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灰と魔法の荒廃戦  作者: 山田浩輔
階級者の唄
88/100

第88話 連奏

 走行中の車両にて。


 「いやあ、危なー。すげえ痛いわ」

 ロメスはニコニコと笑いながら腕に包帯を撒き始めているとミックが呟く。

 「....あの閃光弾......」

 「そうですね、今考えればあれは救難信号の代わりみたいなものでしたね....とはいえ不可抗力であったので仕方ないところです。せめて衝撃波や鎖でどちらかが光が周りに見えない位置まで誘導させるように打つべきでしたね。いやそもそも———」

 ベッツはため息をついて反省し始めたかと思うとぶつぶつと延々に一人ごとを始める。

 ミックはその様子に困惑しつつ運転しながらも話を続ける。

 「.....別動隊が....メアリーを追跡してるから........おけーい.......」



 「はえー、やっぱりあれだよな。均衡バランスが崩れてるからこんな作戦立ててるんだろうな」

 「まあそうでしょう...やはりシグマ国が戦場で圧倒的に有利になったことでエックス、もしくはメアリーを殺す....というか国を潰すという判断にしたんでしょう。特級者といえど世界を敵に回して連合を組まれれば負ける....だから戦術兵器としては最強でも暴れることはなかった。しかし二人目の特級レベルが現れたことで勝てると踏んで、と言ったところでしょうが......」

 ベッツは歯切れが悪そうに言うと、ミックが言葉を代弁する。


 「......少し....妙.....」

 「あ、やっぱりおもっちゃう? 俺も同じくだわ」

 それは全員が思っていたようでベッツは続けて言う。

 「そうですね。いくら武力的に有利になったとは言え世界中から狙われればただじゃ済まない。少し略奪が増える程度にとどめるはずです。なぜなら所詮は一人増えただけ.......何か裏があるように思うます」


 「まあでも俺たちが考えてもしょうがないっしょ? 今はゆっくりしようぜ〜」

 「.....運転してる.....感謝して....」

 「あ、さんきゅーさんきゅー!」



 「....ちなみにロメスはどうするんですか? 腕が欠損って戦えないでしょう?」

 ベッツが雑談のようにロメスに聞くと笑いながら彼は答える。

 「いや無理っしょ! こんなんで戦えるわけないじゃーん、俺カプティブだからさぁ、女の子抱いて子孫たくさん作ってカプティブの子を産めるようにがんばろっかなあ! あ!俺抵抗しないからさあ、もし戦争が起きても見逃して!」

 「......子供の顔....見せてね....」

 「はぁ....そうですか....」

 ロメスの楽観的なその言葉にベッツは呆れていると、無線が起動する。

 「こちらCP、メアリーを追跡班が追っている。今から車両を送る。合流して応援に入れ、アウト」


 「こちらベッツ了解。今から応援に入りますオーバー」

 「.....下ろせばいい....?」

 「はい、お願いします」

 無線を聞いていたミックは車両の速度を落として一時停止するとベッツは車を降りる。


 「いって....らっしゃい.....」

 「じゃあねベッツ! 頑張りなー」

 「お二人も縁があればまた。それでは」

 

 そう言ってベッツは走り出した。










 



 「車両の速度をもっと上げナ....! 報告によればメアリーは大きく疲弊してるはずだ。絶対に逃すナ...!」

 「は....はい...!」

 車両に乗るのは運転手のデルタ軍兵、そしてクリス、メスマー、ウォルトが乗っていた。


 「ウォルト、エックスがいないように見えるんだけどどうなの....!?」

 「現在、エックスが蛆虫の回収をしてる間に奇襲をかけて時間を稼いでる。あいつの機動力なら追っては来れない。とにかくメアリーを倒すしかないナ」

 ウォルトの言葉を聞いてクリスは頷くと、走行中に車両の扉を開ける。

 「このままどうにか....飛び乗れないかな...」


 しかしその瞬間、シグマの車両からの機関銃の射撃が牽制し、クリスは扉を閉める。

 「ダメだね.....このままだと追いつくのは無理かも....」

 「とにかく....今は見逃さないように....」

 

 

 機関銃掃射を受けながら追跡する中でメスマーは言う。

 「一瞬でも機関銃の隙ができれば....私が絶対にどうにかする....だから...」

 「わかった.....でも気をつけてね、流石に危険すぎるから」

 「....そうだね」

 クリスの心配する言葉にメスマーは一言、そう返すのであった。


 

 しかしその時、シグマ兵が車両から身を乗り出すとあるものを取り出す。

 デルタ車両に向けられたのはロケットランチャーであった。


 「全員離脱だ———っ!!!!!」

 ウォルトのその叫びと共にウォルト、メスマー、クリスの3人は車両から一斉に飛び降りる。


 地面を転がる中で車両は爆破され、減速してそのまま壁に激突する。


 しかし3人はそれでも車両を走って追跡し始める。

 「離脱するかナ....!? 流石にこのまま追うのは....!」

 「いや追おう.....このチャンスは次訪れるかわからない....! 今決めるんだ....!!」


 全速力で車両に追いつくのが限界だ。ウォルトとはだんだん距離が離れており、クリスだけが追っているような状態。


 フィアノールがいれば....いや、車両のタイヤは銃弾は効かない。そもそもこの状況で追えるわけではない......そもそも国が襲われるかもしれない状況で全投入はできない....



 メスマーは[起動紐]を使ってなんとか車両の追跡をし続けているが、これでは無理だ。せめて一度でいい....車両に追いつければ.....!


 そう考えていたその時、シグマ車両から機関銃が掃射され、姿勢を低くその場に倒れる。



 銃弾はクリスに命中しなかったものの、大きく距離を取られた。一瞬の絶望を感じるも、その瞬間、新たに車両が現れるとそこに乗っているベッツから[刃鎖]がシグマ車両に放たれる


 

 一本は機関銃に引っかかり、銃口を大きく逸らさせ、もう一本は車両の前に出されて地面に落ちた鎖を車両が通り大きく揺れる。

 その一瞬の隙を逃さなかったのはメスマーであった。[起動紐]が発射され、シグマ車両に命中するとメスマーは高速でその車両に近づく。


 窓から身を乗り出したシグマ兵士はベッツの乗る車両にロケットランチャーを撃ち、ベッツは車両から脱出するも、車両は爆破する。


 もう一人のシグマ兵士は機関銃に引っかかった鎖を取ると、メスマーに向かって機関銃を連射する。



 「ぐ....ぁあ....!!!!!」

 土煙が舞うが、メスマーには当たらなかった、正確に言うならば当たらないように背を地面につけて地面に引き摺られるような移動をすることで避けたのだ。

 メスマーは引きずられる衝撃で背中は摩擦で焼け、ヤスリのように削られて激痛が走る。



 痛みで絶叫するもメスマーはそのまま接近し、そして車両に飛び乗る。


 そしてその瞬間、銃声が響いた。




 


 

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