第76話 最後
「早く逃げて....!」
「っ....は.....はい....!!」
怪物に包丁を刺して引き抜くと襲われていた人に言う。
すでに何度も武器を持ち替えている。クリスは怪物を数体倒したが、一部にはまるで刃が立たなかった。できることは少しでも注意を引いて囮になることだけだ。
クリスはそうやって戦い続けているとその時、一人の聞き馴染みのある声が耳に入る。
「にゃははははは!! 先輩すごい! この子達相手によく戦えるね...!!」
「......メアリー.........っ」
それは、メアリーであった。3人の改造人間の兵士を連れていて、クリスはすぐに怪物から距離を取ると改造人間のうち二人が銃を発射してくる。クリスは目の前にいた怪物を盾にすぐに避けると民家の裏へと隠れる。
銃弾の乱射にクリスは前に出れず、遮蔽物から覗き見ると怪物たちはメアリーにも襲いかかる。だがそれらは効果を発揮することなく兵士の一人が巨大な大剣で切り払っているようで隙ができない。
クリスは迷いながらも思考すると、レンガを手に取ると上に思いきり投げる。そしてそれと同時に黒装束を投げると逆方向からクリスは飛び込む。
レンガは外れ兵士たちを追い越してしまう。一瞬だけだが意識が黒装束へと向かいアサルトライフルを連射する。クリスはすぐさまもう一度、レンガを投げるが、それも大きく外れる。
「一体どこを狙って....!」
一人がそう言ってアサルトライフルを向けたその時、足に何かが引っ掛かり前方二人は前へと転ぶ。
使ったのはレンガとワイヤー。ワイヤーの端と端にレンガを結びつけて投げる。一投目は兵士たちの右斜め後ろ、2投目は左斜め後ろに向かって投げることで直接命中しなくても一瞬だが時間を稼げる....!
クリスは一瞬で距離を詰めると二人の兵士を殴打で気絶させ、大剣を持つ兵士の一撃を避けると顎を蹴り飛ばした気絶させると大剣を奪う。
流れるようにクリスはその大剣でメアリーの首を狙うが、その一撃は軽々と避けられる。
後方に飛んだメアリーであるがまだ追撃できる。そう思って一歩踏み出したその瞬間、メアリーがニヤリと笑ったかと思うと、メアリーの足先から氷塊が突然現れると飛び出し、クリスの足元と手全体を一気に凍らせる。
「な........っ!!?」
その一瞬の一撃でクリスの脚は拘束され、メアリーは楽しそうに言う。
「ごめん先輩? 予測できなくて仕方ないよね。こんなのさ?」
あまりの意味不明さに戸惑うクリスであったが、メアリーは上をみるとがっかりそうにため息をつく。
「ごめんね、先輩。私はもう行かないと、このままじゃ“巻き込まれちゃう”から」
「な.....まて....!メアリー....!!」
メアリーはそう言って気絶した改造人間たちを抱えて歩き出す。
森の中にゆっくりと入っていくメアリーであったが、最後に振り向いて一言言う。
「もしできたら.....来世でまた会おうね?」
そう彼女は口にした。そして氷が溶け始めたその時、後方で巨大な爆発音が響き渡り、爆風とその衝撃がクリスに襲いかかる。その中でクリスは思考する。
少しでも.....少しだけでも.....僕は救えたんだろうか...
クリスは知らなかった。それは、イギリス側が放った生物兵器の駆除のために導入された気化爆弾であった。
*****
「よくやったメアリー、あのクリスを殺し、魔法兵器の初使用にしてその効果をよく証明してくれた。クリスを失うのは少し惜しいがな....」
リーナ大佐はメアリーにそう言うとメアリーは嬉しそうに笑う。
「にゃはは、すごい大変だったけど凄いね。魔法って」
「ああ、一度燃やして”灰“に変え細胞を既存の道具に取り込むことで誰にでも使用可能な兵器にする。今のところ効果を均一にはできないがそのうち量産体制に入れるはずだ。そうすればこの戦争はたちまちこちらが勝利を得るだろうな」
本当に残念だ。この女は使えない。クリスの生け取りができれば改造人間を増やせたと言うのになんと言う失態。これだからバカは困ったものだ。
そうリーナは思考していた。だがその次の瞬間、予想外の出来事が起きる。
「ぐ.......がっ....ぁぁ...!?」
それは、リーナの腹部に突き刺さったナイフであった。
「はあ、私もう飽きちゃったよ〜。ここにいてももう楽しくなさそうだから〜。ついでに先輩とファリンの仇ってことで?」
メアリーはニコニコと笑いながらナイフを引き抜くとリーナの胸に突き刺す。
「ぐああぁぁぁあああああっ———!!」
リーナは激しい痛みと熱で叫ぶが、それと同時に理解する。
この女は....危険だ。
この女は本気で復讐してるわけではない。だったらそもそもクリスを殺す必要がない。映像で爆発に巻き込まれるところを見た以上、メアリーは確実に殺した。
そうなるとこいつは....何も感じていない。自身の快にしか.....もう..........
薄れゆく意識の中でリーナはそう思考して逝くのであった。




