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灰と魔法の荒廃戦  作者: 山田浩輔
第一局
95/100

第95話 立ち上がる煙

 階級者達はベッツ、ラグーンを先頭に地上へ続く坂を登っていた。その中でラグーンは横を並走するベッツに声をかける。


 「ベッツ君! どうやら一級者のエウレカらしいよ、確か[影移動]だったかな?」

 ラグーンはニヤリと笑いながらそう言うとベッツは答える。


 「まだ直接会っていない以上適当なことは言えませんが疑問はありますね...! 影を移動できるのであればむしろ夜に攻撃を仕掛けるのがいいはずです。しかしそれをしなかった。おそらくそこに制約があるんじゃないでしょうか!」

 「ああそうかもね? 例えば境界線の把握が必要とか光源のコントラストに基準があるとかね!」

 「そうですね....みなさん!そろそろ地上に出ます、戦闘準備を!」


 走る先の光は大きくなり始め、ベッツは皆に忠告するように言うと皆は外に出る。



 地上に出た瞬間、空気が一変した。それは土煙と火薬の臭いで、巨大に立ち上がった煙が目に入る。

 しかしそのすぐ手前でテルロや他兵士が武器を警戒して構え膠着してるのを見てメロが飛び出す。

 「今行くッ!」

 

 兵士たちは影から既に離れており、最初の丘からは既に後退していた。車両は姿が見えないもののおそらく近付いているはずだ。


 「そうだね? ラントは遊撃のカウンターのために待機を、ディアは僕の援護をお願いするよ?ベッツ君は正面戦闘を頼むよ」

 

 ラグーンがそう言うとベッツはメロを追いかけるように向かい、そして状況についてテルロ聞く。

 「状況はどうなってますか」

 「あんた一級者の....ああそうよ、そこの兵士は見ての通りナイフでの奇襲、あの土煙の影で移動したんだね、なんとか音弾で土煙を飛ばそうと必死なんだぜ」

 「.....あの土煙は遠投による爆破ですか」

 ベッツがそう指差したのはエウレカが最初に現れ爆破した地点であった。それを聞くとテルロは首を横の振る。

 「いんや....あれは最初の爆破の煙で移動したんだよ、手榴弾を大量に抱えて爆破した」

 

 それを聞いた瞬間、ベッツは思考し始める。

 

 エウレカの後退はおそらく影がないからでしょうが、いやそれより問題はそこじゃないですね。彼女は装備を持ったままであった。それも抱えてたってなるとおそらく強化系による移動ではないでしょう.... おそらく制御系....つまり彼女の移動はある程度の道具も運べるのは確定——





 「全員固まらず分散! 爆撃が来る!!」

 そうベッツが叫んだその瞬間、影の一番先頭からエウレカが現れるとロープのついた麻袋をデルタ兵士たちに向かって投げる。



 少し遅い、状況判断に時間かかりすぎ。やっぱりあの衝撃弾を飛ばす子は三級....情報共有が遅すぎるし。

 麻袋につけたのは生成した大量の[空榴弾]、これで一網打尽、そう思うよね?


 エウレカはそう思考しつつすぐに影の中へと沈むと影の中を移動して一気に退却を始める。


 


 これはまずいですね.....判断が遅れた。最適解は即座に状況に気づき後方へと固まったまま移動することであった。しかしエウレカの爆破について聞く間に、[影移動]による接近を許してしまった。この状況での分散は爆破後の煙で戦場が影に呑まれ、エウレカの優位な地形が生まれてしまう......どうにか援護を私がするしかない....奇襲による銃撃を受けたら終わる.....!

 ベッツは[刃鎖]を構え全方位を警戒する中で、麻袋は大爆発を起こし、何人かの兵士が吹き飛ばされ、辺りは土煙で影ができる。




 「全員影を警戒するんだ!」

 

 ベッツはそう言うがその時、耳に入るエンジン音を聞き、鎖の先端を刃にして地面へ投げ刺すと即座に走り出す。


 ベッツの目の前に現れたのは、最初に視認した車両であった。

 

 そう来ますよね、ずっと警戒していました。この分散した状況と爆発音に土煙による視認性の低下、車両が突撃するなら今であると....!しかしそれは同時にチャンスでもあります......[刃鎖]でタイヤを巻き込ませ地面に先端を刺し、刃から鎖に変形して杭のように地面に固定すれば、車両を拘束できる....!そうすれば敵は機動力を失う....ベストは転ばせて車両事故を狙う....!!



 その瞬間、ベッツは鎖を引きピンと張ると、タイヤは鎖を巻き込み始め、その瞬間、その巻き込んだ鎖部分のみを刃に変換し、タイヤは切り刻まれ穴が空く。


 車両は大きくバランスを崩し側方へ転倒する。


 だがその時、コンと軽い金属音が足元から聞こえる。


 それは手榴弾。いや、正確には生成した[空榴弾]であった。











 車両突撃は囮だよ...アクセル部分を固定してても土煙のせいで車両に乗ってるかを確認するのは困難だから。


 今回の奇襲の編成は[影移動]を使う私と、シグマ国の二級者で空気から手榴弾を生成する[空榴弾]を持つリンク。そして動体視力を極限まで上げる魔法[天眼]を持つ二級者のガーランド、最後にカプティブで剛柔自在に変化が可能な道具系魔法[硬布]を持つ二級者バース。



 この作戦ではガーランドが運転をして奇襲の回避と即座の状況把握を行い、太陽を背にした[空榴弾]の爆破による土煙で影をつくり[空榴弾]を抱えて私が先行。


 敵は接近による土煙で私に警戒し車両への注意分散させつつ、奇襲で時間を稼ぐことで、デルタ側を警戒させ移動を制限、その間に私は即座にリンク達の元に戻り[空榴弾]を再度用意、固まっていれば一網打尽、一斉に分散すれば味方への誤射リスクが高まり車両への射撃リスクは大きく下がる。


 分散されたことで車両突撃が可能になるも警戒はされる。だからカプティブのバースがリンクとガーランドを抱えて脱出することでほぼ無傷でデルタに接近できるってわけ。

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