第92話 シグマ特定班
地面に這い蹲り、耳に地面を当てる緑髪でジト目の少女がいた。彼女は息を吐きゆっくり立ち上がると、前方を指差す。
「あそことあそこの先にデビルワームがいる。一回迂回しよっか」
そう少女ノーンが言うとサイド車両に乗り込み、皆はそれについていく形で迂回を始める。
シグマ特定班
この班は全員が階級者であり、一般兵はいない。現在でも場所が不明のシグマ国を特定する班である。未開の地も含めて大きく移動する必要があるため少数精鋭で生存や特定に特化した階級者で固めてある。
三級者ノーン、所持魔法は[超感覚]
ロメスと違い空間構築把握能力はないため、視界がない状態で問題なく戦闘ができるといった特技はないが、聴覚過敏なためソナーマンとして怪物の回避、シグマ国の特定のために配属された。
残りメンバーとしては[硬化]を所持する一級者ミック、[煙化]を所持する二級者バトラー、狙撃兵である三級者ラルフ、そして[起動紐]を所持するウォルトである。
車両内から辺りを見渡すウォルトを見てバトラーは声をかける。
「あは、ウォルトくん魔法手に入れたんだね。よかったね、生存しやすい位置だよ」
「まあそうだナ....」
ウォルトの役割は緊急離脱役である。シグマ国を特定できたとして無事でいられるとは限らない、そのため緊急時はウォルトだけは脱出し、情報を持ち帰る必要があるのだ。
車両は二台、一つにはミック、ノーンが、もう一つにはウォルト、バトラーが乗っている。
「こちらは、音で感知.....相手の手段、不明。気をつけて....」
ミックはそう言って車にギアを入れると発進していいか問うようにノーンを見ると、ノーンは首を縦に振り車両は進み始める。
車両が進み始めた段階でバトラーは口を開く。
「ねえ、ウォルトくんは射撃と近接はどっちが得意なの? 戦闘はそもそも魔法主体じゃないよね?」
「…得意なのはもちろん近接ではある…だけどカプティブ全体で見ればそんなの強いわけでもない」
「あは、確かにそうだね。あのときはそんなに強くはなかったからね?」
「あのときはわざと生き埋めにされたナ?」
ウォルトはそうバトラーを睨みつけるようにいうとバトラーは運転席で前を見たまま笑う。
「まあ半分はそうかもしれないね? 確かに罠に乗る形ではあったけどあの生き埋め自体を予想してたわけじゃないよ」
「そうか、だが少し安心した。能力だけで二級になったわけでないとわかったからナ」
ウォルトはそうため息をつくと辺りを見渡し始める。
「敵影はない、そのまま進んでいい」
「はいはい、わかったよ」
ラルフがそう呟くとバトラーはにこやかにそう言う。
今回の戦いで攻撃側はイプシロンの待機としているが、問題はある。現在場所がばれている国はアルファとイータ。こちらに防御を割きつつの戦い。また、想定として攻撃時には大きく動くことによる位置の特定リスクがある。この大局戦における最大の戦いは情報戦なのである。
「ねえ、デポン」
「んー?どうしたよ?」
デポンが食料の干し肉を噛んでいるとクリスが声をかけた。
「僕らは攻撃と防御、どちらにも回る役割なわけだけど。敵で厄介なのってメアリーとエックスだけなの?」
クリスの言葉にデポンはしばらく考えると、何か思い出したかのように口を開く。
「あ、リーワン・C・レラーストかな。いや他にも多分色々いるけど、俺が知ってる限りは」
「リーワン…魔法は確か、[瞬間移動]だっけ?」
「そう、シグマの階級者なんだけど。戦闘スタイルは奇襲戦闘だけど。強いってことしかわかんないな。能力詳細は知らない」
「そっか…でもありがとう。参考になるかも」
「ういよ。シグマを味方する国も多い。あんまり先入観だけで戦うなよ」
「うん、気をつけるね....ところで君の能力で質問なんだけど...[分身]って実体はあるの?」
クリスのその質問に対してデポンは首を横に振る。
「いや、あくまで姿を見せるだけで実体はないよ、まあある程度の行動は指示できるけど攻撃はできないし[分身]が銃を撃ったり物を投げたりはできないからそういう脅しにも使えない」
「そっか。でもありがとう。把握はできたよ」
「ん、お互い頑張ろう」
デポンはそう言って手を出して握手を求めるようにしてクリスはそれに応えるのであった。




