第91話 駐屯地
クリス達は駐屯地を作るため、廃街へと赴いていた。
ビルが立ち並ぶ中を護衛として歩く階級者が4人おり、それぞれが適度に分散しつつも互いにすぐ集まれる距離を維持していた。
「....なぜ私が.....?」
そうため息をついたのはオレンジのロングヘアーをした切れ目の少女、三級者オリーブ・アンダスターだった。
彼女は幅広の裾を揺らしながら不満を言っているとクリスが話しかける。
「まあ仕方がないよ、ちなみに僕はここにいる人たちをよく知らないんだけど.....どこの国なの?」
「ファイだよ。イプシロンと手を組む形で今回の戦いには参加している。あなたはどこ?」
オリーブは淡々とそう答えると逆に聞き返してみる。
「僕はデルタ国、イプシロンとの同盟を組んだ訳だけど....とりあえず近接戦が得意だよ」
「クリス....だっけ、その剣って壊れないだけの剣なんだよね? 魔法としては脅威ではないようだね」
「まあ、そうだね...君の魔法は確か[花弁生成]だったよね? 生成系らしいけど花弁を刃に変えたりとかできるの?」
クリスは純粋に魔法についての疑問をぶつけるとオリーブは何を言ってるんだ?と言わんばかりに顔を顰めて言う。
「花弁のことをなんだと思ってるの...? 花弁は花弁だよ。そんな切れるような花弁があるわけないじゃん。多種多様な花弁を出せるけどそんな攻撃力はない」
「ああ、いやごめん....なんかできるかな〜って、毒とかは?」
「毒もないよ、見た目だけ綺麗な花弁をいっぱい出す」
オリーブはただそう言うとクリスは苦笑いで聞く。
「.....それ強いの....?」
「さあね...」
そんなことを話していると、先を歩いていた金髪の男が振り向くと声をかける。
「随分と気楽だな、えっとクリスだっけ? ちょっと手伝って欲しいんだけどいいか?」
「あーうん、今行くよ」
クリスはそう言うとその男、二級者のデポンの方へ駆け寄ると、デポンはビルを指して言う。
「あのビルを拠点にするんだが、怪物戦に特化してるんだろ?クリアリング頼んでいい? オリーブは補助で」
「了解したよ」
「え....私も?」
オリーブはめんどくさそうに肩を落とすが、クリスの後ろについていく形で2人はビルの中に入る。
「クリスは接近戦特化、でいいんだよね?私いる?これ」
オリーブはそう言いながら手のひらを前に出すとそからラベンダーの花弁を生成する。
ラベンダーの香りがかすかに漂い、それは風で建物の奥へと運ばれていく。
「これは...何をしてるの?」
「香りを撒いてるんだよ。鼻がきく怪物も多いから、そういうのが角から奇襲してきたら困るでしょ」
袖を振って淡々とばら撒くオリーブは子供の挙動のようだが真面目に仕事をこなそうとしていた。
「そっか、こうやって香りを充満させれば把握されにくいもんね、花弁を中にいる生物が踏めば音でもわかる
し」
「そういうこと」
オリーブはクリスに目を合わせることもなく淡々と会話するが、クリスはそこで違和感を覚える。
「あれ、ひとつ聞きたいんだけどいいかな?」
「なに?」
またかと面倒くさそうにオリーブは反応するがクリスはあえて無視して聞く。
「花弁ならなんでも出せるって言ってたけど、それって知らない花でも出せるの?」
「うん、出せるよ」
「...だったらこの星以外の植物とかも?」
「それはわかんないけど....クリスだって魔法を持ってるならわかる.....いや、ただ壊れない剣だからか....まあいいけど」
オリーブはため息をつくと手のひらから薔薇の花弁を一枚生成する。
「人はどうやって魔法を使うかわかる?」
「....え?」
オリーブの質問の意図が理解できずクリスは困惑しているとオリーブは続ける。
「魔法は生成しようとする意思や、制御系なら腕を振るだとか何かするっていう発動条件があったら、それを魔法と気づくことなく捨ててしまうかもしれないけど、そうはならないのはどうして?」
「....検証するから....?」
「もちろんそれもあるけど、魔法は持った瞬間に自然と使い方の基礎がわかるんだよ。例えば私はこの赤い花弁がどんな花なのか、紫の花の本物は見たことない。だけどバラ、そしてラベンダーだと知っているんだ」
「.....自然にわかるってことだね」
「簡単に言えばそう」




