第96話 乱戦
ベッツはその瞬間、地面に刺した鎖を刃へと変換する。
鎖が薄くなったことで地面から容易に抜けたことでベッツは車両に引っ張られるように引きずられながらも跳ぶ。
「全員退避!地面に大量の手榴弾!」
そしてその瞬間、一気に[空榴弾]は爆発し、兵士たちは一気に吹き飛ばされる。
なんとか緊急脱出には成功したもののこれは賭けに近かったですね...なぜなら車両に爆発物が乗せられていて炎上する可能性もなくはなかった。さらにいえば逃げた先に爆発物はないとも限らなかった.....状況を把握しろ。手榴弾を大量に同時に起爆するとしてもピンを抜く音はまるで聞こえなかった。そもそも同時爆破を狙うにしても時間を同時にするなんてあり得ない、それなら一つの巨大な爆弾でいいのだから。そうなるとおそらく魔法の類....手榴弾を起爆する能力....?いや制御系の工夫であれば例えば念動力や発火などの方法で起動した可能性だってあり得る....
ベッツがそのように思考してる間にもディアはポーチから、カードのような大量の紙切れを手に取っていた。
「カードかい? 物質に強化膜を貼ると聞いたけど」
「....そうです。回転率の高い武器なので....」
ディアはそう言ってカードに[強膜]をすぐ貼り付けていく。
刃物の原理は薄くあること。つまり紙はものすごく薄い。[強膜]さえ貼ってしまえば携帯しやすく量産も簡単な飛び道具として使用ができるのだ。
その瞬間、バースが突然現れるとディア達に襲いかかる。それを見たディアは即座にカードを投げるがそれは[硬布]が盾のように当たった瞬間弾き返す。
「な....!」
「さあ! 接近戦で勝負しようぜ!」
バースはそう勢いよく言いながら突撃するが、ラグーンは酒を[収納帽子]から取り出すと口に含み、ライターを取り出すと、勢いよく炎を口から吹き出す。
それを見たバースは一瞬、脚が止まりそうになるも、そのまま突撃し、[硬布]を布へと戻しはたき進む。
へえ?形は正方形で、大きさは大体一辺4m辺りはあるかな。硬化した布を即座に柔らかく戻してはたき進むとは敵ながら随分とエレガントだね?でもそれって逆にいえば、硬い布だと燃える、もしくは防御しきれないってことだよね。つまり大きさを変えたりなどではなく性質を変えるだけ。そう捉えていいわけだ。
ラグーンはそう思考すると拳銃を即座にバースに放つ。
バースはそれに気づいたのか布を即座に硬化させて後方へと跳ぶ。
流石に仕留めきれなかった! あっちの女の能力はおそらく物質硬化能力。もう1人のキザな男は能力はまだ不明ではあるが、問題はない。炎の操作を警戒したがそれもないとなればおそらくだが直接戦闘のタイプではないと見た!だが警戒は怠らない。正々堂々勝負したいけどそういうわけにもいかない!
その瞬間、土煙の中からガーランドが現れる。ディアは即座にカードを投げるも、ガーランドはそれを易々と避けながら走り、次の瞬間、拳銃を構えて二発射撃する。
一発はディアの胸部、もう一発はラグーンの腹部に命中しそうになるも、ラグーンは[収納帽子]の穴部分を向けるようにして防御する。
ディアの胸部に当たった銃弾は、服に最初から[強膜]を貼っていたことで防御し弾いた。ガーランドはそれを見て思考する。
おそらく物質の強化、もしくはバースと同じく変性能力、この少女は.....銃弾が当たる挙動を観察したが、服自体が弾き返していたから.....
「マジか!能力それか!」
バースは思わずそう口にする。
[収納帽子]で敵の弾を収納しちゃえば無限の防御にはなるんだけどねえ、でも今ので完全にバレたみたいだ。クールにいかないものだね。しかし見えた。この戦闘は階級者を潰すことが目的ではなく、並の兵士の排除による数の減少狙い。つまりあっちの爆破が本命でこっちは時間稼ぎに過ぎないってことね。接近戦をわざわざ仕掛けた理由もわかる。そうすれば周りの兵士は味方を撃てないからってわけね。
そういうことか!帽子にただ収納してたわけじゃなくそれ自体が能力の一種!帽子でわざわざ防御したのを見るにあの帽子は四次元空間があるか、もしくは転移の役割があるのかもしれない!全方位から銃弾が来ないか警戒する必要はあるのか!まあでもこの男の近くで戦闘すれば当たる可能性は低い!だって自分が当たる位置に転移するなら意味がない!
バースはそのまま布を硬化させつつラグーンに接近する。いくら一級者といえどカプティブ相手の接近戦は分が悪すぎる。
ラグーンは[収納帽子]から大きな布を取り出すとそれをバースに向かって投げる。
視界を一瞬塞がれたことでバースは防御をしようと布を硬化するが、その一瞬の隙でラグーンはライターをバースに投げながら塹壕へと入り隠れる。
ライターの火はラグーンの投げた布に引火し勢いよく燃え上がるが、バースはすぐに布を振り払い、回避する。だが時間は稼ぐことに成功した。
一方でディアはガーランドにカードを投げるも全てを避けられていた。
「く.....っ!!」
容易.....[天眼]なら銃弾も認識できるくらい動体視力が上がる。でも投擲武器は遅い、銃弾と比べれば遥かに....
そう考えた次の瞬間、ディアが同じくカードを投げる動作をしたその瞬間、大量の紙が舞い散る。
簡単な話、当たらないので[強膜]せず全て投げることで一瞬視界を封じた。ディアでは能力の看破は不可能に近い。だから今彼女にできるのは、成功するかわからないが、一番可能性が高い行動に賭けて動くことのみ。
そしてそれは非常に効果的であった。ガーランドの視界では紙が落下するまでの時間が長すぎる。隙を突かれたその一瞬もあり、ディアはわずかに距離を取ることに成功し、それを見た兵士たちはこの機を逃さず一斉に二級者2人に銃口を向け発射する。
「ガーランド!こっちだ!」
バースはそう言って彼のところまで走ると布で自分ごと覆うようにして布を硬化させて全方位への防御壁を展開しながら走り出す。
[硬布]は銃弾を防ぎ、彼らは土煙の中へと消えていくのであった。




