第75話 怪物
今.....言うべきなのかな....
せめて....改造人間であることを....そうじゃないとバレた時.....本当に取り返しがつかなくなる.....
言葉を使おうとしたその時、驚くほど口が震えた。もしも....もしかしたらこの場で殺されそうになるかもしれない。そもそも...
これ以上拒絶されたら....僕は....僕を保てる?
そう迷っていた。しかしそれでも冷静に、僕はあたりを確認し始める。
みる限り武器になりそうにない、ここはど田舎でそれも敵国、重要な拠点が近くにあるわけでもないから比較的安全だ。僕のことを報告するまでにかなりの時間もかかる。いける。いざという時は逃げられる。
そう思考したクリスは口を開く。
「あの、一ついいですか...」
「なにかな?」
クリスは頭に巻いたタオルを取ると、父親はギョッとして立ち上がる。
「な.....!?」
「え、なに? お父さんどうしたの?」
父親は酷く動揺し、一方でフィクトはわけがわからず混乱していると、クリスは冷静に続ける。
「僕が何者か....わかりましたか....?」
「そう....だね。フィクト、ちょっと席を外してくれないかい?」
「え、重要な話? わかりました」
そう言ってフィクトが出ていくと父親は話し始める。
「君は......どうしてここに?」
「......仲間に裏切られた...」
クリスがそういうと父親はしばらく黙ると立ち上がる。
「ちょっといいかな、持ってきたいものがある」
「うん....構わないよ」
父親はそう言って部屋から一度出ていくが、クリスはすぐに立ち上がると部屋の窓を開けると外を確認する。
「よし.....逃走ルートは確保できた....大丈夫...」
クリスはそう安心してまた椅子に腰掛けると、その時父親が現れる。
「すまないね....」
クリスはそこでキョトンとする。それは銃を持ってくると最初考えていたから、だが持ってきたのは黒のウィッグであった。
「それは....?」
「妻ががん治療の際に使ってたものでね...」
父親は大事そうにそのウィッグを抱えると語り始める。
「君がもし、兵士としての戦いをやめるのであれば、わしは尊重する。ただ...もう人を傷つけないでくれ...」
父親は真剣な表情でそう言った。
「...........はい...」
クリスは即答することもできた。だが敢えてゆっくりと、信憑性が少しでも増すようにと、重みを込めてそう言うのであった。
数週間後〜
「......これ....なんの衣装....?」
「フフン! これはこの村での伝統衣装です!かっこいいでしょう!?」
それは全身黒装束の格好で、なんというか....
「...微妙にダサい.....」
「それは禁句です! なんでそういうことを言っちゃうんですか!? 私も昔そう言って怒られました...!!」
「あ、ダサいとは思ってるんだ」
「おーい、そろそろ準備はできたかい?」
「あ、できましたのです!」
父親の男が二人を呼びかけるとフィクトが元気よく答えてクリスの手を握ると歩き出す。
3人は獣道を歩き村の中央へと向かう。そんな中でクリスはさらにもう一つの疑問を口にする。
「.....なんで二人はこの衣装着てないの....?」
「あーまあ、別に?」
「えー、あー...はい、着なくていいですから」
「....脱いでいい?」
クリスは呆れながらそう呟く。そんな他愛のない話をしながら進んでいたその時、クリスは音に気づく。
「.......何かいる...?」
それはわずかに聞こえた葉音で、一瞬気になったが、クリスは気にするのをやめて、歩みを進めるのであった。
そうして村が見えてくる頃、何かがこちらに向かってくるのを確認する。
「あれは....クァンシじゃないか」
どうやら父親の知り合いのようで、クァンシは走ってこっちに向かうと、息を切らしながら言う。
「逃げ.....っ....! 逃げろ...っ!! 怪物が....!怪物が出たんだ.....っ!!」
「な....落ち着け...! 一体何が...?」
恐怖で混沌としてる中で、クリスはそれをみると、すぐさま八芒星を描くと飛び出す。
「.....ユキヒョウ....!? いや....チンパンジー....?」
クリスが蹴り飛ばしたそれは、奇怪な生物であった。チンパンジーのような手足をしながらも顔はヒョウ、筋肉が虎のように謎の生物。
クリスの蹴りで後退したその怪物はこちらを威嚇して見ているとクリスは前に出る。
「....3人はすぐに避難を....僕が時間を稼ぐから」
「な....何を言って....!?」
「早く.....!」
クリスのその叫びで3人は黙ると、背を向けて走り出す。
それを確認すると、クリスは足を引きずる振りを始める。
こういう動物は負傷....足を引き摺ってるような個体を狙う....時間を稼いだら村で武器を調達するべきだ....銃....ナイフでも.....釘でもなんでもいい...とにかく武器.....!
怪物はクリスに襲いかかるが迎撃しつつ一定の距離を保ち続ける。そして3人が完全に見えなくなったのを確認すると、全速力で村に走り出した。
そして村の光景を見て絶句する。
「なんだ.....? こいつら......」
いまだに絶えず悲鳴が響き上がるそこには先ほどの化け物以外にも巨大な人型の異形生物やアナコンダよりも巨大な蛇、角の生えた馬など訳がわからない生物ばかりがいた。
村は血と瓦礫で塗れ、その光景に意識を奪われそうになるが、一瞬で冷静になるとすぐに近くに倒れていた死体の持つ包丁を手に取る。
「少しでも....倒して助けないと.......っ———」




