第80話 不動卿
無機質な仮面をつけて歩くディバドを見てメアリーは聞く。
「あ〜、不動卿だっけ? 絶対防御ってどんな感じなの?」
「マジでやばいやつだぜ、銃弾が一切効かない、爆破も毒ガスも...音響兵器や閃光弾も効いてないって感じだぞ。あいつがくるとは思ってなかったし流石に撤退して策を練り直すべきだぜ」
エクレクスは呆れながらそう言うがメアリーは聞く。
「ちょっと攻撃してみてよ。挙動を知っておきたいし」
「は? 何言ってんだ.... いやまあ今までの戦闘でわかってることはある。やつを中心として防御範囲は半径1m....つまり一辺2mくらいの立方体型のバリアみたいなものを貼ってるわけだが...問題はそのバリアが見えねえってことだ。そしてそれはディバドが移動すると一緒に動くって代物だ」
「へえ?だったら爆破、もしくは車両で押し返しちゃえばいいんだよ。確かに壁自体は強固かもしれないけど。外から押してしまえば——」
「もうとっくにやった。だが現実はそう甘くはねえ。外力によるエネルギーに対してディバドの歩行を止めることもできなかった。あのバリアは“あらゆる攻撃”を無効にするようなバリアなんだよ」
「銃弾が当たったら推進が止まるってことかな?」
「ちがうな、普通に銃弾が当たればペシャンコになる。分厚い壁と大差ねえってわけだよ」
メアリーはそれを聞くと少し考えるとニコリと笑う。
「ふーん、いいこと思いついちゃった?試してもいいかな?」
「何する気だよ」
メアリーのその顔にエクレクスは首を傾げるのであった。
ディバドは余裕そうに敵陣へと歩いていた。背中に巨大なリュックを背負いながら状況を確認していた。
情報によればエックスはいない。いても関係ないが。自分がやるべきは敵陣を取り鎮座するだけでいいのだ。
防御を展開したまま敵情報を探りつつ隙があれば一人でも多く射殺することである。例え何十日の耐久戦になったとしてもだ。
ディバドに向かう銃弾は全てが弾かれる。そしてすでにシグマ側に占領されたイータ側の最前線の塹壕の前まで来たところで塹壕内から灰兵が飛び出すとバリアに数人が張り付くように抑える。
成程、直接押すことでバリアを押し返す魂胆といった所か。確かに今までそのような無謀な策をしてくる者はいなかっただろう。
ディバドは一切気にする様子を見せず一歩脚を進める。
「無意味な策だがな」
その瞬間、数人の灰兵ゆっくりと押し返され始める。それはまるで無意味で、当たり前のようにディバドは押しのけていた。
可能性として確かめたのであろうが無意味。このような攻撃。
灰兵達はその様子を見てか、背を向けてシグマ側の陣に戻ろうとするが、それをみたディバドは銃を構えると灰兵達を撃つ。
数人の灰兵にはほぼ効果を示さなかったが、膝裏に命中した灰兵だけがその場に倒れる。
やはりそうか。灰兵はあくまで黒コートの下に鎧を密接に着ている。だが機動力を維持する必要がある以上は膝裏、肘、首、股関節あたりには然程防御がない。いや、正確に言えばチェーンメイルくらいは着ている可能性はあるのだが...ただの鉄板というよりは銃弾が上手く弾かれるようにしてるから当たりどころによっては銃弾が貫通する。だから機関銃なら倒せるというわけだ。
武器がトンファー型の刃物なのも納得がいく。普通の武器は手を覆う装甲でまともに持つことができないからそのような武器を使用してるのだ。
考察完了、この情報を味方に送信する。
「こちら[不動卿]、推察通り灰兵の弱点が判明した、まず———」
その瞬間、ディバドの地面からガコンと音が鳴り、地雷が起動するとディバドは爆撃を喰らう。
「地面を歩けてるってことはさ、地面と接触してるってことだよね? 空中を飛ぶことができないから重力まで防げるわけでもない。 プサイの子が使ってた[重力操作]を試したかったのに....死ぬ間際に魔法を壊すなんてさすがに予想できなかったししょうがないよね?」
「確かにそうだ。地面を歩いている以上は地面に設置している、”無敵の箱“であるならば普通はそうだ。だが残念であろう。その攻撃は通すことはない」
ディバドは何事もなかったかのようにそのまま歩みを進める。
爆破による煙はディバドが立つ地面に広がるようにして、ディバドの半径1mから出ると普通に舞うことから、単純に全方向を囲まれている壁でありながら移動ができるものだと理解する。
「あーあ。まあそうだよね。もしそれが弱点なら守備走を先に行かせるもんね? 都合のいいバリアって嫌だよ?」




