第86話 可能性
息の出し方...それとも開ける時間...?報告のイントネーション...? それとも順番....?
メアリーは暗号を解読しながら思考を続けていた。
一人は[硬化]、二人は致命力の低い援護攻撃、鎖は肉を切り裂くから当たるとまずいね、音の弾は当たったら吹っ飛ぶけど衝撃が強いだけで殺傷力が低い。目の前のカプティブは空間把握能力と言ったところかな?
人間の語感で考えると視覚、嗅覚は煙で違う。触覚...聴覚なんじゃないのかな?
鎖も衝撃波もどちらも“音”がする。だから把握して避けれるのかなあ。相手は煙幕で好きな時に[解放]をやり直せるのに対して私は[解放]をしようとしてもバレるからできない。早く決めないと流石にまずいかもね?
ロメスは接近戦を続けていると、メアリーは最後の閃光手榴弾を取り出すとピンを抜き落とす。煙の中に落ちた閃光手榴弾をロメスは拾うためにメアリーは離れる。だがその瞬間、メアリーは叫ぶ。
「きゃあぁぁぁああああああああ———!!」
「ぐ.....っ...!!?」
閃光手榴弾が落ちたのを探すには空間把握が必要である。直接当たれば閃光手榴弾といえど威力はある。だから焦って使っちゃうでしょ?
音で把握できる聴覚は同時に過敏でもある、これで鼓膜を破るか、あるいは耳鳴りでしばらくは把握はできないんじゃないのかな?
閃光手榴弾を無視して耳を塞ぐなら、音が鳴っている間に場所を特定させる前に煙幕から出れるんだもんね?
そう思考するメアリーであったが、ロメスは閃光手榴弾をそのまま拾うと上へと投げ、爆破する。
音響が鳴り響き、メアリーは煙幕から離れようと走り出す。だがロメスは叫ぶ。
「レクトロ! 8時の方向!!!」
ミックはその声を聞いてその方向へ走ると、メアリーを蹴り飛ばし煙幕内に戻される。
「っ.....にゃはは....やるね....」
「気づいちゃった? さすがだね」
そういうこと? 理解できた。
ロメスの片耳からは血がボタボタと流れ、しかしそれでもメアリーの方向に真っ直ぐ突撃する。メアリーは足音の方向にナイフを構えながら、思考する。
なるほどね.....片耳を犠牲にしたんだね。片耳で閃光手榴弾の位置を特定しながらもう片方を防ぐことで私の叫びで壊れるのを片耳だけで済むようにした。即座にその判断をしてきちゃうんだね。
それにもう叫ぶ戦術は通用しないかもね。“強化系”の魔法の特徴は即時発動解除ができること。叫ぶ瞬間だけ解除されれば意味がない。体力も無駄に消費するし。
援護攻撃をしながらベッツ、そしてフィングは思考を続けていた。
早く決着をつけないといけない....シグマは分散していたことからしばらくは大丈夫だろうけどずっと連絡がなければ流石に異常事態に気づく。シグマの援軍がきてしまえばこっちに勝ち目はなくなります...
こっちがむしろ気をつけるべきは敵の奇襲だ。この援護射撃をしている間に狙撃されれば連携は崩れかねん。勝っている時こそ油断はしない。常に予想外に備えるんだ。
メアリーが合言葉の原理に気づいてしまったその時、ミックが騙されたその時のため、常に戦闘を行う準備はしている。
それに....まだ手札はある。
それは、広域殲滅爆破......シグマより先にこちらの援軍が間に合えば、ロメスが煙幕で足止めをして、爆破する瞬間にロメスが離脱して煙幕地帯一帯を爆破すれば殺せる。もちろんこれは最終手段......シグマの援軍が先に到着すれば無駄になる。一応メアリーを見つけてからすぐに報告はした。だがこれは....運だな.....




