なぜなら手榴弾を使う能力なのに一度も使っていないのはおかしいからです.....
車両を停めた際に喰らいそうになった爆撃の際はあらゆる位置に手榴弾が置かれていた以上、あそこは危険地帯なため手榴弾の魔法使いがいる可能性は低いです....煙の裏に隠れているとしても流れ弾が当たる可能性もあるため、バースがディア達と戦闘をした時点で守ることはできないため、土煙の中に居るとは思えない。そもそもテルロの音弾で煙はかき消されて隠れるのは不可能。
そして[影移動]でエウレカがその魔法使いを入れた可能性だがそれはあり得ない...何故ならその方法は使えるならそもそも車を使う必要はなく、土煙を出すのを続けて影で最初から4人移動すればよかったからです。
そうなると安全になる地帯はむしろ塹壕内....!
位置は車両が突撃した地点近くの塹壕、つまりこの塹壕に隠れてる可能性が高い....!
「ラグーン!エウレカをどうにかしてほしいです! 影移動は光源によりできる黒い像しかおそらく移動ができない!」
ベッツはそう叫ぶとラグーンの返事が上から来る。
「ああ了解! 任せたまえ!」
その言葉を聞いてベッツは細心の注意を払いながら走るのであった。
エウレカはそれを聞いた瞬間に追いかけるのをやめると即座に土煙まで向かい、影から出ると即座に中にいるガーランドの耳打ちする。
「一級者ラグーンの行動を制限。ガーランドは射撃しバースは防御を」
エウレカの言葉を聞き2人は首を縦に振り、エウレカはすぐに土煙から飛び出すとまたすぐに影に入ると思考し始める。
ラグーンはライターと酒を使っていた。あの収納能力からしておそらくやるとしたら影を消すために火を撒く.....私では止められない。ラグーンの持ち物が読めない以上はとにかくガーランドたちが妨害してる最中にベッツを止めないと。[空榴弾]は結局ただの手榴弾な以上接近戦じゃ勝ち目が薄い。そもそも位置がバレた時点で他兵士からの一斉掃射で倒されかねない...!私が先に止めて見せる.....
ラグーンはライターとオイルを取り出すとオイルを撒きながら走り始める。
ああ、実にファンタスティックな魔法だよ。ベッツの閃光弾は短絡的な方法である上、陰に隠れるなら意味がないと見た時は思っていたがその制約なら納得できる。確かにベッツの手札では閃光弾一発に賭けるしかないだろうね?だが僕は違う。少しドライな方法だが許したまえよ。
ラグーンはライターをつけるとその瞬間、塹壕を含めた辺り一帯が燃え上がる。それは兵士の死体もそうで、周りは驚きつつも戦闘を続ける。
単純な話だが影を作らなければいいんだろう? 地面の小石や凹み程度の影なら入れないと読もう。兵士たちの影を伝って移動するなりして近づかれれば勝ち目はなかったがそれはしなかったからだ。つまりある程度の影の大きさは必須と読める。
太陽も随分と登ってきた。このまま土煙の周りも全て火をかけてエウレカの逃げ場を奪う! 炎が周りにある以上エウレカは警戒しなくてもいい、むしろ———
土煙からラグーンに向く拳銃が見えた瞬間、ラグーンは[収納帽子]から即座に大量のトランプカードを空中に撒くように投げると同時に叫ぶ。
「ディアとメロは2人の牽制を!」
「了解です....!」「了解ッ!」
土煙から出た瞬間、カードが舞っていることでガーランドは[天眼]での一瞬反応が遅れる。
カード...そうか、それなら影ができない、カードだから地面に落ちても...見えない....いや、撃つしかない.....!
少し迷うも、引き金を引くと銃弾はラグーンの腕を擦り、それと同時に側方から衝撃を受けて2人は大きく飛ばされる。
「ぐッ———!?」
固くなるなら多分攻撃は通せないッ!けど思いっきり殴れば流石に飛ぶよね! 土煙と布で周囲は見にくいはずだし!
メロは大鎌を逆さにして殴りつけていた。殺傷力は少ないが鈍器としては十分な威力。さらに外側から来る衝撃は予測してなければ耐えれないだろう。
だがバースは飛ばされながらもすぐに[硬布]を布にすると、布にかかってた慣性が一気に流され、すぐにまた布で2人は身体を覆うようにしてラグーンの妨害に向かう。
再度土煙から[硬布]を被るのが見え、ディアは銃を構え、メロは大鎌を振るう。この打撃はまた命中し、バースは一瞬よろめくが、2度目の打撃は耐えられる。
メロはさらに一撃与えようと再度振りかぶるも、その瞬間、別方向の土煙からガーランドが飛び出す。
そちらも一緒、布で見えないのは....バースを囮にラグーンを撃つ...!
ガーランドはラグーンを捉えると、[天眼]で体感時間で慎重に銃を構えると、ラグーンに射撃する。
ラグーンはそれを見て即座にトランプカードをばら撒こうとするも間に合わず、トランプは空中に散るものの———
「ぐ.....ぁ.......!!」
トランプはまるで血を表現するかのように散り、ラグーンの心臓部に銃弾は命中し、ラグーンはその瞬間、地面にうつ伏せに倒れる。
「ラグーンさん....!!!」
ディアはその一瞬の出来事に衝撃を受け声を荒げるが、ガーランドはその隙を逃さずディアに銃を撃つ。
服に[強膜]が貼ってあったことでディアは銃弾自体は致命傷にはならないものの、その銃弾の衝撃で転んでしまう。
「こっちだ!カプティブ!」
メロに対してバースは[硬布]をまっすぐ棒状に開き、硬化させることでスティックのような武器にして振りかぶる。
メロは大鎌で防御動作を取ろうとするが、その瞬間、バースは[硬布]を軟化させ放り投げ、メロの視界を塞いだ瞬間に蹴りをぶつけ、メロは大きく吹っ飛ぶのであった。




